色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ

谷島修一

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序章

“回想録”

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 二人が調べているユルゲン・クリーガーは、クララ・クリーガーの祖父。
 クララによると彼は十年ほど前に既に亡くなっているそうだ。

 ユルゲン・クリーガーの生前に彼の半生ついて書かれた本が出版された。それは、“ユルゲン・クリーガー回想録”という。

「お爺様の経歴って、ちょっと複雑だよね」
 クララはそういって“回想録”を手に取り、パラパラとめくって本の中を確認するために眺めた。
「最初はブラウグルン共和国、次にブラミア帝国、帝国の崩壊後はパルラメンスカヤ人民共和の軍に所属」

 ユルゲン・クリーガーは、パルラメンスカヤ人民共和国の南で国境を接する隣国・ブラウグルン共和国の首都ズーデハーフェンシュタットの生まれだった。両親を早くに病気で亡くし六歳から孤児院育ち。十三歳の頃、 “深蒼の騎士” であったセバスティアン・ウォルターという人物に見出され、 “深蒼の騎士” になるための教えを受け、剣術と魔術を鍛錬してきた。

 “深蒼の騎士” とは、共和国で精鋭騎士で、慈悲と博愛を謳い、高い剣技とわずかばかりの魔術を駆使し、長きにわたって共和国を守ってきたという。
 そして、ユルゲンは、十六歳の時に従軍。二十二歳で “深蒼の騎士” の一員となった。

 一方、イリーナとクララが住む、パルラメンスカヤ人民共和国の前身のブラミア帝国は軍事国家であった。
 五十五年前、ユルゲンが三十一歳のある日、ブラミア帝国は圧倒的物量をもってブラウグルン共和国へ侵攻した。共和国軍は敗退を続け、ついに帝国軍は首都に迫った。共和国軍はグロースアーテッヒ川での最終決戦でほぼ壊滅状態となり、その後、無条件降伏した。当時の共和国政府による、首都の住民に被害を及ぶことを防ぐための決断だった。
 こうして共和国は帝国に併合されてしまった。占領後、多くの共和国の指導者、軍の上級士官が処刑された。その頃、ユルゲンは下級士官であったため処刑は免れた。

 この戦争のことをパルラメンスカヤ人民共和国では“イグナユグ(南進)戦争”、一方のブラウグルン共和国では、“ブラウロット(青赤)戦争”と呼んでいる。

 ブラウグルン共和国はその後、三年もの間、ブラミア帝国に占領支配されていた。
 その頃、ユルゲンは剣の腕前を買われて帝国の傭兵部隊に参加し、隊長に就任していた。

 「やっぱり、“三大事件”のあたりが謎だらけだと思う」
 イリーナは手元の資料をめくって言った。
 “三大事件”とは、“チューリン事件”、“ソローキン反乱”、“人民革命”のことだ。

 “回想録” には、その他にも面白い物語が載っている。
 特に傭兵部隊の設立から約三年間が興味を引く。
 “イグナユグ戦争” の終結直後に起こった共和国軍戦争継続派との戦い、旧貴族ヴェールテ家の連続殺人事件、セフィード王国からの漂着船、ダーガリンダ王国での坑道落盤事故の救難活動、 “透明な悪魔” 事件、犯罪組織 “シュバルツ・スピネ” との戦い、帝国の秘密警察 “エヌ・ベー”、などなど。
 さらに、遊撃部隊になってからの最後の一年間は、ダーガリンダ王国の “最後の魔術師” 事件、アレナ王国でのカルト宗教事件について載っていた。

 しかし、読み物として興味深い話はたくさんあるが、イリーナとクララが謎だと思っている件については、“回想録”には答えはなかった。
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