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ユウキの思惑
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荒廃の文明
新潟基地にいたユウキは焦っていた。
NO世界から派兵された戦士は大きな戦火を挙げていた。
アジアを支配していたスフィアクリーチャーの勢力圏を今では押し返し既にインド圏まで人類の領土を取り返した。
人々は彼らを英雄と見做し大いに賞賛した。
しかし、ユウキの心は晴れ晴れとしていなかった。
彼女は考えていた。
(このままNOの世界がこちらでの優位性を得れば、この世界を支配下に置くかも知れない)
シュウの言葉を借りるなら彼らはSWNの減衰とNO世界へのスフィアクリーチャー侵攻阻止を目的としている。
これらの行為はその為の行為に過ぎない。
それが見返りと言えなくもないが見返りとしての効力が薄い気がする。
彼らは戦果を上げ過ぎた。
ユウキが予想できないほどに戦果を挙げている。
だからこそ、ユウキは考えてしまう。
将来に備えてNO世界と対等に話せるだけの戦力が必要であると……。
彼女はこの世界の価値観的に“人類が一致団結する”と言った和合的な考え方ができない。
全てを損得勘定で考えて相手の国のメリットやデメリットなどを考えた上で行動する人間だった。
その為に新たなAPの開発計画を立ち上げた。
向こうが技術提供で渡した紅桜を参考に最新技術を取り込んで作り上げた機体。
流石に装甲材が一部の技術は再現できなかったが幸か不幸かこの短期間でかなりの完成度を持った機体が完成した。
その名は“ノウソリス”と言う名前だ。
名前はユウキが何となく思い付いただけでつけた機体名だ。
この機体の開発には多くの偶然が重なった。
まず、研究チームがこの短期間に世界初の実戦に耐えられるレベルの核融合炉の開発に成功し更には自機の周りに展開する方式のバリア機能の搭載に成功した事で破格の防御性を獲得した。
更に紅桜譲りの高いフレーム強度を獲得した事で0G~3Gまでの環境に対応したAPが完成した。
紅桜に搭載された量子型インターフェースは再現できなかったがインターフェースは既存の体電流測定方式を更に向上させたシステムを採用する事ができた。
それはたった3ヶ月で実現できたのは奇跡に等しくしかも、既存のAS生産ラインを流用しパーツも60%共有化する事にも成功したので生産性も非常に高い。
更に地球での戦況が好転した事により地球と宇宙の流通の著しく回復し月からヘリウム3を確保する事にも成功した。
何もかもが上手く行っておりノウソリスは既に1000機以上の配備に成功した。
そして、パイロット中でも優秀なパイロットはノウソリスの改良機であるノウソリス改に搭乗する事が許され、新潟基地副指令直属の部隊に配備される事になった。
これでユウキが抱える戦力も大幅に増産された。
だが、そこで新たな考えが浮かんでしまう。
このままのペースではNOの戦士は地球圏を全て奪還するだろう。
それを逆算するとノウソリスの完全配備前に全て完遂されてしまう。
確かに地球圏を救い、人類を存続させると言う願いをユウキは持っているがだからこそ、NO世界と対等な関係を結びたいと考えていた。
もし、対等でなければ、こちらが侵略を受けてしまうからだ。
だからこそ、彼らの進撃を少しばかり遅延させる必要があると考えた。
それではSWNの削減と言うNO側の理念に反するが少しくらいなら大丈夫だろうとユウキは慢心した。
「でも、どうやって遅延させようかしら……」
そこが悩みどころだった。
どうすれば、この進撃を不自然ではない形で一時的に食い止める事ができるか……。
そこでユウキは状況を整理する。
NOはゲームの世界であると言う事だ。
正確には3次元世界をプラットフォームにゲームの機能をつけた世界だ。
そして、そのゲームを運営する企業が存在する。
その企業に何らかの妨害行為を行えれば遅延できるのではないか?とユウキは考えた。
幸い、その方法はあった。
「全ての世界は繋がっている……NO世界を介して向こうの地球にリンクすればいけるかも知れないわね。紅桜に搭載された長距離通信機器と因果転送装置を駆使すれば或いは……」
ユウキはかつて、並行世界を観測しより良い未来を選択する装置としてスーパーポジション式多次元存在観測機(通称、因果転送装置)と言う装置を開発した事があった。
その装置は他世界を観測し観測者をその世界に転送すると言うシステムだった。
尤も認識並びにデータの送信技術に不備があり観測者の強い認識力に依存しシステムとして不安定なモノではあったので実用化を見送った。
しかし、紅桜のデータベースにあった“スマホ”と言う長距離通信特化デバイスを使えば、量子情報を転送する事もできる。
理論的に言えば、これをAPシュミレーターに組み込めば、こちらの世界でシュミレーターを運用しながら機体の量子データを他の世界に転送し機体を実体化させる事もできる。
そして、その世界で武力干渉も可能となるだろう。
「確か、NOの世界を運営しているのはアーリアサイバーテクノロジー社よね。あっちの地球でその名を使って武力干渉すれば、妨害できそうね」
過激なテロをする必要はない。
ただ、少し邪魔をすれば良いだけの話だ。
NOの戦士はこちらの世界にとっても有用だ。
だが、ほんの少し勢いを落として欲しいだけだ。
「後は実行するだけね」
ユウキはそのように言って机を立ち、研究を開始した。
新潟基地にいたユウキは焦っていた。
NO世界から派兵された戦士は大きな戦火を挙げていた。
アジアを支配していたスフィアクリーチャーの勢力圏を今では押し返し既にインド圏まで人類の領土を取り返した。
人々は彼らを英雄と見做し大いに賞賛した。
しかし、ユウキの心は晴れ晴れとしていなかった。
彼女は考えていた。
(このままNOの世界がこちらでの優位性を得れば、この世界を支配下に置くかも知れない)
シュウの言葉を借りるなら彼らはSWNの減衰とNO世界へのスフィアクリーチャー侵攻阻止を目的としている。
これらの行為はその為の行為に過ぎない。
それが見返りと言えなくもないが見返りとしての効力が薄い気がする。
彼らは戦果を上げ過ぎた。
ユウキが予想できないほどに戦果を挙げている。
だからこそ、ユウキは考えてしまう。
将来に備えてNO世界と対等に話せるだけの戦力が必要であると……。
彼女はこの世界の価値観的に“人類が一致団結する”と言った和合的な考え方ができない。
全てを損得勘定で考えて相手の国のメリットやデメリットなどを考えた上で行動する人間だった。
その為に新たなAPの開発計画を立ち上げた。
向こうが技術提供で渡した紅桜を参考に最新技術を取り込んで作り上げた機体。
流石に装甲材が一部の技術は再現できなかったが幸か不幸かこの短期間でかなりの完成度を持った機体が完成した。
その名は“ノウソリス”と言う名前だ。
名前はユウキが何となく思い付いただけでつけた機体名だ。
この機体の開発には多くの偶然が重なった。
まず、研究チームがこの短期間に世界初の実戦に耐えられるレベルの核融合炉の開発に成功し更には自機の周りに展開する方式のバリア機能の搭載に成功した事で破格の防御性を獲得した。
更に紅桜譲りの高いフレーム強度を獲得した事で0G~3Gまでの環境に対応したAPが完成した。
紅桜に搭載された量子型インターフェースは再現できなかったがインターフェースは既存の体電流測定方式を更に向上させたシステムを採用する事ができた。
それはたった3ヶ月で実現できたのは奇跡に等しくしかも、既存のAS生産ラインを流用しパーツも60%共有化する事にも成功したので生産性も非常に高い。
更に地球での戦況が好転した事により地球と宇宙の流通の著しく回復し月からヘリウム3を確保する事にも成功した。
何もかもが上手く行っておりノウソリスは既に1000機以上の配備に成功した。
そして、パイロット中でも優秀なパイロットはノウソリスの改良機であるノウソリス改に搭乗する事が許され、新潟基地副指令直属の部隊に配備される事になった。
これでユウキが抱える戦力も大幅に増産された。
だが、そこで新たな考えが浮かんでしまう。
このままのペースではNOの戦士は地球圏を全て奪還するだろう。
それを逆算するとノウソリスの完全配備前に全て完遂されてしまう。
確かに地球圏を救い、人類を存続させると言う願いをユウキは持っているがだからこそ、NO世界と対等な関係を結びたいと考えていた。
もし、対等でなければ、こちらが侵略を受けてしまうからだ。
だからこそ、彼らの進撃を少しばかり遅延させる必要があると考えた。
それではSWNの削減と言うNO側の理念に反するが少しくらいなら大丈夫だろうとユウキは慢心した。
「でも、どうやって遅延させようかしら……」
そこが悩みどころだった。
どうすれば、この進撃を不自然ではない形で一時的に食い止める事ができるか……。
そこでユウキは状況を整理する。
NOはゲームの世界であると言う事だ。
正確には3次元世界をプラットフォームにゲームの機能をつけた世界だ。
そして、そのゲームを運営する企業が存在する。
その企業に何らかの妨害行為を行えれば遅延できるのではないか?とユウキは考えた。
幸い、その方法はあった。
「全ての世界は繋がっている……NO世界を介して向こうの地球にリンクすればいけるかも知れないわね。紅桜に搭載された長距離通信機器と因果転送装置を駆使すれば或いは……」
ユウキはかつて、並行世界を観測しより良い未来を選択する装置としてスーパーポジション式多次元存在観測機(通称、因果転送装置)と言う装置を開発した事があった。
その装置は他世界を観測し観測者をその世界に転送すると言うシステムだった。
尤も認識並びにデータの送信技術に不備があり観測者の強い認識力に依存しシステムとして不安定なモノではあったので実用化を見送った。
しかし、紅桜のデータベースにあった“スマホ”と言う長距離通信特化デバイスを使えば、量子情報を転送する事もできる。
理論的に言えば、これをAPシュミレーターに組み込めば、こちらの世界でシュミレーターを運用しながら機体の量子データを他の世界に転送し機体を実体化させる事もできる。
そして、その世界で武力干渉も可能となるだろう。
「確か、NOの世界を運営しているのはアーリアサイバーテクノロジー社よね。あっちの地球でその名を使って武力干渉すれば、妨害できそうね」
過激なテロをする必要はない。
ただ、少し邪魔をすれば良いだけの話だ。
NOの戦士はこちらの世界にとっても有用だ。
だが、ほんの少し勢いを落として欲しいだけだ。
「後は実行するだけね」
ユウキはそのように言って机を立ち、研究を開始した。
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