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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。
2−10
しおりを挟む適当なお仕事でラルフを追いだして、ついでにミリアムは管轄がちがうんで~とスルーして、他の職員におまかせ。
ややこしくなりそうだし、わたしとは関わらないほうがいいでしょって、他の職員も手伝ってくれて。
はぁー……疲れたよー。ほんとに、もう!
お昼休みのときもさ、午後になってまた大倉庫の方へ行ったときもさ――もう、どうしてこうっ、うわさ話が広がるのって、早いのかなっ!
「だって、アンタとラルフ、見ていて楽しいしぃ?」
っていうのがケーシャの言葉。
もう、ケーシャってば。あなたも、またわたしたちで遊ぼうとしてるしっ。
早速男性陣は、ラルフがミリアムになびくかどうかで賭けをはじめるしっ。
あ、でも本命はわたしのほう? あ。そう。
……ふーん? まあ、そうよね。うん。うん。
って! わたしもっ、ナチュラルに頷いている場合じゃなくてっ。
「いやでも、あの胸だぜ?」
「紅晶姫の名は、さすがだな……」
胸と二つ名は別問題でしょっ!
んもう。娯楽なら他にもあるでしょうに。手っ取り早くわたしとラルフで遊ぶんだからっ。
周囲の呑気な反応に、わたしは頬を膨らませながら、午後のお仕事も淡々とこなす。
いつまでのミリアムのことなんか考えてられないもんっ。
でもね…………その日の、夜。
「……」
「……」
「…………すまん」
「……………………」
えーーーっと?
なんで、クエストの帰還報告、ミリアムと一緒に帰ってくるかな?
大倉庫から戻ってきて、再び受付業務に戻ったときにギョッとした。
だって、ソロで出かけていったはずのラルフが、ミリアムとふたりで帰ってきたんだもん。
討伐モンスターの確認と、素材の引き取りは他の職員にお願いしつつ、わたしは黙って、完了報告を記入していく。
かける言葉はとくにない。
いまは仕事中だもん。個人の不満は、いまは言わない。我慢……我慢……。
ミリアムは隙あらばラルフに引っ付こうとして、引き剥がされてる。
えーっと? このやりとり、まさか一日中してたりとか……しない、よね?
えっ? ミリアムってば、ラルフを追いかけていったの?
でも、このクエストはソロ登録だから、報酬は全部ラルフのもの。彼女が助けようが助けまいがまったく関係ないのだけれど、それもわかって彼女はついていったの?
なんのために?
そんなにラルフが気にいった?
えっ???
紅晶姫って、あの紅晶姫でしょ???
こう言っちゃなんだけど、首都でさ。都会慣れしている彼女が? 今さらラルフみたいなひとに? 興味持つ???
いやいや、彼女として言わせてもらうけどねっ。ラルフって! その……モテるけど。モテるんだけど! ついでに言うと、わたしも好きなんだけどっ! でもでも、客観的に見てモテる要素、よくわかんないよっ???
身長はそこそこあるし。
顔も、そりゃあ、格好いい方だと思う。
強いし。冒険者としても優秀だしっ。
でもでもっ、女の子には上っ面だけの優しさだしっ。
……わたしにはめちゃくちゃやさしいけど。
あれっ?
褒めてるのか貶してるのかわかんなくなってきた。
でもでもっ、紅晶姫のお眼鏡にかなうかっていわれたら、疑問といいますか。
……とにかくっ。住む世界がちがうの。
だからそういうつまみ食いみたいなの、やめてほしい。
……ううう。
いらいらする。
でも、ラルフはわたしの彼氏なんだもんっ。
ちょっかい出さないでほしいって思っちゃうのは、しょうがないじゃない……。
なんて、頭の中ぐるぐるさせながら、ラルフに完了報告を手渡す。この完了報告を精算所に持っていったら、報酬が手に入るってわけなんだけどね。
「あれー? この子なにも言ってこないのね? ホントにラルフの彼女?」
「あのなあ。リリーは仕事中なの。失礼なこと言うな。あと、まとわりつくなっ、たく。
――リリー、気にするんじゃねえぞ。追っ払っても追っ払っても、マジで勝手にまとわりついてくるだけだからな?」
ラルフの言っていることもわかる。
ミリアムってば、めちゃくちゃしつこそうだし、嫌がるのすら楽しんでそうだもん。
わたしがこっちで一生懸命働いているあいだ、こうやってミリアムはラルフにまとわりついて……。
……。
…………。
………………むかむかする。
「ご用が終わりましたら、あけていただけますか? 他の方もお待ちですし」
いろいろ言いたいことあるけど、ここで言ったら負けな気がして言わない。
わたしが強ばった表情で無理矢理笑顔を作ってみせると、ラルフが、不安そうに眉をひそめたのがわかった。
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