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人民革命
オレガの証言~人民革命~その3
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続けてイリーナが尋ねる。
「“ソローキン反乱”の時は、戦いに参加したのですか?」
オレガは紅茶を二、三口飲んでから、再び話し出した。
「ええ。その時は、私もテレ・ダ・ズール公国との国境線に向かって、そこで待機していたのだけれど、最後の最後に国境のベセルー川で、遊撃部隊とソローキンの重装騎士団と戦いがあったのよ。その時は、重装騎士団は川を少しずつ渡ってきている途中で、先に川を渡り切った騎士と戦ったから、その数は少なかったのよ。だから、私は他の隊員達が戦っている後ろで待機状態でした。その戦いが始まってからすぐに師が敵の司令官ソローキンを倒しました。するとその時点で他の兵士達はすべて降伏したので、それ以上の戦いはなかったわ」。
「なるほど」。
「師は、私を気遣ってあまり前面で戦わせようとしませんでした」。
「それはどうしてですか?」
「多分、まだ若かったからでしょう。いつも気遣ってくれていたわ」。オレガは微笑んで付け加えた。「でも、自分で言うのもなんでしょうけど、剣の腕はかなりのものだったのよ」。
「そうなのですか?」
「ええ、そうよ」。
オレガはそういうと、なぜか寂しそうに顔を下げて、手に持っている紅茶の入ったカップをしばらく見つめた。
「“ソローキン反乱”の後はどうされていたんですか?」
イリーナは尋ねた。
「“ソローキン反乱”の後、共和国の再独立が起こったけど、その時は私たち遊撃部隊はモルデンにいたのよ」。
「遊撃部隊のことについては調べました。モルデンに向かう命令が出たことも聞きました。でも、残っている書物や資料には、遊撃部隊がモルデンにいたことは、どこにも書いていませんでした」。イリーナは意外だという口調で言う。「それはなぜでしょうか?」
「きっと、遊撃部隊の任務は極秘のものが多かったからでしょう。それにモルデンにいた時は遊撃部隊全体が帝国を裏切って共和国についていたから、そういう事実を隠しておきたかったのではないかしら」。
「そういえば、“人民公文書館”に当時の資料とか残ってないのかな」。
イリーナはつぶやくように言った。“人民公文書館”は、百五十年ほど前、ブラミア帝国の時期に設立され、当時は“帝国公文書館”と呼んでいた。そこには、政府の会議の記録や官庁の文書、裁判の記録など膨大な資料が保存されている。特別なものを除けば誰でも閲覧が可能となっている。
「それは、どうかしら」。
「つい最近、情報公開法が制定されたから、極秘任務でも場合によっては資料が見つかるかも」。
イリーナは手を打って言った。クララはそのことを知らなかったのか、不思議そうにイリーナが発した単語を繰り返した。
「情報公開法?」
「“人民公文書館”にある資料で五十年以上たったものは、だれでも閲覧可能になったのよ」
「じゃあ、極秘任務の事も知ることができるかも」。
「私たちは皇帝イリアや軍の上層部からの直接の命令しか知らないけど、その命令が発せられた背景になる資料も見つかるかもしれないわね」。
イリーナはそれを聞いて嬉しそうにクララに言った。
「今度、行ってみようよ」。
「いいわね」。
「続けるわね」。
オレガは二人の会話が一段落付いたようのなで口を挟んだ。
「すみません。話の腰を折ってしまって」。
イリーナは謝罪した。オレガは話を続ける。
「モルデンで、遊撃部隊が実質的に解散となった時、私もその時に軍を退役したわ。でも、その後、首都に戻って来て、師と半年ぐらい後に再会した以降も、弟子であり続けたのよ。無理を言ってお願いしてね」。
「“人民革命”が起こったのはその後ですか?」
「そうよ」。
「オレガさんは人民革命軍に参加していたんですよね?」
イリーナは尋ねた。
「ええ、人民革命軍と帝国軍の戦いでは、私は人民革命軍、師は帝国軍に属していました」。オレガは、新しく渡された紅茶を一口飲んで話を続ける。「この地域で反政府活動が激しくなってきたので、帝国政府は市民の武器所有の禁止令を出したのよ。そうしたら、市民の怒りの火に油を注ぐ状態になって不満が高まったの。そして、その数か月後に本格的な武装蜂起が起こってしまったの。それで、首都の川を挟んだアリー中央大橋でデモ隊と帝国軍の間で、ついに武力衝突が起こったの。さらにその直後、街の中心部でも政府に対する武装蜂起が起こったのよ。帝国軍はまさか中心部でも蜂起が起こるとは思っていなかったみたい」。
「そうなんですね」。
「今日は時間は大丈夫?」
「はい」。
「じゃあ、ここからは“人民革命”の少し前の話から詳しく話すわね」。
オレガは、五十年前のことを、昨日のことの様に詳しく話を始めた。
「“ソローキン反乱”の時は、戦いに参加したのですか?」
オレガは紅茶を二、三口飲んでから、再び話し出した。
「ええ。その時は、私もテレ・ダ・ズール公国との国境線に向かって、そこで待機していたのだけれど、最後の最後に国境のベセルー川で、遊撃部隊とソローキンの重装騎士団と戦いがあったのよ。その時は、重装騎士団は川を少しずつ渡ってきている途中で、先に川を渡り切った騎士と戦ったから、その数は少なかったのよ。だから、私は他の隊員達が戦っている後ろで待機状態でした。その戦いが始まってからすぐに師が敵の司令官ソローキンを倒しました。するとその時点で他の兵士達はすべて降伏したので、それ以上の戦いはなかったわ」。
「なるほど」。
「師は、私を気遣ってあまり前面で戦わせようとしませんでした」。
「それはどうしてですか?」
「多分、まだ若かったからでしょう。いつも気遣ってくれていたわ」。オレガは微笑んで付け加えた。「でも、自分で言うのもなんでしょうけど、剣の腕はかなりのものだったのよ」。
「そうなのですか?」
「ええ、そうよ」。
オレガはそういうと、なぜか寂しそうに顔を下げて、手に持っている紅茶の入ったカップをしばらく見つめた。
「“ソローキン反乱”の後はどうされていたんですか?」
イリーナは尋ねた。
「“ソローキン反乱”の後、共和国の再独立が起こったけど、その時は私たち遊撃部隊はモルデンにいたのよ」。
「遊撃部隊のことについては調べました。モルデンに向かう命令が出たことも聞きました。でも、残っている書物や資料には、遊撃部隊がモルデンにいたことは、どこにも書いていませんでした」。イリーナは意外だという口調で言う。「それはなぜでしょうか?」
「きっと、遊撃部隊の任務は極秘のものが多かったからでしょう。それにモルデンにいた時は遊撃部隊全体が帝国を裏切って共和国についていたから、そういう事実を隠しておきたかったのではないかしら」。
「そういえば、“人民公文書館”に当時の資料とか残ってないのかな」。
イリーナはつぶやくように言った。“人民公文書館”は、百五十年ほど前、ブラミア帝国の時期に設立され、当時は“帝国公文書館”と呼んでいた。そこには、政府の会議の記録や官庁の文書、裁判の記録など膨大な資料が保存されている。特別なものを除けば誰でも閲覧が可能となっている。
「それは、どうかしら」。
「つい最近、情報公開法が制定されたから、極秘任務でも場合によっては資料が見つかるかも」。
イリーナは手を打って言った。クララはそのことを知らなかったのか、不思議そうにイリーナが発した単語を繰り返した。
「情報公開法?」
「“人民公文書館”にある資料で五十年以上たったものは、だれでも閲覧可能になったのよ」
「じゃあ、極秘任務の事も知ることができるかも」。
「私たちは皇帝イリアや軍の上層部からの直接の命令しか知らないけど、その命令が発せられた背景になる資料も見つかるかもしれないわね」。
イリーナはそれを聞いて嬉しそうにクララに言った。
「今度、行ってみようよ」。
「いいわね」。
「続けるわね」。
オレガは二人の会話が一段落付いたようのなで口を挟んだ。
「すみません。話の腰を折ってしまって」。
イリーナは謝罪した。オレガは話を続ける。
「モルデンで、遊撃部隊が実質的に解散となった時、私もその時に軍を退役したわ。でも、その後、首都に戻って来て、師と半年ぐらい後に再会した以降も、弟子であり続けたのよ。無理を言ってお願いしてね」。
「“人民革命”が起こったのはその後ですか?」
「そうよ」。
「オレガさんは人民革命軍に参加していたんですよね?」
イリーナは尋ねた。
「ええ、人民革命軍と帝国軍の戦いでは、私は人民革命軍、師は帝国軍に属していました」。オレガは、新しく渡された紅茶を一口飲んで話を続ける。「この地域で反政府活動が激しくなってきたので、帝国政府は市民の武器所有の禁止令を出したのよ。そうしたら、市民の怒りの火に油を注ぐ状態になって不満が高まったの。そして、その数か月後に本格的な武装蜂起が起こってしまったの。それで、首都の川を挟んだアリー中央大橋でデモ隊と帝国軍の間で、ついに武力衝突が起こったの。さらにその直後、街の中心部でも政府に対する武装蜂起が起こったのよ。帝国軍はまさか中心部でも蜂起が起こるとは思っていなかったみたい」。
「そうなんですね」。
「今日は時間は大丈夫?」
「はい」。
「じゃあ、ここからは“人民革命”の少し前の話から詳しく話すわね」。
オレガは、五十年前のことを、昨日のことの様に詳しく話を始めた。
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