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人民革命
プリブレジヌイの戦い6
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【50年前】
大陸歴1660年8月15日・プリブレジヌイ
帝国軍、人民革命軍の両軍に動きが無く、膠着状態が続き三日が過ぎた。
そこへ人民革命軍に首都からキーシンとインシェネツキーが率いる四千名の兵と食料の補給部隊が到着した。
革命の指導者、ヴィクトル・ナタンソーンは彼らを歓迎するために前に出た。
インシェネツキーが紹介する。
「彼が帝国の旅団長をしていたセルゲイ・キーシン司令官です」。
「協力を感謝する」。
ナタンソーンが挨拶すると、キーシンは敬礼して応える。
「よろしく」。
そして、ナタンソーンは自分たち指導者が使っているテントにキーシンを招いた。
数名の革命軍のリーダーと、護衛だろうかサーベルを下げた小柄な若い女性が一人立っていた。
ナタンソーンに促されて、キーシンは椅子代わりにされている小さい木箱に腰掛ける。他の物も木箱に腰かけるのを見て、ナタンソーンは口を開いた。
「早速ですが、現状の報告をすろ。現在、膠着状態だ。我々は約二万。そのうち、元帝国軍第四旅団が千人ほど残っていて、前方に陣を張っている。敵はプリブレジヌイの中に帝国軍六千と公国軍五千居る」。
「公国軍とはテレ・ダ・ズール公国の軍隊ですか?」
「そうだ」。
「それは想定外です」。
「外国勢力の協力を借りるとは帝国軍はかなり窮地にあるのだろう」。
「そうでしょうね。ところで、こちらの二万のうち、三分の一は兵士や元兵士だと聞いております」。
「その通り」。
「では、部隊の再編成をさせてください。指揮系統がバラバラでは戦いにならない」。
「それは、お任せする」。
「元兵士と兵士が七千、私が引き連れて来た四千と元第四旅団が千五百で一万二千五百の兵力となります。敵とはほぼ同数ですが、城攻めとなったらこちらの方が不利です。何とか敵を街壁の外へ誘き出す方法を考えたいと思います」。
「よろしく頼む」。
そう言うと、キーシンは立ち上がった。
キーシンも立ち上って、話を続ける。
「まだ、帝国軍は我々が到着したことを知らないはず。到着を知られないようにします」。
キーシンに率いる四千は本隊の後方の丘の反対側、プリブレジヌイから直接は見えない場所に野営し、帝国軍に存在が知られないようにした。
そして、キーシンは、ほとんどバラバラの革命軍を何とか再編制し、戦えるようにしなければならない。
兵士や元兵士を中心に再編成をはかり、その中に戦いの経験の浅い者を少しずつ編入させる。そうすることとで二万の革命軍の内、一万五千を大部隊として再編成をした。
そして、数日で命令が一万五千に伝わるように命令伝達役の兵士を立て指揮系統を作り上げた。兵士や元兵士が多数くいたおかげで、さほど難しい事ではなかった。
残ったほぼ素人の義勇兵五千人も敵を足止めさせるぐらいはできるだろう。
「さすがは元軍の司令官だな」。ナタンソーンはキーシンがみるみるうちに軍を再編成するにも目を見張った。「しかし、キーシンが敵に寝返ったら、恐ろしいことになる」。
それを耳にしたインシェネツキーが提案する。
「心配ならキーシンに目付け役をつけてはどうでしょう?」
「そうだな」。
目付け役として、自分の護衛をしていたオレガを彼の護衛ということにして、傍に付けることにした。キーシンが裏切った際は容赦なく斬れと命令を出した。もちろんキーシン自身にはそのことを伝えていない。
とりあえず、キーシンはオレガの護衛を承諾した。
しかし、キーシンは訝しがった。こんな小柄で若い女性が私の護衛として役に立つのか?
オレガは、先日、ナタンソーンを狙った刺客五人を撃退したという。そんな腕があるようにはとても見えないが。
キーシンはオレガと二人になった時、尋ねた。
「君、名前は?」
「オレガ・ジベリゴワです」。
聞いたことがない名前だった。
「剣はどこで学んだ?」
「師から学びました」
「師?」
「ユルゲン・クリーガーです」。
「なんだって?!」
キーシンは驚いて、思わず大声を上げた。ユルゲン・クリーガーなら良く知っている。いや、帝国では知らない者はいない“帝国の英雄”だ。ごく限られた者しか知られていないが、“チューリン事件”では、皇帝の体を乗っ取っていた魔術師を倒し、そしてソローキン反乱では、総司令官ソローキンを倒した人物。
彼には弟子が居ると聞いたことがある。オレガは彼の弟子ということか。
「しかし、ユルゲン・クリーガーは今、プリブレジヌイの帝国軍にいるのでは?」
「そうです」。
「なぜ君は反乱軍にいる?」
「私は皆と同じ首都北部の出身です、虐げられてきた者の一人として革命軍に居ます」。
「君の師と斬り合うことになるかもしれんぞ」。
「そうなったらその時です。私は革命軍に付くと決めたのです。迷いはありません」。
そうはいったが、そういう事態になればオレガ自身はユルゲンを説得して戦わずに済ませたいと頭の隅で思っていた。
そして、膠着状態がさらに数日続いた。
帝国軍は籠城を決め込んだのだろう。革命軍の食料もいつまでも持つわけではない。何とか帝国軍を引きずり出さないとこちらには勝機はない。
そこで、ソローキンは一案を考えた。
大陸歴1660年8月15日・プリブレジヌイ
帝国軍、人民革命軍の両軍に動きが無く、膠着状態が続き三日が過ぎた。
そこへ人民革命軍に首都からキーシンとインシェネツキーが率いる四千名の兵と食料の補給部隊が到着した。
革命の指導者、ヴィクトル・ナタンソーンは彼らを歓迎するために前に出た。
インシェネツキーが紹介する。
「彼が帝国の旅団長をしていたセルゲイ・キーシン司令官です」。
「協力を感謝する」。
ナタンソーンが挨拶すると、キーシンは敬礼して応える。
「よろしく」。
そして、ナタンソーンは自分たち指導者が使っているテントにキーシンを招いた。
数名の革命軍のリーダーと、護衛だろうかサーベルを下げた小柄な若い女性が一人立っていた。
ナタンソーンに促されて、キーシンは椅子代わりにされている小さい木箱に腰掛ける。他の物も木箱に腰かけるのを見て、ナタンソーンは口を開いた。
「早速ですが、現状の報告をすろ。現在、膠着状態だ。我々は約二万。そのうち、元帝国軍第四旅団が千人ほど残っていて、前方に陣を張っている。敵はプリブレジヌイの中に帝国軍六千と公国軍五千居る」。
「公国軍とはテレ・ダ・ズール公国の軍隊ですか?」
「そうだ」。
「それは想定外です」。
「外国勢力の協力を借りるとは帝国軍はかなり窮地にあるのだろう」。
「そうでしょうね。ところで、こちらの二万のうち、三分の一は兵士や元兵士だと聞いております」。
「その通り」。
「では、部隊の再編成をさせてください。指揮系統がバラバラでは戦いにならない」。
「それは、お任せする」。
「元兵士と兵士が七千、私が引き連れて来た四千と元第四旅団が千五百で一万二千五百の兵力となります。敵とはほぼ同数ですが、城攻めとなったらこちらの方が不利です。何とか敵を街壁の外へ誘き出す方法を考えたいと思います」。
「よろしく頼む」。
そう言うと、キーシンは立ち上がった。
キーシンも立ち上って、話を続ける。
「まだ、帝国軍は我々が到着したことを知らないはず。到着を知られないようにします」。
キーシンに率いる四千は本隊の後方の丘の反対側、プリブレジヌイから直接は見えない場所に野営し、帝国軍に存在が知られないようにした。
そして、キーシンは、ほとんどバラバラの革命軍を何とか再編制し、戦えるようにしなければならない。
兵士や元兵士を中心に再編成をはかり、その中に戦いの経験の浅い者を少しずつ編入させる。そうすることとで二万の革命軍の内、一万五千を大部隊として再編成をした。
そして、数日で命令が一万五千に伝わるように命令伝達役の兵士を立て指揮系統を作り上げた。兵士や元兵士が多数くいたおかげで、さほど難しい事ではなかった。
残ったほぼ素人の義勇兵五千人も敵を足止めさせるぐらいはできるだろう。
「さすがは元軍の司令官だな」。ナタンソーンはキーシンがみるみるうちに軍を再編成するにも目を見張った。「しかし、キーシンが敵に寝返ったら、恐ろしいことになる」。
それを耳にしたインシェネツキーが提案する。
「心配ならキーシンに目付け役をつけてはどうでしょう?」
「そうだな」。
目付け役として、自分の護衛をしていたオレガを彼の護衛ということにして、傍に付けることにした。キーシンが裏切った際は容赦なく斬れと命令を出した。もちろんキーシン自身にはそのことを伝えていない。
とりあえず、キーシンはオレガの護衛を承諾した。
しかし、キーシンは訝しがった。こんな小柄で若い女性が私の護衛として役に立つのか?
オレガは、先日、ナタンソーンを狙った刺客五人を撃退したという。そんな腕があるようにはとても見えないが。
キーシンはオレガと二人になった時、尋ねた。
「君、名前は?」
「オレガ・ジベリゴワです」。
聞いたことがない名前だった。
「剣はどこで学んだ?」
「師から学びました」
「師?」
「ユルゲン・クリーガーです」。
「なんだって?!」
キーシンは驚いて、思わず大声を上げた。ユルゲン・クリーガーなら良く知っている。いや、帝国では知らない者はいない“帝国の英雄”だ。ごく限られた者しか知られていないが、“チューリン事件”では、皇帝の体を乗っ取っていた魔術師を倒し、そしてソローキン反乱では、総司令官ソローキンを倒した人物。
彼には弟子が居ると聞いたことがある。オレガは彼の弟子ということか。
「しかし、ユルゲン・クリーガーは今、プリブレジヌイの帝国軍にいるのでは?」
「そうです」。
「なぜ君は反乱軍にいる?」
「私は皆と同じ首都北部の出身です、虐げられてきた者の一人として革命軍に居ます」。
「君の師と斬り合うことになるかもしれんぞ」。
「そうなったらその時です。私は革命軍に付くと決めたのです。迷いはありません」。
そうはいったが、そういう事態になればオレガ自身はユルゲンを説得して戦わずに済ませたいと頭の隅で思っていた。
そして、膠着状態がさらに数日続いた。
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そこで、ソローキンは一案を考えた。
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