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第二章:本編
【閑話】カナタ家は、長男が嫌い
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キリの両親は、共に第二子であり、2人とも兄が居た。
そして共に、長男を優遇する家庭だった。
「あんたは弟なんだから」
「妹でしょ、お兄ちゃんの言うことを聞きなさい」
長子が居れば必ず聞くフレーズも、キリの両親2人には納得のいかない扱いだった。
そして、2人は出会い結婚し、長男であるキリを授かった。
1人の時はまだ良かった。
初めての子ども故に、死なせないように、慎重に、大切に、どこにでも居る親らしく、キリを愛した。
数年後、第二子が生まれた。
女の子だった。
そしてキリの母親は直感的にこう思った。
「この子は、私だ」
と。
何でもかんでも兄が優遇され、ぞんざいに扱われていた自分と娘が重なったのだ。
だから母親は決めた。
「この子を誰よりも大切にするのだ」
と。
そして、娘を最優先とし、キリに辛く当たるようになったのだ。
「私は、自分の両親のような事はしない。妹であるこの娘を大事に大事に育てるのだ。長男ばかりが優遇されるなんておかしいのだ」
娘をかわいがることで、過去の自分を慰めた。
そしてまた数年後、第三子が生まれた。
男の子だった。
そして、父親は直感的に思った。
「この子は、自分だ」
と。
人生の殆どを、兄のお下がり、兄より下の選択権しか貰えなかった自分と息子が重なったのだ。
だから父親は決めた。
「この子を誰よりも優先にするのだ」
と。
そして、末の息子と自分を重ね、キリに辛く当たるようになったのだ。
「私は、自分の両親のような事はしない。末っ子であるこの息子を大事に大事に育てるのだ。長男ばかりが優遇されるなんておかしいのだ」
末の息子を優遇することで、過去の自分を慰めた。
「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」
「下の子が欲しがっているなら譲るのが兄だろ」
「あんたはもう大きいんだから、自分のことは自分でしなさい」
「お前は後だ!!」
「妹と弟はまだ小さいの!」
「長男だろ!」
第二子、第三子を優先すればするほど、長男を雑に扱い惨めな姿を見れば見るほど、自分たちの心が救われるような気がした。
そして、そんな両親を見てきたキリの弟妹たちも、兄を虐げ、自分たちが優先されて当然なのだと思った。
長男と言うものは、妹や弟の言う事を聞いて当然であり、我々弟妹を優遇するためには、長男が犠牲になって当然なのであると。
両親が長男を除け者にすれば、弟妹たちもそれに倣った。
キリは、習い事も塾も行かせて貰えなかった。
しかし弟妹たちは、それぞれ興味を持った習い事をさせて貰い、小学校高学年に上がれば塾にも通わせて貰えた。
環境が違いすぎる故に、学力差は大きかった。と、言っても弟妹たちの学力が同学年より抜きん出ているかと言うと、平均かそれより少し上くらいのレベルではあったが。
けれども、学習面でも何もしてもらえなかったキリの学力は、とても低かった。
それも、両親が満足する結果だった。
キリの両親たちは、兄が優秀である事を妬んでいた。だからこそ、自分の分身である弟妹たちの方が優秀であれと強く望んだ。
キリの学力が下であればあるほど、両親は満足した。
しかしながら、中卒は流石に世間体が悪い。
そう思った両親は、キリを学区内で1番底辺の公立高校に通わせ、卒業と共に家を追い出した。
「高校卒業したらここから出て行くのは長男なら当たり前だ。この家は妹と弟のための家だ。お前の家ではない」
そうキリに伝えた。
そもそも、キリには自室が無く、廊下の踊り場を寝床にしていたくらいだ。
キリも願ってもいない事だと承知し、就職活動に精を出した。
底辺高校とは言え、生活態度が真面目だったキリは、その高校で一番の企業と言われる清掃会社に就職が決まった。
もちろん、住まいも給与内で提供して貰える。
高校卒業と共に、最低限の荷物を持って、キリは実家を出た。
彼を見送る家族は居なかった。その日はキリを除いた家族4人で出かけてしまっていたのだ。
それについて、キリは何も思う事は無かった。
いつもの事だからだ。
何も思う事も無く、キリは実家を出て行った。
そして、残った家族たちは仲睦まじく4人で外出を楽しんでいた。
これでいい、両親は思った。
これが自分たちの望んだ結果なのである。
長男だからと言って、何でも優遇されるのは間違えている。
私たちは、正しい事をした。
その証拠に、妹と弟たちはとても幸せそうにしている。
両親は過去の自分を救済した。
カナタ家は、長男が、嫌い。
そして共に、長男を優遇する家庭だった。
「あんたは弟なんだから」
「妹でしょ、お兄ちゃんの言うことを聞きなさい」
長子が居れば必ず聞くフレーズも、キリの両親2人には納得のいかない扱いだった。
そして、2人は出会い結婚し、長男であるキリを授かった。
1人の時はまだ良かった。
初めての子ども故に、死なせないように、慎重に、大切に、どこにでも居る親らしく、キリを愛した。
数年後、第二子が生まれた。
女の子だった。
そしてキリの母親は直感的にこう思った。
「この子は、私だ」
と。
何でもかんでも兄が優遇され、ぞんざいに扱われていた自分と娘が重なったのだ。
だから母親は決めた。
「この子を誰よりも大切にするのだ」
と。
そして、娘を最優先とし、キリに辛く当たるようになったのだ。
「私は、自分の両親のような事はしない。妹であるこの娘を大事に大事に育てるのだ。長男ばかりが優遇されるなんておかしいのだ」
娘をかわいがることで、過去の自分を慰めた。
そしてまた数年後、第三子が生まれた。
男の子だった。
そして、父親は直感的に思った。
「この子は、自分だ」
と。
人生の殆どを、兄のお下がり、兄より下の選択権しか貰えなかった自分と息子が重なったのだ。
だから父親は決めた。
「この子を誰よりも優先にするのだ」
と。
そして、末の息子と自分を重ね、キリに辛く当たるようになったのだ。
「私は、自分の両親のような事はしない。末っ子であるこの息子を大事に大事に育てるのだ。長男ばかりが優遇されるなんておかしいのだ」
末の息子を優遇することで、過去の自分を慰めた。
「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」
「下の子が欲しがっているなら譲るのが兄だろ」
「あんたはもう大きいんだから、自分のことは自分でしなさい」
「お前は後だ!!」
「妹と弟はまだ小さいの!」
「長男だろ!」
第二子、第三子を優先すればするほど、長男を雑に扱い惨めな姿を見れば見るほど、自分たちの心が救われるような気がした。
そして、そんな両親を見てきたキリの弟妹たちも、兄を虐げ、自分たちが優先されて当然なのだと思った。
長男と言うものは、妹や弟の言う事を聞いて当然であり、我々弟妹を優遇するためには、長男が犠牲になって当然なのであると。
両親が長男を除け者にすれば、弟妹たちもそれに倣った。
キリは、習い事も塾も行かせて貰えなかった。
しかし弟妹たちは、それぞれ興味を持った習い事をさせて貰い、小学校高学年に上がれば塾にも通わせて貰えた。
環境が違いすぎる故に、学力差は大きかった。と、言っても弟妹たちの学力が同学年より抜きん出ているかと言うと、平均かそれより少し上くらいのレベルではあったが。
けれども、学習面でも何もしてもらえなかったキリの学力は、とても低かった。
それも、両親が満足する結果だった。
キリの両親たちは、兄が優秀である事を妬んでいた。だからこそ、自分の分身である弟妹たちの方が優秀であれと強く望んだ。
キリの学力が下であればあるほど、両親は満足した。
しかしながら、中卒は流石に世間体が悪い。
そう思った両親は、キリを学区内で1番底辺の公立高校に通わせ、卒業と共に家を追い出した。
「高校卒業したらここから出て行くのは長男なら当たり前だ。この家は妹と弟のための家だ。お前の家ではない」
そうキリに伝えた。
そもそも、キリには自室が無く、廊下の踊り場を寝床にしていたくらいだ。
キリも願ってもいない事だと承知し、就職活動に精を出した。
底辺高校とは言え、生活態度が真面目だったキリは、その高校で一番の企業と言われる清掃会社に就職が決まった。
もちろん、住まいも給与内で提供して貰える。
高校卒業と共に、最低限の荷物を持って、キリは実家を出た。
彼を見送る家族は居なかった。その日はキリを除いた家族4人で出かけてしまっていたのだ。
それについて、キリは何も思う事は無かった。
いつもの事だからだ。
何も思う事も無く、キリは実家を出て行った。
そして、残った家族たちは仲睦まじく4人で外出を楽しんでいた。
これでいい、両親は思った。
これが自分たちの望んだ結果なのである。
長男だからと言って、何でも優遇されるのは間違えている。
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その証拠に、妹と弟たちはとても幸せそうにしている。
両親は過去の自分を救済した。
カナタ家は、長男が、嫌い。
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