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第5話
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フンツェルマンは大聖堂を去った後、街中を少し移動して職業紹介所へやって来た。
エレーヌが殺害され、今後、ニコルにも身の危険が及ぶ可能性があり、新たにボディガードを雇う必要があると考えたからだ。馭者のジャカールも少しは剣の経験があったがエレーヌと共に殺害されてしまった。
警察が屋敷の周りを警備してくれいてるが、念のための措置だ。
フンツェルマンが目指した職業紹介所は、主に退役した兵士向けに職業を紹介している。以前、ジャカールを雇用した時もここへやって来た。今回もここを訪れた理由は、剣で腕の立つ者を雇いたいと思ったからだ。
職業紹介所の建物のあたりには、職探しをしているのであろう人々がたむろしていた。少し前に、ザーバーランド王国との戦争が終わって、徴兵されていた兵士が街に戻り始めている影響もその人数は多いようだった。以前来た時は、これほどの人はいなかった。
国は元兵士には優先的に職を紹介している。これは元兵士たちに不満を持たれないようにするためだ。彼らに不満を持たれると将来の有事の際、残っている他の兵士たちの士気にも関わる。
そもそも失業者が多くなることは治安悪化など国民全体にも悪い影響がある。それもあって、最近では国は公共事業を進めることにより失業者の吸収を図っているようだ。少々、無駄な事業も多いと感じるが。ここでは国の仕事の紹介以外にも、商店や金持ちの個人などからの仕事の案件も多く扱われている。また、仕事を探している者の中には、賞金稼ぎのような輩も出入りしている。
フンツェルマンは馬を紹介所の前にある馬留に手綱を括り付け、紹介所の中に入った。中も結構な人であふれていた。みすぼらしい姿の男たちがほとんどで、身なりが整ったフンツェルマンは目立ってしまった。人々からの視線が集まる。
フンツェルマンはその視線を気にしないように努めながら、建物の廊下を奥へ進む。彼はボディーガードを雇いたくて来ているので、失業者たちが並ぶ窓口とは、別の部屋にある窓口を訪れる。こちらには、人はほとんど並んでいなかったので、すぐに順番が回っていた。
窓口の前に立つと、向こう側にいた女性が対応するため近づいてきた。
「こんにちは…。あら、確かあなたは、フンツェルマンさん。アレオン家の執事でしたっけ? ご無沙汰ですね」
数年前、馭者を雇いたくて来た時に対応してくれた同じ女性だった。よく覚えていたなと少々驚いたが、そのような素振りを見せずにフンツェルマンは軽く会釈して答えた。
「はい、そうです。また人を雇いたいと思っておりまして」
「これはこれは、今日はどのような人物をお探しですか?」
「実は、ボディーガードを雇いたいと思っております」
「なるほど。何か細かい条件はございますか?」
「できるだけ腕の立つ女性の剣士が居ればと雇いたいと思います」
「女性ですか?」
「はい。次女ニコル様のボディーガードで屋敷内でも、常に付きっ切りになってほしいのです、なので女性をと」
「なるほど…。女性の元兵士は少ないです。それに剣士というとごくわずかですね」
「難しいですか?」
「いえ。逆に希望者はすぐに見つかるかもしれません。女性の元兵士向けの仕事はほとんどないですから」
「とりあえず、掲示板に掲載したいので、報酬や条件、アレオン家の場所などを細かくここに記載してください」
そう言って女性は記入用紙を手渡した。フンツェルマンはそれを受け取り、必要事項をどんどん書き込んでいく。書き終えると用紙を女性に返した。女性は書かれた内容をよく読んで確認する。
「いい報酬ですね。すぐに希望者が見つかるでしょう。早速、これを掲示板に掲載しておきます。希望者は直接屋敷に行くようにすることでよろしいですね?」
「はい、それで構いません。よろしくお願いします」
「そう言えば、以前紹介した馭者はうまくやってますか?」
「実は、昨日殺害されてしまいまた」
「ええっ!」 女性は驚いて目を見開いた。「何があったのですか?」
「何者かに襲撃を受けたようです。その時、エレーヌ様も殺されてしまいました。現在、警察が捜査をしています」
「何ということでしょう」。女性は口に手を当てて言った。「お気の毒に、お悔やみ申し上げます」
「ありがとうございます。こういうことがあったので、ボディーガードを雇おうと思ったのです」。フンツェルマンは再び会釈する。「では、失礼します」。
フンツェルマンは窓口を後にした。
エレーヌが殺害され、今後、ニコルにも身の危険が及ぶ可能性があり、新たにボディガードを雇う必要があると考えたからだ。馭者のジャカールも少しは剣の経験があったがエレーヌと共に殺害されてしまった。
警察が屋敷の周りを警備してくれいてるが、念のための措置だ。
フンツェルマンが目指した職業紹介所は、主に退役した兵士向けに職業を紹介している。以前、ジャカールを雇用した時もここへやって来た。今回もここを訪れた理由は、剣で腕の立つ者を雇いたいと思ったからだ。
職業紹介所の建物のあたりには、職探しをしているのであろう人々がたむろしていた。少し前に、ザーバーランド王国との戦争が終わって、徴兵されていた兵士が街に戻り始めている影響もその人数は多いようだった。以前来た時は、これほどの人はいなかった。
国は元兵士には優先的に職を紹介している。これは元兵士たちに不満を持たれないようにするためだ。彼らに不満を持たれると将来の有事の際、残っている他の兵士たちの士気にも関わる。
そもそも失業者が多くなることは治安悪化など国民全体にも悪い影響がある。それもあって、最近では国は公共事業を進めることにより失業者の吸収を図っているようだ。少々、無駄な事業も多いと感じるが。ここでは国の仕事の紹介以外にも、商店や金持ちの個人などからの仕事の案件も多く扱われている。また、仕事を探している者の中には、賞金稼ぎのような輩も出入りしている。
フンツェルマンは馬を紹介所の前にある馬留に手綱を括り付け、紹介所の中に入った。中も結構な人であふれていた。みすぼらしい姿の男たちがほとんどで、身なりが整ったフンツェルマンは目立ってしまった。人々からの視線が集まる。
フンツェルマンはその視線を気にしないように努めながら、建物の廊下を奥へ進む。彼はボディーガードを雇いたくて来ているので、失業者たちが並ぶ窓口とは、別の部屋にある窓口を訪れる。こちらには、人はほとんど並んでいなかったので、すぐに順番が回っていた。
窓口の前に立つと、向こう側にいた女性が対応するため近づいてきた。
「こんにちは…。あら、確かあなたは、フンツェルマンさん。アレオン家の執事でしたっけ? ご無沙汰ですね」
数年前、馭者を雇いたくて来た時に対応してくれた同じ女性だった。よく覚えていたなと少々驚いたが、そのような素振りを見せずにフンツェルマンは軽く会釈して答えた。
「はい、そうです。また人を雇いたいと思っておりまして」
「これはこれは、今日はどのような人物をお探しですか?」
「実は、ボディーガードを雇いたいと思っております」
「なるほど。何か細かい条件はございますか?」
「できるだけ腕の立つ女性の剣士が居ればと雇いたいと思います」
「女性ですか?」
「はい。次女ニコル様のボディーガードで屋敷内でも、常に付きっ切りになってほしいのです、なので女性をと」
「なるほど…。女性の元兵士は少ないです。それに剣士というとごくわずかですね」
「難しいですか?」
「いえ。逆に希望者はすぐに見つかるかもしれません。女性の元兵士向けの仕事はほとんどないですから」
「とりあえず、掲示板に掲載したいので、報酬や条件、アレオン家の場所などを細かくここに記載してください」
そう言って女性は記入用紙を手渡した。フンツェルマンはそれを受け取り、必要事項をどんどん書き込んでいく。書き終えると用紙を女性に返した。女性は書かれた内容をよく読んで確認する。
「いい報酬ですね。すぐに希望者が見つかるでしょう。早速、これを掲示板に掲載しておきます。希望者は直接屋敷に行くようにすることでよろしいですね?」
「はい、それで構いません。よろしくお願いします」
「そう言えば、以前紹介した馭者はうまくやってますか?」
「実は、昨日殺害されてしまいまた」
「ええっ!」 女性は驚いて目を見開いた。「何があったのですか?」
「何者かに襲撃を受けたようです。その時、エレーヌ様も殺されてしまいました。現在、警察が捜査をしています」
「何ということでしょう」。女性は口に手を当てて言った。「お気の毒に、お悔やみ申し上げます」
「ありがとうございます。こういうことがあったので、ボディーガードを雇おうと思ったのです」。フンツェルマンは再び会釈する。「では、失礼します」。
フンツェルマンは窓口を後にした。
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