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第1話 嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。
1−15 *
しおりを挟むはじめてちゃんと、キスをしている気がした。
はじめて奪われたあのときのキスは、頭の中が真っ白で、なにもわからなかったから。
彼は全然動かなくて、でも、ただわたしを受け入れてくれて。でも、どうしていいかわからなくて、ただ、触れるだけのものをしばらく。
胸が痛くて、苦しくて、張り裂けそうで、ここで唇を離しちゃったら、なんだか彼のことまで手放してしまうような気持ちになって、でも息ができなくて、苦しくなって、ぷはって、離す。
はぁ、はぁって、足りない酸素を取り込みながら、彼のことを見つめ続けた。
両目を見開いて、呆然としているままのラルフを。
「ラルフ――――」
まだ、伝わってない?
もっと伝えなきゃ。
わたしはただ必死で、焦って、もっと、もっとと欲張るのに。
彼はやべえ、と呟きながら愕然としてて。
「…………………………勃った」
「は……?」
「やべ。くそ。こんなハズじゃ……締まらねえ……」
ほとほと情けないと言った様子で、顔を真っ赤にしてる。
「え……と…………」
「まあ。そういう、こった」
「ぅ?」
「いや勃つだろ……? 好きな女に、こんな、押し倒されたら」
「押し倒……っ!?」
「めちゃくちゃ押し倒されてるだろっ!? つまり。その」
「……」
「勃つくらい、好き。っつーか」
「…………」
えーと……。
本人の申告通りめちゃくちゃ締まらないけれど……。
心臓、めちゃくちゃ暴れてて。
これにときめいちゃうわたしもわたしなわけで。
「……………………ばか」
「知ってたろ?」
「……ぅん」
「――ん。…………抱かせて、くれるな?」
なんて、くしゃりと苦笑いを浮かべる彼の顔が、恥ずかしくて真っ直ぐ見れなくて。
目をそらして。
でも、うん、って、頷いて。
ラルフがわたしの両肩をつかんだ。
そしたら、ぐりんって、世界が反転した。
どうやらラルフがわたしを押し倒すようにして、体勢を入れ替えたらしくて。
わたしは、ベッドに背中をつけて、ただ上を見る。そこには切実そうな目をしたラルフがいて、わたしは息をのんだ。
「ほんと、反則だろ。こんな――かわいい、とか」
……。
わたしの聞き間違えじゃなかったら、かわいい、って言ったはず。
ラルフが。あの、ラルフが。
そりゃ、つきあいはじめてからほんとに、びっくりするくらい優しくなって。大人になって。変なからかいもなくなったけど。
こうも素直な褒め言葉をもらうと、居たたまれないというか、気恥ずかしくて、戸惑ってしまう。
けどラルフは逃がしてくれない。
わたしの頬に手を当てて、じっと見つめて、顔を近づけてきて。
「ほら、リリー」
影が落ちる。
視界が全部ラルフになって、わたしは、そっと、瞼を閉じる。
彼の薄い唇。それが、私の唇を啄み、彼の大きな手がわたしの髪を梳く。
ゆるく編んだリボンを解いて、また、頬に触れて。
何度も何度も角度を変えながら、たっぷり口づけをして。彼がねっとりと舌を絡めてくるのに、必死でわたしも応えた。
涙のあとを彼は親指の腹で拭っていく。耳朶をなぞるように摘ままれ、今度はしゅるしゅると首の方に両手が落ちていき、やがてブラウスのボタンに差し掛かる。
「ふ……ぁ……」
「っ……、リリー」
あっという間にブラウスの前がはだけて、下着が丸見えになる。
別にかわいいものをつけていたわけでもなかったから、ちょっと気恥ずかしくて。無意識に手で隠そうとしちゃったところを、やんわりと止められた。
「……オマエって、結構着やせするタイプだったのな」
「よりにもよって、それ……っ」
「くっ。悪ィ。…………が」
「ン……っ」
彼は、こぼれおちた胸の谷間に顔を埋めて、ちぅ、と強く吸った。
「っ」
「……最高だ」
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