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第四章 最強幼女襲来、神々への敵意
大きすぎる欠陥
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蛇顔の男――レールスは当惑している、現在進行形で。
レールスは己の計画を完璧だと思っていた。己の計画において、唯一目の上のたん瘤となりうるソヨの信用を落とし、インフェスタの人々を騙し、異世界転移できる者たちを各世界に送り、全ての世界を統一する。そしてその上で自分が全ての世界を征服する。
異世界に送った者たちが神に勝つことをレールスは期待などしていなかった。レールスがその者たちに望んでいた成果は、異世界の者たちを味方につけることと、後にやってくる神々にわざと負けること。まぁ本気でやったところで勝てないのでわざとではないのだが。
神々に負け、天界へと連れて行かれたならレールスが天界へ転移できる準備は整えていた。そしてレールスは現在、普段とは比べ物にならない程の魔力をその身に秘めている。
それは自分が言葉巧みに騙したインフェスタの人々から大量に奪った魔力が原因だった。その人数、およそ一億。つまりレールスは今、普段の約一億倍の魔力を所持しているということになるのだ。
それ程まで魔力を必要としたのは、当然天界へ転移するためでもあるが、転移した後にキチンと神々を殺すためでもあった。
複数いる神々相手に半端な魔力では話にならない。なのでレールスはインフェスタ最強と謳われたソヨの何倍もの魔力を有するために力を尽くしたのだ。
万全に万全を期した己の計画が狂うことはあり得ないと、レールスは高を括っていた。己の計画には最初から大きな欠陥があり、そこからどんどん僅かな歪みが生じているのにも気づかずに。
僅かな歪みは神々が予想よりも早く異分子たちの存在に気づき、異分子たちがレールスの望んでいた働きも満足に果たせていなかったことだ。
そしてレールスはまだ知らない。己の計画に最初から存在していた大きすぎる欠陥が、今目の前で男神を膝枕している存在だということを。
「何だこれは?」
ようやく発することができた言葉はそれだった。それも無理はない。牢に囚われた己の道具。そしてこちらに絶対零度の視線を向けてくる複数の神々だと思われる存在。そしてレールスにとっての邪魔者であるソヨの隣で呑気に正座している謎の少年と、何故か爆睡中の男神。それらが眼前に広がっているのだから、疑問の声を上げるなというのは無理な話だ。
「えーっと、君がヘビくんだっけ?」
「命、違うのじゃ。こやつはレールスというのじゃ」
「あぁ、そうなんだ。名前聞いてなかったけ?」
レールスの疑問をガン無視でソヨと会話し始めた命に、レールスは苛立ちを孕んだ眼を向けたが、命は全く興味が無いようにとぼけた表情を見せた。
「何だこれは?と聞いている」
「ん?……あぁ、何って。創造主と、その膝で眠る可愛らしい男神の図だけど?」
少し怒気を孕んだ声で再度尋ねたレールス。そんなレールスの視線が自分の膝部分に注がれていることに気づいた命は、「見て分からないのか?」とでも言いたげな顔で答えた。
レールスからすれば推定身長一九〇センチほどの静由を可愛いと称した命の美的感覚を疑うのは必然だったが、そもそもレールスが問うたのはそれだけでは無かったのですぐに静由のことは眼中になくなった。
何故仲睦まじい感じでソヨと謎の少年が並んでいるのか?謎の少年も神なのか?そもそもいつの間にソヨはこの天界を訪れたのか?
これらの様々な疑問を総じて先刻の問いをレールスは投げかけたのだが、それらが己の計画の歪みを自覚させる最初の発端にもなっていた。
「レールス、どうするつもりなのじゃ?神に逆らうというのなら、まずわらわが相手になってもいいのじゃぞ」
「はっ……世迷言を。今のお前は最早脅威ではない。今インフェスタで……いや?森羅万象における絶対的強者は私だ」
ソヨは無機質な瞳でレールスに睨みを利かせると宣戦布告をした。だが流石のソヨでも、普段の約一億倍の魔力を保持するレールスに勝つのは困難を極める。
それのせいで高を括っているレールスの顔のギリギリ右側。レールスがそれに気づくことができたのは己の横を通り抜けた後だった。
気づけた理由は、それが戦闘場の壁にぶつかりその反動で大爆発を起こしたからである。刹那、レールスの右頬に一筋の鮮紅が流れる。
「なっ……」
「失礼……うっかり魔力が滑りました」
「もうー、デグネフはおっちょこちょいだなぁ……でも怒った顔も可愛いっ!」
それの正体は、デグネフが本能的に放った魔法だった。デグネフの意思関係なく放たれたものなので、それは行使された魔法とは言い難く、言い換えれば魔力の塊がレールスを襲ったようなものだった。
神々にとって揺るがない共通認識。それは森羅万象において絶対的な強者、そして最も尊い存在であるのは創造主である命だということだ。その絶対不変の認識を汚したレールスに、デグネフは湧き上がる憤怒を抑えることができなかったのだ。
だがそれはデグネフだけではなく、他の神々もあと少しでデグネフと同じことを仕出かす勢いだった。
レールスはデグネフによって放たれた魔法の威力だけに言葉を失ったわけではない。天界中を包んだ、耳を塞いでも襲ってくるような轟音を伴ったあの魔法が直撃した戦闘場の壁が、少しの傷も綻びも見せなかったことに、レールスは最も腰を抜かしそうになっているのだ。
これだけの力を持つ神の魔法をものともしない天界という空間を創り出した存在は、一体どれだけの力を秘めているのか?そんなことをレールスは考え始めてしまったのだ。
そしてその存在が、怒り狂ったデグネフにさえも裏表のない笑顔を向ける命であることをレールスはまだ知らない。
「んん!話がズレたけど、レールスくんは創造主って存在は知ってるの?」
「……何だそれは?」
話を転換するように咳払いをした命に、レールスは怪訝そうな視線を向ける。先刻から突如天界に現れた自分に対して何の反応も示さない異質な存在に、レールスは一番の警戒を向けていたのだ。
そんな警戒対象が突如振ってきた質問に、レールスは訳が分からぬまま正直に答えた。
「はぁ……そんなことも知らないのに神を倒すだとか、全世界を手中に収めるだとか…………お笑い草も大概にしてくれないかな?」
「全く、片腹痛いとは当にこのことじゃな!」
命はデグネフに向けた暖かい笑顔とは対照的すぎる冷たい相好をレールスに向けた。レールスの背筋に数えるのもおぞましい程の鳥肌が立つ。
そんなレールスを尻目に、ソヨは命に同調ついでに炎乱特有の若干難しい表現を使ったことで、謎のドヤ顔をかましていた。
「創造主とは、創造神のことか?」
「半分正解で半分間違い。創造主は神ではないよ。創造主は森羅万象においてたった一つの存在だからね」
創造神は世界や人間といった世界の住人を造ったとされる神のことだ。創造主がそういう存在であるのは間違いないが、創造主は神ではない。創造主は神如き器に納まる存在ではないのだから。
「どういうことだ?」
「はぁ……説明がめんどくさいな。まぁとりあえず命に攻撃してみなよ。そしたら全部分かると思うからさ」
「「命様!?」」
だんだんと無知なレールスに説明するのが煩わしくなってきた命は投げやりな感じでそう言った。レールスが命にいかなる魔法攻撃を向けようと、命に傷一つ付けることも叶わないからだ。
それを理解していても、命に絶対的な忠誠を誓う神々は創造主に対する敵意を許すような命の発言に激しく動揺した。
「ならば警戒態勢に入れ。そのままではそこで寝ている男諸共死ぬぞ」
「えー、やだよ。静由が起きちゃうじゃん」
「ふざけているのか?」
攻撃してこいと言っておきながら、闘う姿勢に全くならない命にレールスは苛立ちを含んだ声で忠告した。命に警戒態勢など必要なく、寧ろ命にとっては静由の安眠の方が大事なのでそれをあっさり拒否した。
「だって命。静由がお仕事頑張ったご褒美に膝枕するって約束したんだもん。約束した以上、静由にはゆっくり休んで欲しいじゃん?」
その理屈は命にしか理解できないものなので神々も同意を示したりはしなかった。神々はただいつも通りの命を享受するだけである。
一方のレールスは命に軽んじられているのだと勘違いし(実際にそうなのだが)、蟀谷に青筋を浮かべた。
「後悔してももう遅いぞ!」
舌打ちを一つかましたレールスは炎属性の高等魔法を命に向かって放った。命に向けられたものではあるが、多くの魔力を保持したレールスの魔法は戦闘場全体を包むほどだったので、命だけではなく神々にも影響が及びそうな程の威力だった。
「消えろ」
だがどんなにすごい魔法でも、どんなに広範囲の攻撃でも。命の前では遊戯のように、幻のように無意味になってしまう。
命が一言発すると、レールスの魔法は跡形もなく無くなり、レールスは魂が抜けたように顔を強張らせた。
「ぐっ……どうなっている?」
魔法が消えた瞬間、何故かレールスは己の身の内に保持していた大量の魔力を感じることができなくなり、思わずその場に膝をついた。
「命が消えろって思ったのは魔法じゃない。ヘビくんの魔力そのものだよ」
「なん、だと?」
命の言っている意味を理解できないのか、したくないのか。レールスは震えながら命に鬼胎の視線を向けた。
「さーて、ここでクエスチョン!
問題一!全ての世界、天界を創造したのは誰でしょう?
問題二!ここにいる全ての神々を創造したのは誰でしょう?
問題三!思うだけでそれを実現することができる存在は何でしょう?
正解は……全て創造主です!ピンポンピンポーン!」
一人茶番劇のように語り始めた命だったが、レールスにとってその内容はとても愉快なものではなかった。命の口から紡がれる言葉が真実ならば、レールスにとってこれほど脅威的で恐ろしいものは無い。
レールスはこの瞬間ようやく気付いたのだ。己の計画に最初から存在していた大きすぎる欠陥が一体何なのか。
「では最後の問題!そんな創造主とは一体誰のことでしょう?これの解答者は、ヘビくんだよ」
「まさか…………お前っ……」
「ピンポンピンポーン!大正解!」
レールスは問題に答えるつもりなどサラサラ無かったが思わず呟いてしまった。目の前の存在を認めるしかなくなったから。
命は正解を勝ち取ったレールスに満面の笑みを浮かべた。だがそこに暖かさはまるでなく、ただの表情筋の変化でしかなかった。
「それじゃあ早速、一回死んでみよっか?」
冷たい笑顔のまま、命は何事も無いようにそう言い放った。
レールスは己の計画を完璧だと思っていた。己の計画において、唯一目の上のたん瘤となりうるソヨの信用を落とし、インフェスタの人々を騙し、異世界転移できる者たちを各世界に送り、全ての世界を統一する。そしてその上で自分が全ての世界を征服する。
異世界に送った者たちが神に勝つことをレールスは期待などしていなかった。レールスがその者たちに望んでいた成果は、異世界の者たちを味方につけることと、後にやってくる神々にわざと負けること。まぁ本気でやったところで勝てないのでわざとではないのだが。
神々に負け、天界へと連れて行かれたならレールスが天界へ転移できる準備は整えていた。そしてレールスは現在、普段とは比べ物にならない程の魔力をその身に秘めている。
それは自分が言葉巧みに騙したインフェスタの人々から大量に奪った魔力が原因だった。その人数、およそ一億。つまりレールスは今、普段の約一億倍の魔力を所持しているということになるのだ。
それ程まで魔力を必要としたのは、当然天界へ転移するためでもあるが、転移した後にキチンと神々を殺すためでもあった。
複数いる神々相手に半端な魔力では話にならない。なのでレールスはインフェスタ最強と謳われたソヨの何倍もの魔力を有するために力を尽くしたのだ。
万全に万全を期した己の計画が狂うことはあり得ないと、レールスは高を括っていた。己の計画には最初から大きな欠陥があり、そこからどんどん僅かな歪みが生じているのにも気づかずに。
僅かな歪みは神々が予想よりも早く異分子たちの存在に気づき、異分子たちがレールスの望んでいた働きも満足に果たせていなかったことだ。
そしてレールスはまだ知らない。己の計画に最初から存在していた大きすぎる欠陥が、今目の前で男神を膝枕している存在だということを。
「何だこれは?」
ようやく発することができた言葉はそれだった。それも無理はない。牢に囚われた己の道具。そしてこちらに絶対零度の視線を向けてくる複数の神々だと思われる存在。そしてレールスにとっての邪魔者であるソヨの隣で呑気に正座している謎の少年と、何故か爆睡中の男神。それらが眼前に広がっているのだから、疑問の声を上げるなというのは無理な話だ。
「えーっと、君がヘビくんだっけ?」
「命、違うのじゃ。こやつはレールスというのじゃ」
「あぁ、そうなんだ。名前聞いてなかったけ?」
レールスの疑問をガン無視でソヨと会話し始めた命に、レールスは苛立ちを孕んだ眼を向けたが、命は全く興味が無いようにとぼけた表情を見せた。
「何だこれは?と聞いている」
「ん?……あぁ、何って。創造主と、その膝で眠る可愛らしい男神の図だけど?」
少し怒気を孕んだ声で再度尋ねたレールス。そんなレールスの視線が自分の膝部分に注がれていることに気づいた命は、「見て分からないのか?」とでも言いたげな顔で答えた。
レールスからすれば推定身長一九〇センチほどの静由を可愛いと称した命の美的感覚を疑うのは必然だったが、そもそもレールスが問うたのはそれだけでは無かったのですぐに静由のことは眼中になくなった。
何故仲睦まじい感じでソヨと謎の少年が並んでいるのか?謎の少年も神なのか?そもそもいつの間にソヨはこの天界を訪れたのか?
これらの様々な疑問を総じて先刻の問いをレールスは投げかけたのだが、それらが己の計画の歪みを自覚させる最初の発端にもなっていた。
「レールス、どうするつもりなのじゃ?神に逆らうというのなら、まずわらわが相手になってもいいのじゃぞ」
「はっ……世迷言を。今のお前は最早脅威ではない。今インフェスタで……いや?森羅万象における絶対的強者は私だ」
ソヨは無機質な瞳でレールスに睨みを利かせると宣戦布告をした。だが流石のソヨでも、普段の約一億倍の魔力を保持するレールスに勝つのは困難を極める。
それのせいで高を括っているレールスの顔のギリギリ右側。レールスがそれに気づくことができたのは己の横を通り抜けた後だった。
気づけた理由は、それが戦闘場の壁にぶつかりその反動で大爆発を起こしたからである。刹那、レールスの右頬に一筋の鮮紅が流れる。
「なっ……」
「失礼……うっかり魔力が滑りました」
「もうー、デグネフはおっちょこちょいだなぁ……でも怒った顔も可愛いっ!」
それの正体は、デグネフが本能的に放った魔法だった。デグネフの意思関係なく放たれたものなので、それは行使された魔法とは言い難く、言い換えれば魔力の塊がレールスを襲ったようなものだった。
神々にとって揺るがない共通認識。それは森羅万象において絶対的な強者、そして最も尊い存在であるのは創造主である命だということだ。その絶対不変の認識を汚したレールスに、デグネフは湧き上がる憤怒を抑えることができなかったのだ。
だがそれはデグネフだけではなく、他の神々もあと少しでデグネフと同じことを仕出かす勢いだった。
レールスはデグネフによって放たれた魔法の威力だけに言葉を失ったわけではない。天界中を包んだ、耳を塞いでも襲ってくるような轟音を伴ったあの魔法が直撃した戦闘場の壁が、少しの傷も綻びも見せなかったことに、レールスは最も腰を抜かしそうになっているのだ。
これだけの力を持つ神の魔法をものともしない天界という空間を創り出した存在は、一体どれだけの力を秘めているのか?そんなことをレールスは考え始めてしまったのだ。
そしてその存在が、怒り狂ったデグネフにさえも裏表のない笑顔を向ける命であることをレールスはまだ知らない。
「んん!話がズレたけど、レールスくんは創造主って存在は知ってるの?」
「……何だそれは?」
話を転換するように咳払いをした命に、レールスは怪訝そうな視線を向ける。先刻から突如天界に現れた自分に対して何の反応も示さない異質な存在に、レールスは一番の警戒を向けていたのだ。
そんな警戒対象が突如振ってきた質問に、レールスは訳が分からぬまま正直に答えた。
「はぁ……そんなことも知らないのに神を倒すだとか、全世界を手中に収めるだとか…………お笑い草も大概にしてくれないかな?」
「全く、片腹痛いとは当にこのことじゃな!」
命はデグネフに向けた暖かい笑顔とは対照的すぎる冷たい相好をレールスに向けた。レールスの背筋に数えるのもおぞましい程の鳥肌が立つ。
そんなレールスを尻目に、ソヨは命に同調ついでに炎乱特有の若干難しい表現を使ったことで、謎のドヤ顔をかましていた。
「創造主とは、創造神のことか?」
「半分正解で半分間違い。創造主は神ではないよ。創造主は森羅万象においてたった一つの存在だからね」
創造神は世界や人間といった世界の住人を造ったとされる神のことだ。創造主がそういう存在であるのは間違いないが、創造主は神ではない。創造主は神如き器に納まる存在ではないのだから。
「どういうことだ?」
「はぁ……説明がめんどくさいな。まぁとりあえず命に攻撃してみなよ。そしたら全部分かると思うからさ」
「「命様!?」」
だんだんと無知なレールスに説明するのが煩わしくなってきた命は投げやりな感じでそう言った。レールスが命にいかなる魔法攻撃を向けようと、命に傷一つ付けることも叶わないからだ。
それを理解していても、命に絶対的な忠誠を誓う神々は創造主に対する敵意を許すような命の発言に激しく動揺した。
「ならば警戒態勢に入れ。そのままではそこで寝ている男諸共死ぬぞ」
「えー、やだよ。静由が起きちゃうじゃん」
「ふざけているのか?」
攻撃してこいと言っておきながら、闘う姿勢に全くならない命にレールスは苛立ちを含んだ声で忠告した。命に警戒態勢など必要なく、寧ろ命にとっては静由の安眠の方が大事なのでそれをあっさり拒否した。
「だって命。静由がお仕事頑張ったご褒美に膝枕するって約束したんだもん。約束した以上、静由にはゆっくり休んで欲しいじゃん?」
その理屈は命にしか理解できないものなので神々も同意を示したりはしなかった。神々はただいつも通りの命を享受するだけである。
一方のレールスは命に軽んじられているのだと勘違いし(実際にそうなのだが)、蟀谷に青筋を浮かべた。
「後悔してももう遅いぞ!」
舌打ちを一つかましたレールスは炎属性の高等魔法を命に向かって放った。命に向けられたものではあるが、多くの魔力を保持したレールスの魔法は戦闘場全体を包むほどだったので、命だけではなく神々にも影響が及びそうな程の威力だった。
「消えろ」
だがどんなにすごい魔法でも、どんなに広範囲の攻撃でも。命の前では遊戯のように、幻のように無意味になってしまう。
命が一言発すると、レールスの魔法は跡形もなく無くなり、レールスは魂が抜けたように顔を強張らせた。
「ぐっ……どうなっている?」
魔法が消えた瞬間、何故かレールスは己の身の内に保持していた大量の魔力を感じることができなくなり、思わずその場に膝をついた。
「命が消えろって思ったのは魔法じゃない。ヘビくんの魔力そのものだよ」
「なん、だと?」
命の言っている意味を理解できないのか、したくないのか。レールスは震えながら命に鬼胎の視線を向けた。
「さーて、ここでクエスチョン!
問題一!全ての世界、天界を創造したのは誰でしょう?
問題二!ここにいる全ての神々を創造したのは誰でしょう?
問題三!思うだけでそれを実現することができる存在は何でしょう?
正解は……全て創造主です!ピンポンピンポーン!」
一人茶番劇のように語り始めた命だったが、レールスにとってその内容はとても愉快なものではなかった。命の口から紡がれる言葉が真実ならば、レールスにとってこれほど脅威的で恐ろしいものは無い。
レールスはこの瞬間ようやく気付いたのだ。己の計画に最初から存在していた大きすぎる欠陥が一体何なのか。
「では最後の問題!そんな創造主とは一体誰のことでしょう?これの解答者は、ヘビくんだよ」
「まさか…………お前っ……」
「ピンポンピンポーン!大正解!」
レールスは問題に答えるつもりなどサラサラ無かったが思わず呟いてしまった。目の前の存在を認めるしかなくなったから。
命は正解を勝ち取ったレールスに満面の笑みを浮かべた。だがそこに暖かさはまるでなく、ただの表情筋の変化でしかなかった。
「それじゃあ早速、一回死んでみよっか?」
冷たい笑顔のまま、命は何事も無いようにそう言い放った。
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