転生男爵家五男は、忍びのあの子を囲いたい。

黒川

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第一章

7

その場に残ったのは、追放された黒装束の男とクインテス。そして、その騒ぎを静観していた食事処の従業員とお客様たち。
食事処の従業員たちは、事なかれ主義なので騒ぎでテーブルや椅子、食器類が壊され無ければ客同士のトラブルは静観しますし、お客様たちも自分に迷惑がかからなければ事なかれと関わりません。
騒ぎの根源が居なくなってホッとし、彼らは仕事やら食事やらに戻りました。

そして、黒装束の男とクインテスです。
まずクインテスは、黒装束の男に怪我した箇所に、治癒魔法を施しました。
因みに、ドコアルーノ国では治癒魔法はかなり高度な魔法に属し、使い手も希少です。そういう人たちは、教会や治療院等で手厚い処遇が受けられます。そんな希少な魔法を、なぜクインテスが使えるのでしょう?それは、なんかこう……転生したチートなアレ……と、アリアのど根性と擬音ばかりの魔法指導で身につけました。むしろアリアの指導が主かも知れません。ちなみに、クインテスの治癒魔法技術は、首さえ残っていれば身体の再生も可能です。
そして、その希少な治癒魔法は、受ける為には沢山のお金がかかるので、受けられる人は富裕層のみです。この国での一般的なケガや病気は薬草だったりポーションだったり、果ては祈祷なんかが主流なのです。
なので、黒装束の男は、自身に掛けられた魔法とその効果に目を見張りました。

(よしよし、第一印象は上々)

クインテスは、下心満載な気持ちをシッカリと封じ、お姫様抱っこをしている黒装束の男に向かって、貴族スマイルを向けました。

「ごはん、一緒に食べませんか?」

クインテスが黒装束の男に言うと、彼は返事の代わりにお腹で「ぐー」と返事をしました。

(んっっっ!!!なに!!!このかわいい子っ!!!)

クインテスはゴフッと少し咳き込みつつ、ゆっくりと黒装束の男を降ろし、二人掛けのテーブルへとエスコートしました。


◆◆◆◆◆


そんなこんなで、2人とも好きなメニューを注文し、食事をしながら自己紹介をしました。

クインテスは、男爵家の五男で4歳から冒険者をしていること。今日が誕生日で成人したこと。
黒装束の男は「ドウザキ」と名乗り、先ほどのパーティで剣士をしていたが、ついさっき追放された事を話しました。

「ドウザキさん、もとは剣士ではないですよね?」
「あの、助けて頂いた身ですから、呼び捨てで大丈夫ですし、丁寧な言葉も要らないです。……剣士の事は……そうです。リーダーにパーティバランスが悪いからって剣を持たされました」
「言葉遣いの気遣いありがと。じゃぁドウザキも好きにして。俺、貴族だけど男爵だし五男だし、もう貴族生活からだいぶ離れてるからゆるっゆるだしさ。んで、話戻すけど、その身なりだと前衛ではないよな?」

ドウザキの服装は、黒い布1枚のペラッペラなのです。
しかも、インナーも薄っぺらいスケッスケで下手すると肌が薄っすら見えてちょっとエチチなのです。
クインテスは胸元を見ないように頑張りました。
そんな疚しい視線に気づかないドウザキは、クインテスの質問に真面目に答えます。

「そう、ですね。どちらかと言うと後方支援や諜報、情報操作……まぁ、いわゆる裏工作が得意で⋯⋯いや、そんなワガママ言える立場では無いので⋯⋯仕方なく⋯⋯」

ドウザキは、あまり多くは語りませんでしたが、どうやら他国からの移住民で、単独でギルドに冒険者登録が出来なかったのです。
前に説明しましたが、ドコアルーノ国で冒険者登録が出来るのは自国民のみです。移住民たちがドコアルーノの冒険者登録を単独で行いたい場合は、少しばかり面倒くさい条件をこなす必要があります。
その条件とは、既に冒険者登録をしている者が保証人になること。その保証人は、同じパーティメンバーである事。そのパーティで一定数の依頼をこなし、同一パーティで個人ランクをCまで上げる事。途中でパーティを抜けたり、保証人が何らかの事故で死亡もしくは冒険者の継続が困難な怪我病気をし引退した場合は、また最初からやり直しです。
ドウザキが、ポツポツとそんな話をしました。
そしてクインテスは、ドコアルーノでの移住民の冒険者としての住み辛さを初めて知ったのです。

「こんななりですから、なかなかパーティに恵まれず……」
「で?あのクソみたいなパーティに入ってたのか」

移住民への扱いに、少しばかり理不尽を覚え、そして先ほどの追放劇を繰り広げていたドウザキの元パーティメンバーにも苛立ち、少しばりお口が悪くなりました。

「クソ⋯⋯あれでもBランク冒険者なんですけど」

Bランクは、一般的にはベテラン冒険者です。
が、クインテスは心の中でグッとガッツポーズをし、少しドヤドヤなお顔で、

「俺、Sランク。話にもならないな。そのクソパーティ」

と、一笑に付しました。
ちなみに、アリアは最上級のSSランクです。
SとSSの違いは、国に要人申請するか否かの違いだけで実力はほぼ一緒である事を補足します。
クインテスは、国への申請をすると、ある程度の国からの保護や保証が貰えるけれども、有事の際は強制的に駆り出される事が面倒くさくて申請をしておりません。
なので、SとSSの実力はほぼ同一とみなして大丈夫です。
……クインテス、立派に成長しました。

それはそうと、ドウザキとクインテスです。
クインテスが自身のランクを申告すると、ドウザキは

「え⋯⋯え⋯⋯す⋯⋯」

と、目をまん丸にして驚きました。

(えぇー?驚いた顔もかんわいいいー♡)

クインテスは心の中でドンドコドンドコと前世の記憶にある南の国の民族舞踊を踊りつつ、平静を装いました。
貴族なので、表情を抑える事は得意なのです。
そして、クインテスはドウザキに提案をしました。

「それなら、俺とパーティ組まないか?新たな保証人だって必要だろ?」

勿論、善意だけではありません。
下心9割の善意1割くらいです。
彼とパーティを組んで恩を売っておけば、ワンチャン同衾、果ては夜の合体までイケるのではないかと目論んでの申し出なのです。さすが前世も今世も童貞ですね、考えが浅はかです。
しかし、ドウザキはそんな下心には全く気付かず、涙ぐみながらクインテスに頭を下げ、パーティを組む事をお願いするのでした。



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