色彩の大陸3~英雄は二度死ぬ

谷島修一

文字の大きさ
19 / 66
人民革命

オレガの証言~人民革命~その1

しおりを挟む
 大陸歴1710年6月27日・パルラメンスカヤ人民共和国・首都アリーグラード

 イリーナは首都中心部にあるカレッジの授業のあと、午後にオレガのもとへ自転車で向かう。今日はオレガに面識のあるクララももちろん一緒に同行する。
 カレッジからオレガの住む川を挟んだ北部地域は自転車で四十五分程度で到着する。
 首都の北部はその昔、貧困地区といわれていたそうだが、革命後は大きく改善され今ではその面影はほとんどない。

 オレガ・ジベリゴワはここ二十数年は、彼女の生まれたこの区域で暮らしているという。
 クララは彼女に手紙を送り、近代史を学ぶ同級生のイリーナと革命の時期の頃を調査していると伝えた。すると、オレガは彼女に会うための約束を快く了承してくれたのだ。

 イリーナとクララの二人は自転車で颯爽と風を切り駆ける。車輪は道路に敷かれている石畳でガタガタと音を立て、オレガが住んでいる北部地域へ向かう。
 二人はどんどんと道を進み、アリー川に掛かるアリー中央大橋を渡る。革命の時は、この橋で蜂起した住民と帝国軍の間で武力衝突があったという。革命当時、このアリー中央大橋以外の橋は封鎖されていたそうだ。なので、必然的にここが戦場となった。元々、人民軍に参加した人々は北部地域の住民がほとんどで、そこが、後の人民軍の蜂起の場所となったと伝えられている。

 オレガの住む家は北部の閑静な住宅街にあった。二人は順調に自転車を進め目的の場所に到着する。そこは、臙脂色の屋根をした小さな質素な家だ。今はオレガは一人暮らしらしい。彼女には息子が一人、孫が三人いるが、彼らは近くに別々に住んでいるそうだ。

 扉をノックすると、「どうぞ」と返事があったので、二人は家に入った。
 リビングのソファに座っている上品そうな老婆。彼女がオレガ・ジベリゴワだ。
「叔母様、お久しぶりです」。
 クララはそう言ってオレガに駆け寄り彼女を抱きしめた。クララはオレガの事を“叔母様”と呼んでいる。
「本当に久しぶりね。二年ぶりかしら」。
「そうですね、お爺様のお墓参りに一緒に行って以来です」。
「元気そうね」。
「私は元気だけが取り柄ですから。叔母様もお元気そうで」。
「ええ、おかげさまで、最近は風邪もひいていないわ」。
 オレガはクララとの再会を懐かしんだあと、イリーナを見つめて言った。
「ごめんなさい。クララが懐かしくて、お客様を放っておいて」。
「いいえ」。イリーナは笑顔で答えた。そして自己紹介をする。「私はイリーナ・ガラバルスコワと言います。今日はお時間をいただき、ありがとうございました」。
 イリーナは頭を下げた。
「お話を聞かせていただけるとのことで、楽しみにしておりました」。
「全然、忙しくないから大丈夫よ。最近は来客も多くなくて、いつも退屈しているのよ」。
 オレガは、台所の方を指さしてクララに言った。
「お湯を沸かしているから、お茶を作ってくれないかしら」。
 クララは「はい」といって、笑顔で台所に向かう。オレガは、イリーナに向き直って尋ねる。
「ラーミアイ紅茶だけど、大丈夫かしら?」
「大丈夫です」。
 ラーミアイ紅茶は船で三週間もかかる遥か南方にある大陸“ダクシニー”の名産品で、こちらの大陸でも人気の商品だ。

 しばらく、雑談をして、クララが紅茶をカップに入れて持ってきた。それをそれぞれに手渡し、皆が少し飲んだ後、今日の本題に入る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...