え?公爵令嬢さまと婚約破棄して私と婚約したい?いやいや、ありえないから

やノゆ

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婚約破棄編

第7話・嵐の前の

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ーーーエミリアは、深い深いため息を付きながら夜空を見上げた。
まん丸な月が憎たらしいほど輝いていて、銀と金を混ぜたようなその光は周りの星と共に、エミリアを照らしていた。

結局、あのあとパーティーはお開きとなり、後日正式に国王から国外追放を言い渡される予定だ。

家に帰って、両親にこのことを伝えたら、自分達も共にこの国を出ると言ってくれた。
エミリアは涙が出た。
当然であるが、エミリアは被害者である。勝手に婚約破棄に巻き込まれ、嫌がらせを受け、本当のことしか言っていないのに、都合がいいからと不敬罪という罪を国王に塗りたくられた。

エミリアは憤慨した。
許せるはずがない。国王は勿論、アルベルトも、スカーレットも、この国も。
静かな決意を胸に募らせ、両親の胸の中で涙した。
森色の瞳から溢れる涙で覆われている、瞳の奥に見える怒りの炎は、もうとっくに油が撒かれていたのだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


翌朝、エミリアは重い体を起こした。
起こしに来る使用人は、いない。アールグレイの香ばしい香りも、今日は鼻に届かない。

昨日、使用人が一斉退職したのだ。
それでも、お父様付きの執事、お母様付きの侍女二人、そして私の執事が一人と女の子の使用人が一人、一生守ると付いていく決意を新たにしてくれたが。

エミリアは、"聖なる力"を使い、髪を整えた。
聖なる力とは、エミリアが勝手に心の中で呼んでる名称であるがーーー。
おそらく、この力には色分けがある。
緑色の力は癒やしの力、青い力は清める力、赤い力はまもる力、など聖女の持つ力の可能性は無限大である。

エミリアは、国外追放となった後、どうするかを昨夜両親と話し合った。
結果は、何も生まれない話し合いだった。
今まで貴族として生きてきた身である。
街での暮らし方も、作用も、何もかも理解できていない。

エミリア本人は気づいていないが、性根は庶民寄りである。
だが、だから言って子爵令嬢でなんだかんだちやほやされてきた箱入り娘のエミリアが、いきなり自給自足の生活なんて出来るはずもないのだ。
だから、国王に貰うお金の代わりに、他国での職を見つけてもらえないか、と検討する方針である。

エミリアは、森色の瞳に炎をちらつかせながら、国王のもとへ向かうべく着替え始めた。

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