色彩の大陸1~禁断の魔術

谷島修一

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反乱の萌芽

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 帝国首都アリーグラードから、最初の目的地の宿屋街ヤチメゴロドまでの道中は特に何事もなく、無事到着した。ヤチメゴロドで一泊し、次の目的地モルデンに向かう。
 途中、共和国軍の残党・ホルツに会わなければならない。前回、帝国軍の内情を調べて話す、という約束したからだ。

 我々はヤチメゴロドを出発し、旧国境であるズードヴァイフェル川に差し掛かった。我々は川を渡り、国境警備隊の宿舎の焼け跡まで来た。ここでホルツに会える予定だ。
 暫く待っていると、馬に乗ったホルツがやって来た。常々、どこからかこの場所を監視しているのだろう。
「やあ」。ホルツは手を上げて挨拶した。「約束の話を持って来たのか?」
「首都で情報をいろいろ集められたので、それを話します」。私が言うと、ホルツは後ろに向き直り言った。「では、ここでは落ち着かない。付いてきくれ」。
 ホルツの後に続いて我々は馬を進めた。また岩がゴツゴツとした地形の場所にやって来たが、前回来た場所とは明らかに別の場所だ。宿舎の焼け跡から一時間近く来ただろうか、岩場に囲まれたわかりにくい場所に、洞窟があった。その前には、残党の仲間であろう人物が三十名近く居る。我々が近づくと、ジロリと睨むようにこちらを見た。
 ホルツは馬を降りる様に言い、洞窟の中に入るように言った。我々が中に入ってみると、武器や食料などが大量に置いてあるのが分かった。どこから調達したものなのだろうか。
 私の疑問を察したように、ホルツが言った。
「武器は帝国軍から奪ったものだ。食料などは近くの村から分けてもらったものだ。村人達は帝国に反感を持っている者が多いので、こころよく分けてくれる。我々の拠点はここでだけでなく、ほかにも数か所ある。どこかが帝国に発見されても、ほかのところに逃げることができるようにしている」。
 我々はさらに洞窟の奥に入るように言われ、ホルツについて行く。洞窟内はかろうじて足元が見える程度に松明がたかれている。
 暫くして行き止まりに到着した。椅子がわりにしている大きな石に座るように言われ、我々は腰かけた。
「では、話を聞かせてもらおうか」。
 早速ホルツは切り出した。
 私は首都で仕入れた帝国の現状を細かく話した。
 帝国軍は首都にいるソローキンとキーシンが主流派として仕切っており、他の旅団の司令官は共和国の都市に駐留させられ中央から遠ざけられているという事。軍全体が人員不足である事。“預言者”チューリンが実権を握っている事。そのことに軍や国民に不満が募っており、首都北部の地域には反政府勢力も居たこと。
 社会から隔絶されて、こんなところで生活している彼らにとって、私の話はかなり新鮮だったようだ。そもそも、私も知らなかった話も多い。
 ホルツは私の話を興味深く聞いていた。話が終わると大きく頷いてから話し出した。
「なるほど、とても参考になる。軍の統制が思ったより取れていない。人員不足というのも我々にとっては都合のいい話だ。共和国のいくつかの都市で一度に反乱を起こせば、帝国は対応ができなくて、収拾が着かなくなりそうだな」。ホルツは腕組みしながら言った。「それぞれの都市にうまく連絡ができるようにルートを作れないものか。さらに、それぞれの都市に指導者を決めて、その都市での武装蜂起の準備や取りまとめを行なってもらうことが必要になるな」。
 ホルツは私に向き直った。
「時が来たら、ズーデハーフェンシュタットは、君が反乱の取りまとめをしてくれないか?」
「いいでしょう」。
 私は少し考えて答えた。
「モルデンは、ここにいる仲間が、そこの駐留軍だったものが多いので、なんとかなるだろう。あとはオストハーフェンシュタットやベルグブリック、ヴァイテステンなどにも連絡が取れるようにしたいな…。なにかいい方法はないか?」ホルツは私に聞いてきた。
「各都市を回って地道にリーダーを作るしかないのではないでしょうか?」
私は答えた。
「やはり、そうだな…。早速、動いてみるか。君の方でも可能な限り協力してほしい」。
「わかりました。私の人脈も使ってみます」。
「助かる」。ホルツは言って立ち上がった。「しかし、思ったより有益な情報だったよ、ありがとう」。
 我々三人も立ち上がった。
 ホルツは我々を洞窟の外へ出る様に合図をして続けた。
「今後、連絡が取りあえるようにしよう。必要とあれば伝令を送りあおう」。
「わかりました」。
「では、これからもよろしく」。
 ホルツは握手を求めてきたので、我々三人は彼とそれぞれ握手をした。

 我々はホルツと別れ、街道に戻りモルデンを目指した。
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