38 / 68
航海
しおりを挟む
航海の途中、私は副長のレオン・ホフマンと探索ルートの確認をしている。我々はレジデンツ島の北側に上陸する。二隻のフリゲート艦は北側の遠浅の砂浜となっている沖合で待機し、調査隊は複数の小型のボートに乗り換えて上陸することになる。その後、島の東側と西側を第一隊、第二隊でそれぞれ探索する。
我々は東側の岩場の多いところで南に行くにつれ、森が深くなっていく。エーベルたちが探索する西側は、ほとんどは森になっている。二日もあれば第一隊と第二隊は南側で合流できるだろう。合流した後は島の中央部に向かい北側に抜ける予定だ。
もし、それまでに、何らかの“敵”に遭遇すれば対処する予定だ。
打ち合わせも終わり、私とホフマンは雑談をしている。
「やっと任務らしい任務に着けて、私は嬉しいです」。ホフマンは言う。彼は、賞金稼ぎ上がりなので、最初、言葉遣いが荒っぽかったが、二年間の指導の成果もあり、ようやく言葉遣いもちゃんとしてきた。彼は比較的、軍の規律に馴染んでいるように見える。
これまでの任務と言えば、街周辺の盗賊退治ぐらいで、ホフマンはそれではあまり満足できていなかったようだ。彼は命に危険がある任務もさほど気にしていない様子で、さすがいくつもの修羅場をくぐったというだけはある。肝が据わっている。
「頼もしいな」。
私は本心から言った。
「これで手柄を上げれば、傭兵部隊の評価が上がる。軍の中の待遇ももっと良くなるかもしれませんね」。
私の印象では、現在の傭兵部隊の待遇は、悪くはないが、良くもないという程度だろうか。私自身は昇進などは興味がないが、隊員達の階級や生活水準が上がるのが悪いことではない。
「今回は、十分に活躍してほしい。でも無理はするな」。
そう私は忠告した。
その後、時間を見つけて、アグネッタを念動魔術を教えてもらうため、自室に呼んだ。
アグネッタによると、念動魔術は、まずは集中力だそうだ。無論、魔石は身に着けておく。聞いたことのない、発音の難しい呪文をまず教えてもらう。それを唱えた後、動かしたいものを思い浮かべる。そして、それをどのようにしたいのか、強く念じると良いらしい。アグネッタの様に自分の体を持ち上げて飛行できるようになるまでは、一年以上の訓練が必要らしい。
数時間の訓練の後、机の上のカップを少し動かせるようになった。アグネッタによると私は筋が良いらしい。それは、エーベルからもらった魔石の品質が良いせいかもしれない。アグネッタにそれを見せると、彼女は眼を輝かせて、「これは相当な品ですよ」と言った。「私の魔石より格段も良いです」、とも言った。エーベルはそんな良い物をくれたのか。島で会ったら改めて礼を言おうと思った。ともあれ、カップを動かせるぐらいでは、まだまだ実戦に役立てることはできない。まだまだ訓練が必要だ。
私は話題を変え、首都へ旅した時、首都やモルデンにもヴィット王国の者が居るらしいと聞いたと、話した。ヴィット王国の者が国外に出ることは珍しいと聞いていたので、同じくヴィット王国出身のアグネッタにも話を聞いてみたいと思っていたところだ。
アグネッタによると、近年、国が少し方針を変え、外国に出るとことを許可することがあるという。それは、外国の魔術を研究するためや貿易のために限られているそうだ。なるほど、アグネッタは魔術の研究、モルデンでオットーが見かけたという商人、首都でイワノフから聞いた貿易商は、だいだいそれに一致する。
外国人がヴィット王国に入国はできるのか?と尋ねてみた。審査はあるが入国可能だというが、やはり貿易関係者でないとなかなか難しいらしい。
なぜヴィット王国が人々の出入りを制限しているかと言うと、魔術の進んだヴィット王国では、その魔術を悪用しようとたくらむ者の出入りを防ぐためだという。王立図書館には様々な魔術書があり、現在では使用禁止としている魔術も多数存在しているようだ。それの流出を防ぐために、ヴィット王国としては、昔から鎖国のような政策を取っているという。
私が「ヴィット王国に行きたいと思ったら商人にでもなるしかないのか」と、言うと。
アグネッタは「雪ばっかりで、面白いところないですよ」。と、笑って答えた。
我々は東側の岩場の多いところで南に行くにつれ、森が深くなっていく。エーベルたちが探索する西側は、ほとんどは森になっている。二日もあれば第一隊と第二隊は南側で合流できるだろう。合流した後は島の中央部に向かい北側に抜ける予定だ。
もし、それまでに、何らかの“敵”に遭遇すれば対処する予定だ。
打ち合わせも終わり、私とホフマンは雑談をしている。
「やっと任務らしい任務に着けて、私は嬉しいです」。ホフマンは言う。彼は、賞金稼ぎ上がりなので、最初、言葉遣いが荒っぽかったが、二年間の指導の成果もあり、ようやく言葉遣いもちゃんとしてきた。彼は比較的、軍の規律に馴染んでいるように見える。
これまでの任務と言えば、街周辺の盗賊退治ぐらいで、ホフマンはそれではあまり満足できていなかったようだ。彼は命に危険がある任務もさほど気にしていない様子で、さすがいくつもの修羅場をくぐったというだけはある。肝が据わっている。
「頼もしいな」。
私は本心から言った。
「これで手柄を上げれば、傭兵部隊の評価が上がる。軍の中の待遇ももっと良くなるかもしれませんね」。
私の印象では、現在の傭兵部隊の待遇は、悪くはないが、良くもないという程度だろうか。私自身は昇進などは興味がないが、隊員達の階級や生活水準が上がるのが悪いことではない。
「今回は、十分に活躍してほしい。でも無理はするな」。
そう私は忠告した。
その後、時間を見つけて、アグネッタを念動魔術を教えてもらうため、自室に呼んだ。
アグネッタによると、念動魔術は、まずは集中力だそうだ。無論、魔石は身に着けておく。聞いたことのない、発音の難しい呪文をまず教えてもらう。それを唱えた後、動かしたいものを思い浮かべる。そして、それをどのようにしたいのか、強く念じると良いらしい。アグネッタの様に自分の体を持ち上げて飛行できるようになるまでは、一年以上の訓練が必要らしい。
数時間の訓練の後、机の上のカップを少し動かせるようになった。アグネッタによると私は筋が良いらしい。それは、エーベルからもらった魔石の品質が良いせいかもしれない。アグネッタにそれを見せると、彼女は眼を輝かせて、「これは相当な品ですよ」と言った。「私の魔石より格段も良いです」、とも言った。エーベルはそんな良い物をくれたのか。島で会ったら改めて礼を言おうと思った。ともあれ、カップを動かせるぐらいでは、まだまだ実戦に役立てることはできない。まだまだ訓練が必要だ。
私は話題を変え、首都へ旅した時、首都やモルデンにもヴィット王国の者が居るらしいと聞いたと、話した。ヴィット王国の者が国外に出ることは珍しいと聞いていたので、同じくヴィット王国出身のアグネッタにも話を聞いてみたいと思っていたところだ。
アグネッタによると、近年、国が少し方針を変え、外国に出るとことを許可することがあるという。それは、外国の魔術を研究するためや貿易のために限られているそうだ。なるほど、アグネッタは魔術の研究、モルデンでオットーが見かけたという商人、首都でイワノフから聞いた貿易商は、だいだいそれに一致する。
外国人がヴィット王国に入国はできるのか?と尋ねてみた。審査はあるが入国可能だというが、やはり貿易関係者でないとなかなか難しいらしい。
なぜヴィット王国が人々の出入りを制限しているかと言うと、魔術の進んだヴィット王国では、その魔術を悪用しようとたくらむ者の出入りを防ぐためだという。王立図書館には様々な魔術書があり、現在では使用禁止としている魔術も多数存在しているようだ。それの流出を防ぐために、ヴィット王国としては、昔から鎖国のような政策を取っているという。
私が「ヴィット王国に行きたいと思ったら商人にでもなるしかないのか」と、言うと。
アグネッタは「雪ばっかりで、面白いところないですよ」。と、笑って答えた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる