【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。

2−10

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 適当なお仕事でラルフを追いだして、ついでにミリアムは管轄がちがうんで~とスルーして、他の職員におまかせ。
 ややこしくなりそうだし、わたしとは関わらないほうがいいでしょって、他の職員も手伝ってくれて。

 はぁー……疲れたよー。ほんとに、もう!
 お昼休みのときもさ、午後になってまた大倉庫の方へ行ったときもさ――もう、どうしてこうっ、うわさ話が広がるのって、早いのかなっ!

「だって、アンタとラルフ、見ていて楽しいしぃ?」

 っていうのがケーシャの言葉。
 もう、ケーシャってば。あなたも、またわたしたちで遊ぼうとしてるしっ。
 早速男性陣は、ラルフがミリアムになびくかどうかで賭けをはじめるしっ。
 あ、でも本命はわたしのほう? あ。そう。
 ……ふーん? まあ、そうよね。うん。うん。
 って! わたしもっ、ナチュラルに頷いている場合じゃなくてっ。

「いやでも、あの胸だぜ?」
「紅晶姫の名は、さすがだな……」

 胸と二つ名は別問題でしょっ!
 んもう。娯楽なら他にもあるでしょうに。手っ取り早くわたしとラルフで遊ぶんだからっ。
 
 周囲の呑気な反応に、わたしは頬を膨らませながら、午後のお仕事も淡々とこなす。
 いつまでのミリアムのことなんか考えてられないもんっ。

 でもね…………その日の、夜。



「……」
「……」
「…………すまん」
「……………………」

 えーーーっと?
 なんで、クエストの帰還報告、ミリアムと一緒に帰ってくるかな?

 大倉庫から戻ってきて、再び受付業務に戻ったときにギョッとした。
 だって、ソロで出かけていったはずのラルフが、ミリアムとふたりで帰ってきたんだもん。

 討伐モンスターの確認と、素材の引き取りは他の職員にお願いしつつ、わたしは黙って、完了報告を記入していく。
 かける言葉はとくにない。
 いまは仕事中だもん。個人の不満は、いまは言わない。我慢……我慢……。

 ミリアムは隙あらばラルフに引っ付こうとして、引き剥がされてる。
 えーっと? このやりとり、まさか一日中してたりとか……しない、よね?
 えっ? ミリアムってば、ラルフを追いかけていったの?
 でも、このクエストはソロ登録だから、報酬は全部ラルフのもの。彼女が助けようが助けまいがまったく関係ないのだけれど、それもわかって彼女はついていったの?
 なんのために?
 そんなにラルフが気にいった?
 えっ???
 紅晶姫って、あの紅晶姫でしょ???
 こう言っちゃなんだけど、首都でさ。都会慣れしている彼女が? 今さらラルフみたいなひとに? 興味持つ???
 いやいや、彼女として言わせてもらうけどねっ。ラルフって! その……モテるけど。モテるんだけど! ついでに言うと、わたしも好きなんだけどっ! でもでも、客観的に見てモテる要素、よくわかんないよっ???

 身長はそこそこあるし。
 顔も、そりゃあ、格好いい方だと思う。
 強いし。冒険者としても優秀だしっ。
 でもでもっ、女の子には上っ面だけの優しさだしっ。
 ……わたしにはめちゃくちゃやさしいけど。

 あれっ?
 褒めてるのか貶してるのかわかんなくなってきた。
 でもでもっ、紅晶姫のお眼鏡にかなうかっていわれたら、疑問といいますか。
 ……とにかくっ。住む世界がちがうの。
 だからそういうつまみ食いみたいなの、やめてほしい。

 ……ううう。
 いらいらする。
 でも、ラルフはわたしの彼氏なんだもんっ。
 ちょっかい出さないでほしいって思っちゃうのは、しょうがないじゃない……。


 なんて、頭の中ぐるぐるさせながら、ラルフに完了報告を手渡す。この完了報告を精算所に持っていったら、報酬が手に入るってわけなんだけどね。

「あれー? この子なにも言ってこないのね? ホントにラルフの彼女?」
「あのなあ。リリーは仕事中なの。失礼なこと言うな。あと、まとわりつくなっ、たく。
 ――リリー、気にするんじゃねえぞ。追っ払っても追っ払っても、マジで勝手にまとわりついてくるだけだからな?」

 ラルフの言っていることもわかる。
 ミリアムってば、めちゃくちゃしつこそうだし、嫌がるのすら楽しんでそうだもん。

 わたしがこっちで一生懸命働いているあいだ、こうやってミリアムはラルフにまとわりついて……。

 ……。
 …………。
 ………………むかむかする。

「ご用が終わりましたら、あけていただけますか? 他の方もお待ちですし」

 いろいろ言いたいことあるけど、ここで言ったら負けな気がして言わない。
 わたしが強ばった表情で無理矢理笑顔を作ってみせると、ラルフが、不安そうに眉をひそめたのがわかった。
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