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グロースアーテッヒ川の戦い
第5話・首都防衛隊
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大陸歴1655年3月5日・早朝
日の出から三十分ほど経っただろうか。
首都ズーデハーフェンシュタットの街壁で待機をしていた首都防衛隊にも、前線で戦闘が始まったようだと情報が駆け巡った。
それを耳にした私は、詰所で待機していたが階段を駆け上がり、街壁の上へ到着した。すでに、他の大勢の兵士たちも街壁の上から、遠くのグロースアーテッヒ川対岸で立ち昇る煙を見つめていた。
私は近くで望遠鏡で戦場の方を覗いているマイヤーの姿を見つけて声を掛けた。
「どうだ、様子は?」
「詳しい状況は、全く見えないな。おそらく、こちら側が草原に火をつけたようだ」
「そうか」
「あれに、どの程度の効果があるのだろうか?」
「目くらまし程度にはなるだろうな」
私はふと、目線を少し下にすると、海軍の船数隻が川の真ん中あたりで待機しているのが見えた。
共和国の海軍の兵力は少なく、地上のでの戦いは参戦することは叶わない。せいぜい船上から弓を射るぐらだろう。
海軍を見て驚いた思わずクリーガーはエーベルに尋ねた。
「あれは?」
「わからない。万一の時、部隊を脱出させる為に待機しているのかもしれんな」
前線が突破された場合は、首都での籠城戦となるのは間違いない。その“万が一”が無いことを祈ろう。
エーベルは私の心の中を読んでいたように質問をした。
「もし、籠城戦になった場合は、勝ち目はあるんだろうか?」
心の中を見抜かれたようで、少々驚いたが、私は答える。
「それは、帝国軍の数によるだろう。あの戦いでどれぐらい敵の戦力を削ることができるかによると思う」
「しかし、敵が川を渡るのには時間がかかるだろうから、少々時間は稼げそうだな」
「いや、時間を稼いでも、こちらに有利になることはないだろう。戦いの始まるのが遅いか早いかだけだ」
「そうか…、そうだな」
エーベルは変わらず望遠鏡を覗きながら気のない返事をした。
しばらくして、別の兵士から、首都防衛隊の一部が独断で戦場に向かったという情報が入った。
その数は三十名程度だそうだが、精鋭の深蒼の騎士がほとんどだという。
こちらから向かうには、船を使って渡河する必要があるが、海軍は独断の行動に同調しないだろう。そうすると、民間の渡し船を強引に接収するほかない。
しばらくして、案の定、渡し船が予定外の渡河を始めたのが街壁の上から見えた。
しかし、川の真ん中あたりで待機していた海軍の船数隻に囲まれてしまい、行く手を阻まれているようだ。
あれでは、対岸に向かうことは不可能だろう。
さらにしばらくして、正午頃、エーベルが私のもとへやってきて伝えた。
「さっきの独断で戦場に向かった連中の中に、クラウス・ルーデルが居たらしいぞ」
「そうか」
私はその名前を聞いて軽くため息をついた。
クラウス・ルーデルは、私の兄弟子で、かつては同じ師であるセバスティアン・ウォルターから教えを受けていた。師ウォルターが軍を離れてから、この数年はルーデルとは、性格もあまり合わないこともあって、ほとんど交流が無かった。私と彼は対照的な性格で、彼は少々血の気が多いように思っていた。一方の私は冷めすぎているきらいもあるが。
そういう事もあり、彼の今回の行動をさほど驚きはしなかった。
日の出から三十分ほど経っただろうか。
首都ズーデハーフェンシュタットの街壁で待機をしていた首都防衛隊にも、前線で戦闘が始まったようだと情報が駆け巡った。
それを耳にした私は、詰所で待機していたが階段を駆け上がり、街壁の上へ到着した。すでに、他の大勢の兵士たちも街壁の上から、遠くのグロースアーテッヒ川対岸で立ち昇る煙を見つめていた。
私は近くで望遠鏡で戦場の方を覗いているマイヤーの姿を見つけて声を掛けた。
「どうだ、様子は?」
「詳しい状況は、全く見えないな。おそらく、こちら側が草原に火をつけたようだ」
「そうか」
「あれに、どの程度の効果があるのだろうか?」
「目くらまし程度にはなるだろうな」
私はふと、目線を少し下にすると、海軍の船数隻が川の真ん中あたりで待機しているのが見えた。
共和国の海軍の兵力は少なく、地上のでの戦いは参戦することは叶わない。せいぜい船上から弓を射るぐらだろう。
海軍を見て驚いた思わずクリーガーはエーベルに尋ねた。
「あれは?」
「わからない。万一の時、部隊を脱出させる為に待機しているのかもしれんな」
前線が突破された場合は、首都での籠城戦となるのは間違いない。その“万が一”が無いことを祈ろう。
エーベルは私の心の中を読んでいたように質問をした。
「もし、籠城戦になった場合は、勝ち目はあるんだろうか?」
心の中を見抜かれたようで、少々驚いたが、私は答える。
「それは、帝国軍の数によるだろう。あの戦いでどれぐらい敵の戦力を削ることができるかによると思う」
「しかし、敵が川を渡るのには時間がかかるだろうから、少々時間は稼げそうだな」
「いや、時間を稼いでも、こちらに有利になることはないだろう。戦いの始まるのが遅いか早いかだけだ」
「そうか…、そうだな」
エーベルは変わらず望遠鏡を覗きながら気のない返事をした。
しばらくして、別の兵士から、首都防衛隊の一部が独断で戦場に向かったという情報が入った。
その数は三十名程度だそうだが、精鋭の深蒼の騎士がほとんどだという。
こちらから向かうには、船を使って渡河する必要があるが、海軍は独断の行動に同調しないだろう。そうすると、民間の渡し船を強引に接収するほかない。
しばらくして、案の定、渡し船が予定外の渡河を始めたのが街壁の上から見えた。
しかし、川の真ん中あたりで待機していた海軍の船数隻に囲まれてしまい、行く手を阻まれているようだ。
あれでは、対岸に向かうことは不可能だろう。
さらにしばらくして、正午頃、エーベルが私のもとへやってきて伝えた。
「さっきの独断で戦場に向かった連中の中に、クラウス・ルーデルが居たらしいぞ」
「そうか」
私はその名前を聞いて軽くため息をついた。
クラウス・ルーデルは、私の兄弟子で、かつては同じ師であるセバスティアン・ウォルターから教えを受けていた。師ウォルターが軍を離れてから、この数年はルーデルとは、性格もあまり合わないこともあって、ほとんど交流が無かった。私と彼は対照的な性格で、彼は少々血の気が多いように思っていた。一方の私は冷めすぎているきらいもあるが。
そういう事もあり、彼の今回の行動をさほど驚きはしなかった。
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