色彩の大陸1~禁断の魔術

谷島修一

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海軍

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 ルツコイの執務室から自室に戻った私は、紙に調査隊の選抜メンバーを記載していった。傭兵部隊のメンバーのほとんどのことは、よくわかっているし、この話を聞いた時にある程度の考えが頭にあった。なので、メンバーを選抜するのには、さほど苦労しなかった。メンバーはいずれも腕は確かだ。あとは我々の見張り役となる帝国軍のメンバーだが、それはルツコイに任せれば良いだろう。

 部隊は船二隻に分乗することになったので、ちょうど二部隊に別れる様に編成した。現地でも二つに分かれて島を調査しようと考えている。

 第一隊
 隊長ユルゲン・クリーガー
 副長レオン・ホフマン

 第二隊
 隊長エーベル・マイヤー
 副長エミリー・フィッシャー

 として、それぞれに魔術師三名、傭兵四十五名を配置する。各隊それぞれ合計五〇名だ。

 第一隊の副長、レオン・ホフマンは、大型の剣と盾を駆使する体格のしっかりした大柄で豪快な性格の男だ。後ろで束ねている長めの黒髪が特徴だ。彼は共和国軍の出身ではない。戦争前は賞金稼ぎとして盗賊狩りなどをしていた男だ。戦後は帝国により彼のような賞金稼ぎの活動は禁止された。傭兵部隊が設立され公募が始まると、盗賊討伐も任務内容に含まれていたということで傭兵部隊に参加してきたクチだ。戦前は、盗賊狩りで数々の修羅場をくぐってきた男だ。そのせいか、顔や体に複数傷跡がある。実戦の経験は、私よりも遥かに多い。数人の彼の仲間だった者も傭兵部隊に参加している。

 第二隊の副長、エミリー・フィッシャーは、元共和国軍で私と同じ首都防衛隊に所属していたので、私やエーベルとは旧知の仲だ。傭兵部隊では、六名しかいない女性の一人。茶色の短い髪と茶色い目をしていて、身長は小柄で華奢だが、剣の腕はかなり良い。併せて弓も得意としている。実戦の経験は少ないが腕は確かだ。

 第一隊には私の弟子の二人、オットーとソフィア、ソフィアのルームメイトのアグネッタ・ヴィクストレームを編成した。

 今回の任務は下手をすると命を落とすことになるかもしれない。各メンバーには心してかかるように念を押すつもりだ。敵が翼竜だけでなく、おそらく傀儡魔術を使う魔術師であろう謎の人物とも対決することがあるだろう。その人物と戦うことになった場合は、どのようなことになるか予想だにつかない。

 私は選抜メンバーのリストアップを終え、少し休んでから、海軍の司令官と乗船する艦船の船長に会ってみようと思った。乗船する艦船と、これまでの調査隊のことを聞ければと思ったからだ。また、戦後、帝国に海軍が接収された後、帝国から来た司令官とは会ったことがなかった、この際にまとめて会えればと思った。約束は入れていないが、会うことができるだろうか。気晴らしに散策がてら行ってみようと思った。

 海軍の建物は、港の端の一帯にある海軍の敷地内にある。私は馬で城から港へ向かった。街の中心部を抜け、しばらく海に向かうと港がある。一般の船舶が着く桟橋の多くは、今日も活気があり、船から荷下ろしをする者、逆に荷物を積み込む者であふれかえっている。彼らの邪魔にならないように、帝国軍の見張りの兵士もところどころで立っている。
 海軍の建物は港の端にポツンと建っている。建物は古く重厚なデザインだ。馬を建物の前に括り付けた。建物のそばに衛兵が二名立っていた。私は、その一人に声を掛け、自己紹介をし、司令官がいるかどうか確認した。衛兵によると居るとのことで、司令官に会いたいというと、すんなりと通してくれた。私は海軍でも一応、名が知れているようだ。飾り付けのある大きな扉に進みより、前に立った。その重い扉を開けると、中はひんやりとした空気で静かだ。二階に司令官室があるのが壁に記載してあったので、二階に上がることにした。
『司令官室』の札がかかっている部屋をノックした。中から女性の声で、入るようにと言われた。中に入ると女性が机に座っていた。どうやら秘書のようだ。
 私は自己紹介をし、司令官に会いたいというと、奥の扉を開け通してくれた。

 中には帝国軍の士官の制服を着た男が座っていた。見たところ六十歳に近いだろうか。茶色の髪に白髪が少し混じっている。しかし、その眼は軍人とは言えないような、穏やかな感じを醸し出していた。
 私は敬礼をして自己紹介をした。
「ベススメルトヌイフ司令官。私は傭兵部隊の部隊長でユルゲン・クリーガーと申します」。
「クリーガー隊長、名前は存じておるよ。お初にお目にかかるね。私は海軍の司令官をやっているニコライ・ベススメルトヌイフだ。今日は調査隊の件だね」。
「そうです」。
「首都から船を二隻出せと命令が来ているよ。これまでも、二度調査隊が派遣されたが、行方不明になっているのは耳に入っているでしょう?」。
「はい」。
「大変な任務を仰せつかってしまったね」。
 穏やかな口調でいう。しかし、あまりこの件には興味なさそうだ。ひょっとして、彼もルツコイと同じように帝国の中央から遠ざけられて配属されたのだろうか。
「細かい話は、フリゲート艦の船長に訊くと良いだろう」。
 ベススメルトヌイフは、壁の海図をチラリと見て言った。
「すでに港にはフリゲート艦二隻が停泊しているはずだ」。
「わかりました。早速船長に会ってみます」。
 私は、そう言うと敬礼して、部屋を後にした。

 港へ戻ると海軍用の大型桟橋の両側に、旧式のフリゲート艦が二隻停泊していた。船体には船名が書いてある。一隻は“ウンビジーバー” (無敵) 号、もう一隻は “ヘアラウスフォーダンド”(挑戦) 号だ。
 私は、桟橋にいた士官らしき人物に声を変えた。艦長の所在を尋ねたところ、ちょうどウンビジーバー号からその船の艦長が降りてくるところだそうなので、待つことにした。
 しばらく待つと、船から艦長らしき上級士官の制服の人物が降りてきたので、私は敬礼し声を掛けた。
「艦長さんですね。私は傭兵部隊の隊長で、今回の調査隊の責任者のユルゲン・クリーガーです」。
「私は、ウンビジーバー号の艦長のボリス・シュバルツです」。
 シュバルツは敬礼し返した。彼は、細身でスラリと背が高く、禿げ頭の神経質そうな感じの男だ。年齢は五十歳前後というところか。
 シュバルツは、早口に話し始めた。
「調査隊のことは今朝訊いた。厄介な仕事をやることになって、まったく迷惑な話だ」。彼は額の汗をぬぐって続けた。「これまでも同様の任務で新型の巡洋艦が二隻、乗員ごと行方不明になっている」。
 私は知っているという風に、無言でうなずいた。
「帝国に接収されてからは、ロクなことがない。今回は我々に貧乏くじが回ってきたというわけだ」。
「今回の任務では、ルツコイからは無理をするなと言われております。生還することを最優先で考えたいと思っております」。
「そうなれば、ありがたいがね」。シュバルツは首を左右に振った。「近いうちに出発までの打ち合わせがあるだろう。その時、また会おう」。
 彼はそう言うと、さっさと海軍の建物の方に向かっていった。
 彼が忙しそうにしているので、私は今日のところは、それ以上は何も話さず、彼の後姿を見送った。
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