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リチャード3世

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 出発前にシュウは月から搬入されたヘリウム3で核融合炉を作成しガンロン達を完成させた。
 それからリオの因果魔術で因果を世界に向けて流した。
 これで今後、世界のどこかで英雄が現れた場合、ガンロン達をベースにした機体が世界に現れる事になる。
 
 新たな世界に行くに辺り、やるべき仕事を済ませたシュウ達はテレポートを使い月面に赴き、L21番格納庫から新たな世界に向かった。



 ◇◇◇



 時空トンネルを抜けた先には大きな城壁に囲まれた要塞都市があった。
 コンクリートのような色合いの壁面で全体を覆った全長30mはある大きな城塞だ。
 トンネルを抜けた先には兵士達がおり槍を構えながら現地語でこちらに呼びかけた。



「な、何者だ!」

「新手のゴーレムか!」



 それに対して先手を取るようにドレイクを外部スピーカーで呼び掛ける。



「あー聴こえるか。オレはドレイク。この要塞にいるリリーシャと言う近衛騎士に会いたい。」

「なに!」

「リリーシャ副団長だと!」



 彼らの警戒心が一気に募る。
 敵かも知れない相手がこの城塞最大戦力とも言えるリリーシャに御目通りを願う等警戒しない方が可笑しいのだ。
 それも既に想定済みだ。



「あぁ、以前リリーシャを助けた時に彼女が落とし物をしたんでな。届けに来た。本人に確認して貰えば分かると思うぜ」



 その後、ドレイクは無抵抗である事を現す為にコックピットのハッチを開けて生身を晒した。



「ゴ、ゴーレムから人が……」

「そう言えば、リリーシャ副団長があの穴が異界に通じているとか言っていたような……」

「あぁ、オレはその異界から来た。そこでリリーシャを助けた。オレに槍を向けるのは良いが、リリーシャの恩人であるオレを殺すのはお前達の騎士道なのか?オレを殺せば後ろのオレの仲間が全力でこの要塞を堕とすぞ」




 多少、恩着せがましい言い方で脅したが、相手にとってギデオンクラスターは未知の存在だ。
 交渉するにしても何かしらのとっかかりがなければ成り立たない。
 威圧外交になってしまうが世界の危機に晒されている彼らにとってがその方が効果的でもある。



「……分かった。今から連絡する。ただし、そこから一歩も動くな」



 こうして、伝令兵と思わしき男が馬に乗り城塞に向かって走って行った。
 
 待つ事30分
 要塞から馬に乗った一団が現れた。
 そこにはリリーシャの姿がありリリーシャはドレイクの姿を見るとまるで友人にもで接するように近づいた。



「ドレイクではないか?何故、ここに?」

「あぁ、内のボスがアンタらと交渉がしたいと言い出したモノでな。トンネルを通ってこっちに来た。少々、威圧的になったのは先に詫びとく」

「いや、寧ろ、こちらもすまない。恩人とも言える相手に槍を向ける等あってはならないのだが……」

「まぁ、仕方ないだろう。そいつらには分からん事だ。あまり責めないでやれ」

「分かった。では、案内しよう。できれば、そのゴーレムから降りてくれないか?そちらの兵器だと言うのは分かるがこの要塞では何かと刺激になるんでな」

「分かった。シュウもそれで良いか?」



 今の会話は通信で聴いていたシュウは外部スピーカーで応答した。



「えぇ、それで構いません。全員、降りなさい」



 シュウの命令もありギデオンクラスターのメンバーは全員、機体から降りてリリーシャと対面した。



「あなたがドレイクの上官か?」

「えぇ、わたしがギルド ギデオンクラスターのギルド長 シュウです。」



 この世界の礼儀作法をドレイクから聴いていたので右手を胸に当てて軽くお辞儀した。
 リリーシャもそれに応対して右手を胸に当ててお辞儀した。
 まずはリリーシャから口を開いた。



「先日は挨拶もできぬまま去ってしまい失礼した。本来なら、貴殿にも挨拶をしてから帰るべきだったのだろうが……」

「そのような気遣いは無用です。こちらも何かと忙しかった事です。それに自分の世界を憂い早急に帰る選択を取る事を間違っていると批難するつもりはありませんよ」

「寛大な心遣いに感謝する」



 それからシュウ達はリリーシャの案内で要塞都市の中に入った。
 要塞都市の中は外側が住宅街、中側に行くに連れて商業施設や宿などの産業エリアになっており、中央付近が貴族や王の根城になっているようだ。
 一番重要な機関と人物達が中央に集め防御を固める構造になっているようだった。
 
 この世界はかなり緊迫していると言っていたが城塞内には活気があり露店の店主が大声で商品を宣伝し子供達が町々を走る。

 馬になり要塞に入ったリリーシャに対して笑顔で手を振る者もいた。
 どうやら、リリーシャはかなり有名人らしい。

 話を聴く限り、近衛騎士でも指折りの実力者であり容姿とその性格も相まって高いカリスマ性を持っている言わば、アイドル的な存在の騎士のようだ。

 中央付近に来ると検問があり見慣れないシュウ達を見て門兵が槍を構えたがリリーシャが現れる「この者達は客人だ」の一言で門兵は警戒心を解き、顔パスで通過する事ができた。

 こうして、シュウ達は城の中に入る事ができた。
 尤も、城に入る際に装備品は押収された。
 空間収納で格納しようとも考えたがそれではいつでも武器を持ち込めると思われて心証を悪くすると思ったので今回は素直に預けた。

 それから応接室のような場所に案内され、護衛は1人と言う条件を加えられたのでマナを護衛にシュウは応接室で待機した。

 他のメンバーは別室で待機している。
 待機と言うよりは念のために不審人物ではないか監視されていると言う印象が強い。

 ちなみにマナを護衛に選んだのは応接室に入ると分かった時点である程度至近距離になると分かった為だ。
 なら、ラッシュを護衛につける事も考えたが仮に相手がリリーシャを護衛につけた場合、ラッシュの手の内がバレているので万が一、命を狙われた際に手の内がバレているのは非常に不味い。

 そこでマナを選んだ。
 彼女なら体の体質を上手く利用して近接戦を行う事もできる。
 これならリリーシャが誰かにラッシュの手の内を教えていても対応できると判断したからだ。
 シュウとてこの国を最初から信用している訳ではないので用心の為だ。
 そんな事を考えていると扉が開き、麻の衣のようなローブを着た50代くらいの男が現れた。
 厳格な雰囲気の男でありその後ろにリリーシャが休めの姿勢が構えていた。
 この人物が「王」と見て間違いないようだ。



「わたしがこの国の王。リチャード3世である」
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