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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。
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彼に釣り合うようにって。
そしたらふたりとも、なんとも言えないにがーい顔をしてさ、笑ってた。
「それ、ラルフにちゃんと話しなよ」
「うっ……」
痛いところをつかれましたとも。
はい、そのとおりでございます。
「でもね? でもだよ?
……なんかさ。勝手に、わたしの想い? 希望? を押しつけるのも、なんだかなーって。思うといいますか」
なんといいますか。
ラルフにもっと高いところにいってほしいの。だからもっと頑張れ――なんて言えないじゃん?
押しつけじゃん?
だからね。いじいじといいわけを並べてみたけれど、ケーシャには背中を叩かれるし、ジャックには苦笑いをされるし。
ええと……やっぱり、だめですかね……?
でも、わたしだって、そういういいわけばっかりしてるの、よくないって思っているよ?
一方的に押しつけるのもいけないって、思ってる。
だからね? せめてわたしの方は、ちゃんと、行動しようっていいますか。
「ラルフは絶対、もっと大きくなるもん。だから、そのときにね? ……ちゃんと、つりあうわたしでいたいの」
家で勉強する時間もかなり増やしてる。
家に帰ると、ラルフは一緒に過ごしたがるけど、ちゃんと断って、勉強の時間つくってね?
主に外国語の勉強。ギルドで上に行きたいなら必須スキルだしね。
……まあ、ここのエイルズギルドで上に行く予定があるのかどうかと聞かれると、それまでなんだけど。
あとは、経営学もちょっと学びたいけど、学びにいくお金と時間がないから、その分、ちがう分野の仕事をふってもらえないかって上司にかけあったりもしてさ。仕事たくさん入れたりして。
「さすが。真面目だねー」
「茶化さないでよ」
「いやいや、感心してるの!」
ラルフと恋人同士になったけど、だから甘えたくないというか。
もっと頑張りたいっていうか。
……優秀な彼に負けたくないっていうか。
そういうの、ばれてるのかな。
ふたりとも肩をすくめて言うんだよね。
「ラルフ、根がバカだから今は浮かれて薄々……くらいだけど、そのうちスネると思うぞ?」
「だね。近くに住んでるから、そりゃあ一緒に過ごす時間もそこそこあるのはわかるけどさ。もうちょっとだけラルフにエサあげてもいいと思う」
「いや、エサって」
「エサでしょ。デートしたりとか。そういうの。――ね?」
「うっ……善処します……」
そうですよね。
うん……わかってる……よ?
たしかに、家で過ごす時間はそれなりにあるけど、デートとか、ぜんぜんしてなかった。忙しいっていって、逃げてばっかりで。
ラルフが無理強いしないのに甘えてたのもあるのかも。
勉強するのを邪魔するのはダメだって……多分、彼も素直に思ってくれてるの、知ってるんだ。だからわたし、それを利用しちゃってたんだよね。
だって、デートとか……いまさら……どうしていいかわからないし……。
「しばらくは冒険者も忙しい時期なんだからさ、休みの日くらい、アイツに時間やってくれ」
「だね。てか、根詰めすぎ。アタシはアンタも休んだ方がいいと思う」
「…………うっ」
前向きに、検討します……。
ジャックとケーシャにいいふくめられつつ、ギルドホールへ帰還する。
閉館直前で、混雑もようやく落ち着いてきたころあいらしく、人はまばらだ。
正面から入ってホールを歩いていると、おーい! と声がかけられた。
どうやら待合用の椅子のところで、ラルフが待ってくれていたみたい。
「おつかれ。仕事、もうおわりか?」
「うん。そう。あとは報告書提出したらおわり」
「そっか」
なんてラルフってばへらって笑って、なんだか嬉しそうだ。
昨日から、遠征からの帰還でバタバタしてたもんね。ちゃんと話す時間もなかったから、なんか久しぶりな気がする。
「なら、早く提出してこいよ」
当然、待ってるってこと……なんだよね?
もうつきあい始めてから、ずっと一緒に帰ってるから慣れたかなって思ってたけど、今日はちょっと久しぶり。
さっきの話もあるからね。なんかちょっとだけ気恥ずかしくってさ。……ケーシャもジャックさんも、なんかニヤニヤ見てくるし?
ラルフと目があわせづらくて、うん……って、小さな声でしか返事できなかった。
「? ……おい、ジャック。なにか余計なことしゃべってないだろうなっ」
そしたら、ラルフってばすぐ不安になってるし。
ごめんね。他意はないんだよ?
「ないよ。むしろ、感謝されてもいいくらいだ」
「は? なんだ、それ?」
うん。ジャックさんの言うとおり。
でもラルフはまだ不安そうなんだよね。
あっ、わたしの態度が、冷たく見えたから?
それとも、朝はやくて置いてきちゃったから?
なんだかしょげちゃってる彼に申し訳なくなって、わたわたしていると、彼の大きな手がにゅっと頬に伸びてきて。
「ん。いつものとこで待ってるから、仕事終わらせてこい?」
「うっ、うん……!」
あ。笑顔むけてくれた。
だいじょうぶ。うん。
ラルフってば、いつも突然触れてくるから、わたしもそわそわしちゃうよね。
頷いて、くるりと彼に背を向けてさ。
ちょっとだけ焦りながら、奥の事務室へ駆けてった。
いや……あのその。
久しぶりのラルフの笑顔は、心臓に悪いね……?
そしたらふたりとも、なんとも言えないにがーい顔をしてさ、笑ってた。
「それ、ラルフにちゃんと話しなよ」
「うっ……」
痛いところをつかれましたとも。
はい、そのとおりでございます。
「でもね? でもだよ?
……なんかさ。勝手に、わたしの想い? 希望? を押しつけるのも、なんだかなーって。思うといいますか」
なんといいますか。
ラルフにもっと高いところにいってほしいの。だからもっと頑張れ――なんて言えないじゃん?
押しつけじゃん?
だからね。いじいじといいわけを並べてみたけれど、ケーシャには背中を叩かれるし、ジャックには苦笑いをされるし。
ええと……やっぱり、だめですかね……?
でも、わたしだって、そういういいわけばっかりしてるの、よくないって思っているよ?
一方的に押しつけるのもいけないって、思ってる。
だからね? せめてわたしの方は、ちゃんと、行動しようっていいますか。
「ラルフは絶対、もっと大きくなるもん。だから、そのときにね? ……ちゃんと、つりあうわたしでいたいの」
家で勉強する時間もかなり増やしてる。
家に帰ると、ラルフは一緒に過ごしたがるけど、ちゃんと断って、勉強の時間つくってね?
主に外国語の勉強。ギルドで上に行きたいなら必須スキルだしね。
……まあ、ここのエイルズギルドで上に行く予定があるのかどうかと聞かれると、それまでなんだけど。
あとは、経営学もちょっと学びたいけど、学びにいくお金と時間がないから、その分、ちがう分野の仕事をふってもらえないかって上司にかけあったりもしてさ。仕事たくさん入れたりして。
「さすが。真面目だねー」
「茶化さないでよ」
「いやいや、感心してるの!」
ラルフと恋人同士になったけど、だから甘えたくないというか。
もっと頑張りたいっていうか。
……優秀な彼に負けたくないっていうか。
そういうの、ばれてるのかな。
ふたりとも肩をすくめて言うんだよね。
「ラルフ、根がバカだから今は浮かれて薄々……くらいだけど、そのうちスネると思うぞ?」
「だね。近くに住んでるから、そりゃあ一緒に過ごす時間もそこそこあるのはわかるけどさ。もうちょっとだけラルフにエサあげてもいいと思う」
「いや、エサって」
「エサでしょ。デートしたりとか。そういうの。――ね?」
「うっ……善処します……」
そうですよね。
うん……わかってる……よ?
たしかに、家で過ごす時間はそれなりにあるけど、デートとか、ぜんぜんしてなかった。忙しいっていって、逃げてばっかりで。
ラルフが無理強いしないのに甘えてたのもあるのかも。
勉強するのを邪魔するのはダメだって……多分、彼も素直に思ってくれてるの、知ってるんだ。だからわたし、それを利用しちゃってたんだよね。
だって、デートとか……いまさら……どうしていいかわからないし……。
「しばらくは冒険者も忙しい時期なんだからさ、休みの日くらい、アイツに時間やってくれ」
「だね。てか、根詰めすぎ。アタシはアンタも休んだ方がいいと思う」
「…………うっ」
前向きに、検討します……。
ジャックとケーシャにいいふくめられつつ、ギルドホールへ帰還する。
閉館直前で、混雑もようやく落ち着いてきたころあいらしく、人はまばらだ。
正面から入ってホールを歩いていると、おーい! と声がかけられた。
どうやら待合用の椅子のところで、ラルフが待ってくれていたみたい。
「おつかれ。仕事、もうおわりか?」
「うん。そう。あとは報告書提出したらおわり」
「そっか」
なんてラルフってばへらって笑って、なんだか嬉しそうだ。
昨日から、遠征からの帰還でバタバタしてたもんね。ちゃんと話す時間もなかったから、なんか久しぶりな気がする。
「なら、早く提出してこいよ」
当然、待ってるってこと……なんだよね?
もうつきあい始めてから、ずっと一緒に帰ってるから慣れたかなって思ってたけど、今日はちょっと久しぶり。
さっきの話もあるからね。なんかちょっとだけ気恥ずかしくってさ。……ケーシャもジャックさんも、なんかニヤニヤ見てくるし?
ラルフと目があわせづらくて、うん……って、小さな声でしか返事できなかった。
「? ……おい、ジャック。なにか余計なことしゃべってないだろうなっ」
そしたら、ラルフってばすぐ不安になってるし。
ごめんね。他意はないんだよ?
「ないよ。むしろ、感謝されてもいいくらいだ」
「は? なんだ、それ?」
うん。ジャックさんの言うとおり。
でもラルフはまだ不安そうなんだよね。
あっ、わたしの態度が、冷たく見えたから?
それとも、朝はやくて置いてきちゃったから?
なんだかしょげちゃってる彼に申し訳なくなって、わたわたしていると、彼の大きな手がにゅっと頬に伸びてきて。
「ん。いつものとこで待ってるから、仕事終わらせてこい?」
「うっ、うん……!」
あ。笑顔むけてくれた。
だいじょうぶ。うん。
ラルフってば、いつも突然触れてくるから、わたしもそわそわしちゃうよね。
頷いて、くるりと彼に背を向けてさ。
ちょっとだけ焦りながら、奥の事務室へ駆けてった。
いや……あのその。
久しぶりのラルフの笑顔は、心臓に悪いね……?
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