雑司ヶ谷高校 歴史研究部!!

谷島修一

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混乱の修学旅行編

良い日、悪い日

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 引き続き部室にいる。
 僕は、真田さんが歴史研の部員になってくれたことで、ほっとして椅子に座っている。
 上杉先輩と真田さんはゲーム談義。それに、たまに伊達先輩も加わる。
 西園寺さんと支倉君は、仲が良いみたいで、世間話を続けている。

 そこへ、ガラリと部室の扉が開いた。
 そちらに目を向けると、そこには毛利さんがいた。
 図書室の用事が終わって、やって来たようだ。

「こ、こんにちは」
 毛利さんは、部室内の人の多さにちょっと驚いた様子であいさつをした。
 そして、その後ろからついてきた女子生徒がいた。
 僕は彼女を見て驚いた。
 以前、僕が図書室で声をかけてナンパと勘違いされてしまった、痩せてメガネをかけた1年生女子だった。

 僕は思わず尋ねた。
「えっ?! ど、どうしたの?!」

 僕の声が少々大きかったのか、そのメガネ女子はおびえた様子で毛利さんの後ろに隠れた。
「ひっ…」

 毛利さんは、話を始める。
「えっと…、彼女、入部希望です」

「おおー!!」
 部室内にいた一同が驚きの声を上げた。

 毛利さんは事情を説明し始める。
「彼女は甘利 澄香さん。本当は文学に興味があるんだけど、知っての通り雑司ヶ谷高校には文学部はないから、どこに入ろうか考えていたんですって。そこで、私が歴史研に入るように説得して、入ってくれることになったんです」

「毛利ちゃん、やるねぇー」
 上杉先輩が嬉しそうに言った。

「じゃあ、さっそく座って、入部届を書いて」
 伊達先輩が言った。

 僕も素早くキャビネットから入部届を取り出した。

 甘利さんは、緊張した様子で部室の中に入り、椅子に座る。
 僕は、彼女の前に入部届を置くために近づいた。
「ひっ…」
 甘利さんは僕から少し遠ざかるように体を斜めにした。

 嫌われてるのかな…?
 あれは、ナンパじゃあないって誤解は解けているはずだが…。

 僕が離れると、甘利さんはゆっくりと入部届を書いた。
 それを毛利さんが手に取って、僕のところにやってきて手渡してくれた。

「でも、なんで、入部しようと思ったの? 文学部と歴史研って、文科系の部活という以外は、あまり共通点ないじゃん?」
 上杉先輩が尋ねた。

「あ、あの…」
 甘利さんはうつむきながら恥ずかしそうに話し始めた。
「図書室で見かけて、とても素敵だなって…」

 ”素敵”って…、僕のこと?

 甘利さんは話を続ける。
「優しいし…」

 僕は、優しいよなぁ。
 そういう噂が校内で流れているのだろうな。

「それに、いろいろ教えてくれるし…」

 おや?
 何か甘利さんに教えたことがあったっけ?

「毛利先輩が」

 ああ…。
 毛利さんのことか…、最初からそうだと思ってたよ。

「本のこととかも、いろいろ教えてくれるっていうから…、だから、入ってもいいかなって」

 上杉先輩が感心したように言う。
「そっか、毛利ちゃん、お手柄だね」

 まったくその通り。
 今日、一日で2人も新入部員が入って、とても良い日となったな。
 これで、上杉先輩にシバかれることもないだろう。

 その後、毛利さんと甘利さんは仲良く会話を楽しんでいる。
 ほかの部員もこれまで通り団らんしていた。
 僕は、部室に男1人(いや、支倉君も男か…)で、誰とも話をすることもなく、女子たちの様子を眺めたり、スマホをいじったりして時間をつぶしていた。

 女子たちの会話が弾んで、あっという間に下校の時間が近づいたころ、また、部室の扉が開いた。
 皆がそちらに注目する。
 そこには、歴史研の顧問である島津先生が立っていた。

 島津先生は、部室の中の人数に少々驚いた様子で、ひとりひとりの顔を確認するように見る。
 そして、僕に向かっていった。
「ハーレム?」

「はい! そうです!」
 間髪容れずに、西園寺さんが答えた。

「いや! 違うだろ!」
 僕は否定する。
「先生、違いますからね!」

 島津先生は少々あきれるように言う。
「武田君の病気が出たのかと思ったわ」

「病気って何ですか?」
 僕は尋ねた。

「女子と一緒にいないと死ぬ病気よ」

「そんな病気は持ってません」
 僕は話題を変えたくて、さっき真田さんと甘利さんに書いてもらった入部届を島津先生に見えるように、胸の高さぐらいまで上げて見せてから言う。
「さっき、2人も新入部員が入ってくれました!」

「あら…、そう。よかったわね」
 島津先生はあまり興味なさそうに答えた。

 なんで興味なさそうなの?
 島津先生は歴史研の顧問でもあるよね?

「それより」
 島津先生は改めて口を開いた。
「武田君の罰が決まったわ」

「はあ? 罰って何ですか?」

「忘れたの? 修学旅行の時に女子の部屋に忍び込もうとした罰よ」

 そんなこと言ってたな。
 反省文以外になにか罰を考えるって…、すっかり忘れてたよ。

「へー、女子の部屋に忍び込もうとしたんだ」
 上杉先輩が軽蔑するように言う。

「さすが、武田先輩!」
 なぜか称賛する西園寺さん。

「罰の内容は…」
 島津先生はもったいぶるようにする。
 そして、笑みを浮かべて言った。
「卓球部に入部してもらいます!」

「ええーーっ!!」

 一転、悪い日となった。
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