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人民革命
北へ
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首都を脱出したユルゲンは、ルツコイ達の後を追う。
しかし、ユルゲンは途中、自分の屋敷に立ち寄ったため、彼らの姿はもう見えなかった。かなり先の方まで行ってしまったのだろう。しかし、行き先はわかっている。帝国の北の国境線に近い都市プリブレジヌイだ。陛下の一行もそちらに向かっているはずだ。
ユルゲンもプリブレジヌイへ向かう。
その日の夜遅く、ユルゲンは小さな村に到着した。
家々の窓から明かりが漏れている。
村の中を少し進むと、見慣れた馬車があった。皇帝の馬車だ。皇帝は今のところ無事に逃げ延びているようだ。馬車の周りには親衛隊が見張りとして数名立っていた。
ユルゲンは親衛隊に声を掛けた、一瞬、彼らは警戒して剣に手を掛けるが、ユルゲンをよく見て安堵のため息をついた。
「副司令官!ご無事でしたか!」
「ああ、なんとかね」。
「陛下は、この民家の中です。副隊長もおられます」。
ユルゲンは隊員の一人に招かれて、小さな民家の中に入った。
そこには、副隊長のベルナツキーと数名の親衛隊が椅子に座って何やら話し合っていた。
「副司令官!」ベルナツキーは私の顔を見ると立ち上がって近づいてきた。「よくご無事で」。
彼と部下は安堵の表情を見せ、立ち上って敬礼した。
ユルゲンは敬礼をする。
「途中、ルツコイ司令官達とはぐれてしまったが、彼らもプリブレジヌイへ向かっている」。
「では、あちらで合流できるでしょう」。
「実は、ヴァーシャが行方不明だ」。
クリーガーは不安そうに話す。
「隊長が?」
「そうだ。あの後、家に立ち寄ったら、召使いしかいなかった」。
「隊長はお腹が大きいのでは」。
「ええ、妊娠六か月です。その上、街があの状況で出かけるとは思えない」。
「きっと、早めに退避したんですよ」。
ベルナツキーはユルゲンを慰めるように言う。
「そうだといいが」。ユルゲンはため息をついた。そして気を取り直して尋ねた。「陛下は?」
「奥の部屋で休まれています。さすがに、馬車の中で、とは言えませんでしたので」。
「この家の住民は?」。
「大金を払って、今夜だけ他のところへ行ってもらいました。宿泊するのが皇帝だというと、驚いていました」。
「無理もない」。
「副司令官もお休みになっては?と、言っても床に、ですが。我々も順番で休んでおりますので、お気兼ねなく」。
「わかったありがとう」。
もう、遅い時間だったし、明日の出発も早い。そして、さすがに今日は疲れた。ユルゲンは床に横になり、眠ることにした。
◇◇◇
翌朝。ユルゲンは目を覚ました。眠りが浅かったのか、すっきりしない感じだった。懐中時計を見るともうすぐ日の出の時間のはずだ。
ベルナツキーと親衛隊員数名はまだ床に横になっていた。他の親衛隊員数名が起きて見張りをしていた。
ユルゲンは起き上がると、眠っている全員を起こす。
ユルゲンは皇帝イリアも起こそうと奥の部屋につながる扉をノックした。皇帝はすでに起きていたようで、返事をするとすぐに扉を開けて出て来た。
彼女はユルゲンを見て驚いたようだった。
「クリーガー。追いついたのですね」。
「はい、陛下。プリブレジヌイまでお供いたします」。
「心強いです」。
「では、急ぎましょう」。
ベルナツキーはそう言うと、皇帝を馬車へ誘導する。そして、皇帝が馬車に乗り込むのを見ると隊員達と馭者に出発の合理を掛ける。一行は村を出発した。ユルゲンもその後に続く。
村を出発して街道を北へ進み数時間後、時間はそろそろ正午になろうとしていた。
後方を警戒させていた親衛隊員の一人が声を上げた。
「追っ手です!」
ユルゲンたちは予想外の早い追っ手に困惑した。反乱兵は我々の行く先は知らないはずだ。なぜ、彼らはこんなに早く追いつけるのだろうか。
皇帝の専用馬車ではそれほど速さが出せない。すぐに追いつかれるだろう。
街道の後方、遠くに見えた追っ手は五十名はいる。
こちらは四十名ほどだ。
数名に陛下の馬車の護衛を任せて先を急がせ、ユルゲン、ベルナツキーとほかの隊員達はむきを変え追っ手を待ち構える。
追っ手は、ユルゲン達を見ると馬の速度を落とした。
先頭の男がゆっくりと前に進みだす。
ユルゲンはその男の顔を確認する。彼には見覚えがあった。反政府勢力のリーダー、ヴィクトル・ナタンソーンだ。
ナタンソーンは声の届くところまで来るとユルゲンに気が付いて語りかけて来た。
「ユルゲン・クリーガーか。以前、一度会ったことがあるな」。
彼とは三年前、首都で顔を合わせたことがある。ユルゲンはナタンソーンが街で演説中に、たまたま遭遇したことがあるのだ。
「そうだな」。
ユルゲンは静かに答えた。
ナタンソーンは続ける。
「もう帝国は崩壊だ。抵抗は無意味だ。降伏しろ」。
「降伏はしない」。
そう言うと、ユルゲンは剣を抜いた。
その言葉を継ぐようにベルナツキーも剣を抜き怒鳴った。
「陛下がおられる限りな!」。
親衛隊たちも剣を一斉に抜く。
ナタンソーンは笑いながら言った。
「仕方ないな」。
そして手で合図をする。追っ手の仲間は剣を抜いた。
「こちらの方が数は多いぞ」。
ナタンソーンの手下たちは突撃してきた。ユルゲンたちは応戦する。
しばらくの戦いのあと、追っ手の半分以上が倒された。ユルゲン達の側の犠牲者は数名だ。
その状況を見てナタンソーンはぎょっとした。
「我々は精鋭だ。同じ程度の数では戦いにならないぞ」。
ユルゲンは叫んだ。
ナタンソーンは狼狽して「退却だ!」。と言って慌てて手綱を打って馬を返した。
ユルゲンたちは彼らを深追いをせずに、皇帝の後を追うことにした。
馬を急がせるベルナツキーはユルゲンに話しかけた。
「しかし、これでは、また追いつかれます」。
「その時は、また撃退するほかない」。
そうは言ったものの、今度はもっと大勢で追ってくるだろう。さらに、皇帝の馬車はさほどスピードを出せない。何とか追いつかれる前にプリブレジヌイに到着せねば、と誰もが考えていた。
しかし、ユルゲンは途中、自分の屋敷に立ち寄ったため、彼らの姿はもう見えなかった。かなり先の方まで行ってしまったのだろう。しかし、行き先はわかっている。帝国の北の国境線に近い都市プリブレジヌイだ。陛下の一行もそちらに向かっているはずだ。
ユルゲンもプリブレジヌイへ向かう。
その日の夜遅く、ユルゲンは小さな村に到着した。
家々の窓から明かりが漏れている。
村の中を少し進むと、見慣れた馬車があった。皇帝の馬車だ。皇帝は今のところ無事に逃げ延びているようだ。馬車の周りには親衛隊が見張りとして数名立っていた。
ユルゲンは親衛隊に声を掛けた、一瞬、彼らは警戒して剣に手を掛けるが、ユルゲンをよく見て安堵のため息をついた。
「副司令官!ご無事でしたか!」
「ああ、なんとかね」。
「陛下は、この民家の中です。副隊長もおられます」。
ユルゲンは隊員の一人に招かれて、小さな民家の中に入った。
そこには、副隊長のベルナツキーと数名の親衛隊が椅子に座って何やら話し合っていた。
「副司令官!」ベルナツキーは私の顔を見ると立ち上がって近づいてきた。「よくご無事で」。
彼と部下は安堵の表情を見せ、立ち上って敬礼した。
ユルゲンは敬礼をする。
「途中、ルツコイ司令官達とはぐれてしまったが、彼らもプリブレジヌイへ向かっている」。
「では、あちらで合流できるでしょう」。
「実は、ヴァーシャが行方不明だ」。
クリーガーは不安そうに話す。
「隊長が?」
「そうだ。あの後、家に立ち寄ったら、召使いしかいなかった」。
「隊長はお腹が大きいのでは」。
「ええ、妊娠六か月です。その上、街があの状況で出かけるとは思えない」。
「きっと、早めに退避したんですよ」。
ベルナツキーはユルゲンを慰めるように言う。
「そうだといいが」。ユルゲンはため息をついた。そして気を取り直して尋ねた。「陛下は?」
「奥の部屋で休まれています。さすがに、馬車の中で、とは言えませんでしたので」。
「この家の住民は?」。
「大金を払って、今夜だけ他のところへ行ってもらいました。宿泊するのが皇帝だというと、驚いていました」。
「無理もない」。
「副司令官もお休みになっては?と、言っても床に、ですが。我々も順番で休んでおりますので、お気兼ねなく」。
「わかったありがとう」。
もう、遅い時間だったし、明日の出発も早い。そして、さすがに今日は疲れた。ユルゲンは床に横になり、眠ることにした。
◇◇◇
翌朝。ユルゲンは目を覚ました。眠りが浅かったのか、すっきりしない感じだった。懐中時計を見るともうすぐ日の出の時間のはずだ。
ベルナツキーと親衛隊員数名はまだ床に横になっていた。他の親衛隊員数名が起きて見張りをしていた。
ユルゲンは起き上がると、眠っている全員を起こす。
ユルゲンは皇帝イリアも起こそうと奥の部屋につながる扉をノックした。皇帝はすでに起きていたようで、返事をするとすぐに扉を開けて出て来た。
彼女はユルゲンを見て驚いたようだった。
「クリーガー。追いついたのですね」。
「はい、陛下。プリブレジヌイまでお供いたします」。
「心強いです」。
「では、急ぎましょう」。
ベルナツキーはそう言うと、皇帝を馬車へ誘導する。そして、皇帝が馬車に乗り込むのを見ると隊員達と馭者に出発の合理を掛ける。一行は村を出発した。ユルゲンもその後に続く。
村を出発して街道を北へ進み数時間後、時間はそろそろ正午になろうとしていた。
後方を警戒させていた親衛隊員の一人が声を上げた。
「追っ手です!」
ユルゲンたちは予想外の早い追っ手に困惑した。反乱兵は我々の行く先は知らないはずだ。なぜ、彼らはこんなに早く追いつけるのだろうか。
皇帝の専用馬車ではそれほど速さが出せない。すぐに追いつかれるだろう。
街道の後方、遠くに見えた追っ手は五十名はいる。
こちらは四十名ほどだ。
数名に陛下の馬車の護衛を任せて先を急がせ、ユルゲン、ベルナツキーとほかの隊員達はむきを変え追っ手を待ち構える。
追っ手は、ユルゲン達を見ると馬の速度を落とした。
先頭の男がゆっくりと前に進みだす。
ユルゲンはその男の顔を確認する。彼には見覚えがあった。反政府勢力のリーダー、ヴィクトル・ナタンソーンだ。
ナタンソーンは声の届くところまで来るとユルゲンに気が付いて語りかけて来た。
「ユルゲン・クリーガーか。以前、一度会ったことがあるな」。
彼とは三年前、首都で顔を合わせたことがある。ユルゲンはナタンソーンが街で演説中に、たまたま遭遇したことがあるのだ。
「そうだな」。
ユルゲンは静かに答えた。
ナタンソーンは続ける。
「もう帝国は崩壊だ。抵抗は無意味だ。降伏しろ」。
「降伏はしない」。
そう言うと、ユルゲンは剣を抜いた。
その言葉を継ぐようにベルナツキーも剣を抜き怒鳴った。
「陛下がおられる限りな!」。
親衛隊たちも剣を一斉に抜く。
ナタンソーンは笑いながら言った。
「仕方ないな」。
そして手で合図をする。追っ手の仲間は剣を抜いた。
「こちらの方が数は多いぞ」。
ナタンソーンの手下たちは突撃してきた。ユルゲンたちは応戦する。
しばらくの戦いのあと、追っ手の半分以上が倒された。ユルゲン達の側の犠牲者は数名だ。
その状況を見てナタンソーンはぎょっとした。
「我々は精鋭だ。同じ程度の数では戦いにならないぞ」。
ユルゲンは叫んだ。
ナタンソーンは狼狽して「退却だ!」。と言って慌てて手綱を打って馬を返した。
ユルゲンたちは彼らを深追いをせずに、皇帝の後を追うことにした。
馬を急がせるベルナツキーはユルゲンに話しかけた。
「しかし、これでは、また追いつかれます」。
「その時は、また撃退するほかない」。
そうは言ったものの、今度はもっと大勢で追ってくるだろう。さらに、皇帝の馬車はさほどスピードを出せない。何とか追いつかれる前にプリブレジヌイに到着せねば、と誰もが考えていた。
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