Dream of Alice

彩。

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少年との出会いと

六話「ソルトくんも色々あるんですねぇ……」

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「……」

飛鳥くんが用意したテントで、毛布にくるまり数時間経った。が、私には眠気が全く来なく何回目かわからない寝返りをする。隣に寝るソルトくんは余程疲れていたのか気持ち良さそうに寝ている。飛鳥くんは微動だにしないので生きているのかと不安になる。ちろるくんは……

「あれ?」

ちろるくんの姿が見当たらなく、外かなっと思い起き上がる。眠れないし息抜きになるかなっという気持ちもあって、私はテントから出た。
テントから出ると、空が星で埋まっているみたいに沢山輝いており、綺麗で見惚れてしまう。暫く立ち尽くしていると寒気がしてくしゃみをしてしまうと、ふわりと肩に何かかかる感じがして、振り向くと……

「ちろるくん……」
「そんな薄着じゃ風邪ひくぜ陽菜ちゃん」
「ちろるくんこそこれ着せたら……」

肩にかけてくれたのはちろるくんのブレザーだった。先程まで着ていたのか暖かく、身長があるからかぶかぶかで大きい。

「俺は長袖だし大丈夫」
「ですが……」

確かに私は服は半袖で、肌が出ている部分が寒いがちろるくんはYシャツで薄くて寒そうだ。返そうとする私にちろるくんは火がある方に指差す。

「じゃあ、こっちで話そうぜ。ここじゃソル達も起きてしまうかもしれねぇし」
「……はい」

それは賛成なんだが、ブレザーを借りたままなのはなぁっと複雑に思いちろるくんを見る。彼は焚火の前に座り、私に視線をよこすので私も前に座る。

「ちろるくん……あ、の……」
「俺さぁ……女の子に自分の服着せるの夢だったんだ」
「え」
「だから今だけその夢叶えさせ続けてよ」

そう言われると、強く言えない私はブレザーを返すなど言えるわけもなく、ぎゅっとブレザーを握りしめた。

「今日は沢山なことあったよなぁ……」
「そう、ですね……」

白うさぎを追いかけて、ソルトくん達に出会い唯是くんと食料集めをしそして……楪くん達に会った。その間にモンスターに何度も襲われたし濃い一日だったなぁっと思う。

「とにかくモンスターに襲われましたね……」
「そうだな……陽菜ちゃんモンスター怖がっていたし……怖い一日だったよな」
「そうですね……でも」
「?」
「その度ソルトくん含め守られているので、今すぐ帰りたいとは思ってないですよ」
「……」

怖いのは変わりはないが、最初襲われた時の怖くて仕方なかった時とは違う。死んでしまうことが怖いのは今も変わらないと思うが。

「そっか。じゃあ、ゆっくりと陽菜ちゃんの記憶集めして時計の針進めようぜ」
「はい、そうですね」

今のところ記憶喪失で不便はしていないから気にはしていないが、思い出した方がいいだろう。それで……あの人の事が……?
頭に一瞬寂しそうな顔で見下ろす人が思い浮かんだが、誰だがわからないというか考えると真っ白になる。そういえば、私なんで白うさぎを追いかけたんだっけ?

「……」
「陽菜ちゃん?」
「あ、すみません……」

ちろるくんに話しかけられ、考えるのをやめる。ちろるくんとの会話の途中だから、深く考えるようなこと考えるべきじゃないよね。

「?」
「あ、ええっと……そういえばちろるくんどうして最初会った時にモンスターに追い掛けられていたんですか?」
「え? あー、ソルと別れて」
「ソルトくんと一緒に行動していたんですか?」

ソルトくんとはあの白い部屋から出て再会したものだと思っていたから驚きだ。

「ん。気が付いたらこの世界にいて、歩いていたらソルと出会ってさー手分けしてこの世界探すことになったんだ」
「そうだったんですか……」

楪くん達もそうやって出会ったのだろうか。もしかして、来た時は知り合いの人が近くにいるようになっているのかもしれない。

「そうしたら、ソルの奴は苛々して前をよく見てなくて穴から落ちたらしいぞ」
「え」
「アイツ、崖の時といい結構考え事していると前見えないんだよなー」
「そうなんですか……」

白い部屋には穴に落ちて来たということだろうか。苛々していたというが、何かあったんだろうか。最初の頃はやく帰ってやると言っていたらしいし。

「ソルトくんも色々あるんですねぇ……」
「……まぁな」

そう返すとちろるくんは、難しそうで悲しそうな顔をした。ソルトくんのことをよく知っているんだなっと思い、つい気になって聞いてしまう。

「ちろるくんは、ソルトくんとは現実でどう出会ったんですか?」
「お~? ソルに興味持ったのか? それとも俺?」
「どちらにもです。……嫌なら無理にでも……」
「いや、いいよ。ソルと俺の出会いはなー」

ちろるくんは思い出すように、空を見上げ懐かしそうな顔をする。

「俺が喧嘩しているところに割り込んできた」
「え」

ちろるくんが剣かしているところに割り込んできた? ソルトくんが?

「喧嘩中だと気付かず話し掛けてきてしまったみたいでぎゃーぎゃーいいながら避けてさぁ。コイツ反射神経いいなって感心したな」
「そ、そうなんですか……」

今の攻撃をよく受けているソルトくんを考えると、なんだか信じれない光景なんですがちろるくんが笑って言っているから嘘ではないのだろう。

「喧嘩終わって、何か用事かと俺が聞いたらアイツいきなりテニスラケット取り出してさ。目を輝かせて「俺と青春しませんか!」と訳わかんねぇ勧誘してきた」
「勧誘……」
「喧嘩終えて重い空気の中だぜ? おもしれぇやつって思ってその場で笑っちまったよ」

喧嘩終えて怪我もし、気が立っている人相手に言う言葉では確かにないなぁっと私も思う。ソルトくん、怖くなかったのだろうか。

「気が向いたらって言ったら明日ここにいるって場所言われて、その日気が向いて行ったら目を輝かせているソルがいて。その後、テニスすることになってさー後は色々あって、今の関係になったわけ」
「ソルトくん……って、行動的なんですね」
「アイツは有言実行なタイプだな。俺連れて来たのも当時の部長が部員が少ないから部活出来ないと言われ「じゃあ、練習相手連れてきます!」とか言い幽霊部員の俺になったらしい」
「練習したくてそこまで……」

ちろるくん喧嘩していたなら今と違って怖そうで噂も凄そうなのに、気にせず連れてくるなんて……凄い人だなソルトくんは。

「ソルトくんにも驚きですが……ちろるくん昔喧嘩するなんて……その、荒れていたんですね……」
「ははっ! まぁな」

確かに今でも、モンスターと戦う時睨みが凄いけどまさか元ヤンだったとは。

「ソルと誰かさんが居なかったら今でも荒れていたなー」
「誰かさん?」
「ん、弱いのにほっとけないお人好しの誰かさん」
「?」

私の知らない誰かだと思うのに、なんだかちろるくんは知っている子を言っているようでもやっとする。

「陽菜ちゃん」
「?」
「手出して」
「??」

よくわからないが、手をそっと出すと重ねられる。私より大きな手に身長差もあるし男の人だなぁっと思っていたら、優しく笑われた。

「やっぱり小さいなぁ」
「……え?」
「陽菜ちゃんは小さいから俺らで守ってやらねぇとなって話!」
「?」

パッと手を離し、ちろるくんは立ち上がる。私も慌てて立ち上がる。

「もうそろそろ寝れそうか?」
「あ、はい……あの」
「礼はいいから早く寝た方がいいと思う」
「……ちろるくんは」
「俺はもうちょっと散歩してから寝る」
「そうですか……じゃあ」

私はちろるくんのブレザーを脱ぎ、彼に渡す。今度は受け取ってくれた。

「おやすみなさいちろるくん」
「ん」

夜の闇に消えて行くちろるくんを眺めながら、私はテントの方へと戻るのだった。






「ふぁぁ、よく寝た」
「モンスター避け効果があるとはいえ、完全じゃないのによくそんなにぐっすり寝れるな」
「あ? んだよ」
「別に。はやく町行き、情報集めをしよう」
「んだよ、飛鳥! 俺とは話す時間さえも無駄だってか~?」
「……わかっているなら黙ってろ」
「お前っ!!」
「ふ、二人共……!」

朝ご飯を食べながら喧嘩する二人に慌てていると、ちろるくんはのんびりとパンを口に運びながら言う。

「で、飛鳥くん町まで残りどれくらいの距離?」
「一時間歩けば着くな」
「! はやく行こうぜ!」

ソルトくんがパンを口に急いで沢山入れ食べる。なんだかハムスターみたいだ。

「? んだよ陽菜?」
「あ、いえ……」

昨日の夜にソルトくんのことを少し知ったなぁっと思う。怖いもの知らずではないけど、度胸がある人なんだなぁっと。

「変なひ……っ!!」
「ソルトくん!?」

パンを喉に詰まらせたらしくゲホゲホとするソルトくんに慌ててオレンジジュースを渡す。

「わ、わりぃ……」
「お前って、馬鹿だな」
「っ! うっせー!」

飲んで息を整えるソルトくんに飛鳥くんが呆れたように言うとまた喧嘩が始まり、これが日常になるのかと思うとにぎやかになりそうだなっと感じた。


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