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隣国からの救援要請
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王都に帰還してから数日後、商人との間で噂になっていた。
太陽神教ミトラスが荒れている。
銀髪の悪魔を恐れて多くの者が離れているらしい。
神の神託を受けたのに結局、負けているからな……皆、言っているぞ「悪魔はいるが神などいない」って。
太陽神教は勝手に自壊を始めた。
人の言葉とは恐ろしいモノで悪い噂を流されればそれが本当の事にように風潮されそれがいつか“真実”になる。
仮に冤罪、濡れ衣だとしても一度、そのように思い込むと人間が差別を行ってしまうしそれが“真実”だと思い込む。
況して、神託を出しておいて負けるなど神への信用が地に堕ちるには恰好の判断材料だ。
今頃、教皇的な人は「この戦に負けた事も神の思し召しであり死んだ者達は殉教により天に召されたでしょう」とでも言って口八丁で誤魔化しているだろう。
彼らは地獄に送られた。
そして、この世界には天国はない。
無くなってしまったのだ。
直接的な理由はわたしにあるが、人間が天国なんて要らないと言うからそうしただけに過ぎない。
そして、どうもその神託は他の者も受けていたらしく。
後々、聴いた話だが、わたしが捉えたマイトの指揮官はどうやら、マイトの王が神の神託を受け“ユイールは悪魔の力を借りてダンジョンの兵器を多く所有している。神はそれをお前達に明け渡す。いますぐ兵を伴えば富が入るだろう”と唆され戦争を仕掛けたらしい。
確かにダンジョンの武器をユイールは多く所有しているので間違ってはいない。
恐らく、邪神経由でその事が露見していると見るべきだろう。
ダンジョンの兵器は超兵器であり公にすれば戦争などが起こると思い伏せていたがこの噂は他の国に広まっていれば新たな戦いを生むかも知れない。
ここでユイールが倒されるのはわたしとしてはよろしく無かったのでダンジョンにはいかずしばらく、王都に滞在した。
そんなある日の事だ。
事態は動いた。
突然、リオン陛下から呼び出され王城に向かう事になった。
城の会議室に通されるとそこにはリオン陛下とアルフレッド叔父さんとわたしと対面する形で2人の男性がおり2人とも気軽い感じの正装を着ていた。
その内の1人が頭を下げた。
「お久しぶりです。リオン陛下。」
「息災か?ライパ陛下?」
どうやら、相手はどこかの国の王様のようだ。
わたしのその事を訝しんでいると叔父さんが耳打ちして「この方は南方にあるディール王国から来た友好国の王様だ」と説明した。
叔父さんが友好国と言うなら多分、問題ないだろう。
味方と偽装して背後から奇襲する為の布石かも知れないと考えられたがその時は契約と言う呪詛魔術をかけてしまえば良い。
とりあえず、今は相手の話を聴く事にした。
「突然の訪問を受けてくれた事を深く感謝する。何分、我が国の存亡がかかっていてな。どうしても、貴国に頼らざるをえんのだ。」
「事のあらましは兵士から聴いている。貴国で大量発生した魔物を駆逐する為にダンジョンの兵器を貸与できないか?と言う交渉だったか?」
あぁ、なるほど、その為にわたしが呼ばれたのかな。
ダンジョンの兵器はユイール王国の物ではない。
わたしのモノだ。
だから、所有者としてこの会談に参加させられたのだ。
「その通りです。どうやら、貴国には噂ではあるが多くのダンジョンの兵器があると聴く。正直、噂を信じる訳にはいかないが我が国はそれだけ追い詰められている。もし、本当ならどうか貸して貰えないだろうか!」
ライパ陛下は頭を下げる。
そんな噂に縋るほど彼らは追い詰められているのは彼の目から見ても明らかだった。
「その噂は嘘ではありませんが少し誤解をされている。我々、ユイールはダンジョンの武器を所有していない。ダンジョンの武器を所持する騎士を抱えているだけなのだ。それがここにいるレティシア オバルート譲だ。」
「何と!あなたがかの有名なレティシア オバルート殿ですか!銀髪の女と聴いていましたがよもや、こんな可憐な少女だとは……」
その言い方だとわたしの容姿はかなり曲解されているのではないだろうか?
銀髪でゴリラのような顔をした怪物のような姿でも想像していたのだろうか?
「よもや、銀陽の戦乙女がダンジョンの兵器の保有者とはな……いや、噂通りの力ならそれも頷けるか……」
「そう言う事です。ユイール王国としてダンジョンの兵器を得れば他国に緊張を奔らせると思い内密にしていたのです。ですから、ユイール王国ではなくそれを回収したレティシア嬢が全て管理しているので我々に口出しする権利はないのです」
「中々、方便的な言い回しにも聞こえるがリオン陛下の言わんとする事は理解できた。レティシア殿どうか……ダンジョンの武器を貸与……もしくは売ってくれないか!」
ライパ陛下は更に頭を下げる。
わたしは迷った。
人助けは悪い事ではないが無分別に行う訳にはいかない。
仮に貸与しても返してくれる保証があるのかと言う問題だ。
それはギアスをかければ問題ないがライパ陛下の知らぬところでダンジョン兵器を使った者が力に魅入られ奪い取る可能性もあり仮にそれが無いとしても別の人間が魅入られ奪い取り力を持ち増長する可能性もある。
それが大きな戦争になり流血が伴う事もある。
人間とは“力”を持ったら人が変わる。
非道にも外道にも平気で変わり一見、善人そうに見えても自己主張の激しい人間になったりと環境に流され、倫理観を簡単に失う。
彼らがそうならない確証はない。
救う事も責任が伴う。
救った人間が殺人を働き多くの流血を流すなら救っても意味はない。
「正直、言わせて頂きます。わたしは人間と言う者をそれほど信じていません。仮にダンジョンの武器をわたしが与えてもあなた達がダンジョンの武器を奪い他国に侵略するかも知れない。そうなれば、わたしはただの与え損になりますし人間と言うのは平然とそう言った事をする生き物だと思っています」
わたしが何を言いたいのかイマイチ、理解できていないようだったが「不穏」な雰囲気であり「貸さない理由」を述べているように聴こえたライパ陛下は反駁しようとしたがわたしは右手を出して制した。
「ですので、契約を交わして下さい。わたしが開示する条件を全て呑める。武器を貸与しても構いませんしわたし自身が出向くのも一向に構いません」
「契約……ですと」
「1つ、貸与した武器を奪った場合、貴国がわたしに対して宣戦布告したモノと見なしレティシア オバルートと戦争をする意を示したモノをする。
2つ、貸与した武器を国内の魔物討伐以外で使用した場合、1と同様に宣戦布告の意志と受け取る。
3つ、武器を貸与は最終手段でありレティシア オバルートでも処理しきれないと判断された時のみ貸与の条件とする。これらの条件を呑める場合のみわたしはあなた達に協力します」
これは不用意に相手に“力”を与えない手段だ。
相手が国内の魔物を被害に悩んでいるだけならわたしが全部討伐すれば良いだけであり武器は必要ではない。
仮にこの場合でも武器を欲した場合、彼らには下心があると見なせるので見捨てると言う選択もできる。
本気で国内の魔物に頭を悩ませているならダンジョンの武器と言う力を欲する貪欲などを捨てられるはずだ。
過信している訳ではないがよほどの相手でもない限りわたしは魔物に負けたりしない。
それでも苦戦する時に武器を貸与すれば良いだけの話だ。
「……分かった。我々に選択の余地はない。貴殿の契約の契約を全て呑もう。」
「ならば、後で契約書と念の為にわたしが施す契約を遵守させる魔術を陛下にかけます。武器の貸与をした場合、その事を兵士達に徹底して下さい。わたしは一般兵の裏切りとて許容しませんしそれも国の責任としますからご留意下さい」
わたしの真剣な眼差しが本気であると物語っておりライパ陛下は息を呑み「わ、分かった」と肯定した。
それからわたしはライパ陛下の傍にいた交渉役の宰相補佐官と契約について細かく話し合った。
これはユイール王国に対する要請でありその兵力としてわたしが派遣されると言う形であり十分な謝礼とディール国内にあるダンジョンの立ち入り許可証をわたしに譲渡すると言う条件で契約は成立した。
わたしがそのままAPでディール王国に向かっても良いがこの契約を知らない現地の王族や指揮官に誤解されて内政干渉だなんだと後々、騒がれて戦争の口実を作られても堪らないのでいつか、多人数に移動する事もあるかも知れないと思って作っていた魔術式4輪自動車を走らせてライパ陛下と共にディール王国を目指した。
太陽神教ミトラスが荒れている。
銀髪の悪魔を恐れて多くの者が離れているらしい。
神の神託を受けたのに結局、負けているからな……皆、言っているぞ「悪魔はいるが神などいない」って。
太陽神教は勝手に自壊を始めた。
人の言葉とは恐ろしいモノで悪い噂を流されればそれが本当の事にように風潮されそれがいつか“真実”になる。
仮に冤罪、濡れ衣だとしても一度、そのように思い込むと人間が差別を行ってしまうしそれが“真実”だと思い込む。
況して、神託を出しておいて負けるなど神への信用が地に堕ちるには恰好の判断材料だ。
今頃、教皇的な人は「この戦に負けた事も神の思し召しであり死んだ者達は殉教により天に召されたでしょう」とでも言って口八丁で誤魔化しているだろう。
彼らは地獄に送られた。
そして、この世界には天国はない。
無くなってしまったのだ。
直接的な理由はわたしにあるが、人間が天国なんて要らないと言うからそうしただけに過ぎない。
そして、どうもその神託は他の者も受けていたらしく。
後々、聴いた話だが、わたしが捉えたマイトの指揮官はどうやら、マイトの王が神の神託を受け“ユイールは悪魔の力を借りてダンジョンの兵器を多く所有している。神はそれをお前達に明け渡す。いますぐ兵を伴えば富が入るだろう”と唆され戦争を仕掛けたらしい。
確かにダンジョンの武器をユイールは多く所有しているので間違ってはいない。
恐らく、邪神経由でその事が露見していると見るべきだろう。
ダンジョンの兵器は超兵器であり公にすれば戦争などが起こると思い伏せていたがこの噂は他の国に広まっていれば新たな戦いを生むかも知れない。
ここでユイールが倒されるのはわたしとしてはよろしく無かったのでダンジョンにはいかずしばらく、王都に滞在した。
そんなある日の事だ。
事態は動いた。
突然、リオン陛下から呼び出され王城に向かう事になった。
城の会議室に通されるとそこにはリオン陛下とアルフレッド叔父さんとわたしと対面する形で2人の男性がおり2人とも気軽い感じの正装を着ていた。
その内の1人が頭を下げた。
「お久しぶりです。リオン陛下。」
「息災か?ライパ陛下?」
どうやら、相手はどこかの国の王様のようだ。
わたしのその事を訝しんでいると叔父さんが耳打ちして「この方は南方にあるディール王国から来た友好国の王様だ」と説明した。
叔父さんが友好国と言うなら多分、問題ないだろう。
味方と偽装して背後から奇襲する為の布石かも知れないと考えられたがその時は契約と言う呪詛魔術をかけてしまえば良い。
とりあえず、今は相手の話を聴く事にした。
「突然の訪問を受けてくれた事を深く感謝する。何分、我が国の存亡がかかっていてな。どうしても、貴国に頼らざるをえんのだ。」
「事のあらましは兵士から聴いている。貴国で大量発生した魔物を駆逐する為にダンジョンの兵器を貸与できないか?と言う交渉だったか?」
あぁ、なるほど、その為にわたしが呼ばれたのかな。
ダンジョンの兵器はユイール王国の物ではない。
わたしのモノだ。
だから、所有者としてこの会談に参加させられたのだ。
「その通りです。どうやら、貴国には噂ではあるが多くのダンジョンの兵器があると聴く。正直、噂を信じる訳にはいかないが我が国はそれだけ追い詰められている。もし、本当ならどうか貸して貰えないだろうか!」
ライパ陛下は頭を下げる。
そんな噂に縋るほど彼らは追い詰められているのは彼の目から見ても明らかだった。
「その噂は嘘ではありませんが少し誤解をされている。我々、ユイールはダンジョンの武器を所有していない。ダンジョンの武器を所持する騎士を抱えているだけなのだ。それがここにいるレティシア オバルート譲だ。」
「何と!あなたがかの有名なレティシア オバルート殿ですか!銀髪の女と聴いていましたがよもや、こんな可憐な少女だとは……」
その言い方だとわたしの容姿はかなり曲解されているのではないだろうか?
銀髪でゴリラのような顔をした怪物のような姿でも想像していたのだろうか?
「よもや、銀陽の戦乙女がダンジョンの兵器の保有者とはな……いや、噂通りの力ならそれも頷けるか……」
「そう言う事です。ユイール王国としてダンジョンの兵器を得れば他国に緊張を奔らせると思い内密にしていたのです。ですから、ユイール王国ではなくそれを回収したレティシア嬢が全て管理しているので我々に口出しする権利はないのです」
「中々、方便的な言い回しにも聞こえるがリオン陛下の言わんとする事は理解できた。レティシア殿どうか……ダンジョンの武器を貸与……もしくは売ってくれないか!」
ライパ陛下は更に頭を下げる。
わたしは迷った。
人助けは悪い事ではないが無分別に行う訳にはいかない。
仮に貸与しても返してくれる保証があるのかと言う問題だ。
それはギアスをかければ問題ないがライパ陛下の知らぬところでダンジョン兵器を使った者が力に魅入られ奪い取る可能性もあり仮にそれが無いとしても別の人間が魅入られ奪い取り力を持ち増長する可能性もある。
それが大きな戦争になり流血が伴う事もある。
人間とは“力”を持ったら人が変わる。
非道にも外道にも平気で変わり一見、善人そうに見えても自己主張の激しい人間になったりと環境に流され、倫理観を簡単に失う。
彼らがそうならない確証はない。
救う事も責任が伴う。
救った人間が殺人を働き多くの流血を流すなら救っても意味はない。
「正直、言わせて頂きます。わたしは人間と言う者をそれほど信じていません。仮にダンジョンの武器をわたしが与えてもあなた達がダンジョンの武器を奪い他国に侵略するかも知れない。そうなれば、わたしはただの与え損になりますし人間と言うのは平然とそう言った事をする生き物だと思っています」
わたしが何を言いたいのかイマイチ、理解できていないようだったが「不穏」な雰囲気であり「貸さない理由」を述べているように聴こえたライパ陛下は反駁しようとしたがわたしは右手を出して制した。
「ですので、契約を交わして下さい。わたしが開示する条件を全て呑める。武器を貸与しても構いませんしわたし自身が出向くのも一向に構いません」
「契約……ですと」
「1つ、貸与した武器を奪った場合、貴国がわたしに対して宣戦布告したモノと見なしレティシア オバルートと戦争をする意を示したモノをする。
2つ、貸与した武器を国内の魔物討伐以外で使用した場合、1と同様に宣戦布告の意志と受け取る。
3つ、武器を貸与は最終手段でありレティシア オバルートでも処理しきれないと判断された時のみ貸与の条件とする。これらの条件を呑める場合のみわたしはあなた達に協力します」
これは不用意に相手に“力”を与えない手段だ。
相手が国内の魔物を被害に悩んでいるだけならわたしが全部討伐すれば良いだけであり武器は必要ではない。
仮にこの場合でも武器を欲した場合、彼らには下心があると見なせるので見捨てると言う選択もできる。
本気で国内の魔物に頭を悩ませているならダンジョンの武器と言う力を欲する貪欲などを捨てられるはずだ。
過信している訳ではないがよほどの相手でもない限りわたしは魔物に負けたりしない。
それでも苦戦する時に武器を貸与すれば良いだけの話だ。
「……分かった。我々に選択の余地はない。貴殿の契約の契約を全て呑もう。」
「ならば、後で契約書と念の為にわたしが施す契約を遵守させる魔術を陛下にかけます。武器の貸与をした場合、その事を兵士達に徹底して下さい。わたしは一般兵の裏切りとて許容しませんしそれも国の責任としますからご留意下さい」
わたしの真剣な眼差しが本気であると物語っておりライパ陛下は息を呑み「わ、分かった」と肯定した。
それからわたしはライパ陛下の傍にいた交渉役の宰相補佐官と契約について細かく話し合った。
これはユイール王国に対する要請でありその兵力としてわたしが派遣されると言う形であり十分な謝礼とディール国内にあるダンジョンの立ち入り許可証をわたしに譲渡すると言う条件で契約は成立した。
わたしがそのままAPでディール王国に向かっても良いがこの契約を知らない現地の王族や指揮官に誤解されて内政干渉だなんだと後々、騒がれて戦争の口実を作られても堪らないのでいつか、多人数に移動する事もあるかも知れないと思って作っていた魔術式4輪自動車を走らせてライパ陛下と共にディール王国を目指した。
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