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第19話
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ラバールは早朝、アレオン家の屋敷から警察署まで戻って来ていた。
バルバストルから、執事のフンツェルマン、メイドのジータとルイーズ、用心棒のジョアンヌ、エレーヌの婚約者であるジャン=ポール・マルセルの経歴を洗えと言われている。
用心棒のジョアンヌは元軍人だから、軍に問い合わせればある程度の資料は集まるだろう。執事とメイドの二人は、おそらくどこにも資料はないだろうから、本人たちに改めて話を聞き、何か不審なところが無いか確かめる必要がある。
ジャン=ポールは、名門マルセル家の一員なので、不審なところは無さそうだが念のために調査する。しかし、本人は現在この街にはいない。どうやって調査するか頭を悩ませる。
ラバールは、朝一番でやって来た部下に指示を出して、軍からジョアンヌの情報を入手するように指示した。その後、ラバールは椅子に座って溜まっている別の事件の資料を読む。しかし、昨夜は一晩中アレオン家の屋敷前に居て眠っていなかったので、いつの間にかそのまま眠ってしまっていた。
「ラバール警部。ラバール警部」
呼び声にラバールはハッとして起きた。目の前には部下が立っていた。
「うん……? ああ、眠ってしまっていたね」
「自宅には戻られなかったんですか?」
「朝、アレオン家の屋敷から戻ってきて、そのままだよ」。ラバールは伸びをする。「今、何時だい?」
「十二時を過ぎたところです」。部下は話を続けた。「それで、国家保安局の者が来てますが」
「ああ、そうなんだ。今、行くよ」
ラバールはボサボサの頭を掻きながら立ち上がった。
部屋の入り口で待っていた保安局員は、バルバストル同様整った服装だった。ラバールは始めて見る顔だった。彼はラバールの姿を見ると切りだした。
「警部、エレーヌ・アレオンを襲った男の遺体が見つかりました」
「ええっ?! 本当ですか? どこに?」
「屋敷からさほど遠くない雑木林の中です」
「案内してもらえますか?」
ラバールはコートを取りに一旦、自分の机のところに行く。コートを手に再び保安局員の元へと戻った。そして、別の警官も二名呼びつける。ラバールたちと保安局員の一行は警察の馬車で男の遺体があったという雑木林に向かう。
通りで馬車を止めるとラバールと警官たちは保安局員の先導で雑木林の中へ入っていく。
入ってすぐのところに、数名の警官とバルバストルと保安局員が居るのが見えた。彼らのそばには、木にもたれ掛かるようにして座って動かくなっている遺体らしきものがあった。それは口髭を生やした男で、茶色いローブを被っていた。
「バルバストルさん」
ラバールは声を掛けた。
「やあ、ラバール警部」
「これが襲撃犯ですか?」
ラバールは遺体をもう一度見た。ローブから赤黒いシミが大きく広がっている。出血によるもののようだ。ラバールはしゃがみこんで、さらに遺体の様子を確認した。左側の額から顔にかけて大量の血が付いているのもわかった。地面にも血が広がっているのがわかる。
「遺体の腹部と足の太腿に刺された痕、頭には殴られた痕があります。これは、エレーヌ様が火かき棒で刺し、殴ったと言っていたものと合致します。それに最初に通りでエレーヌ様を襲撃した犯人の人相と特徴に一致しますので、こいつが一連の襲撃犯で間違いないでしょう」
ラバールは改めて遺体を見た。
「なるほど、どうやらそのようですね。死因はおそらく、出血多量でしょうか」
「それに、あれもありました」
バルバストルは、そう言うと少し離れた地面を指さした。ラバールがその先を見ると、昨晩見た、幾何学模様の書かれた丸い板と同じ物が落ちているのが見えた。
バルバストルは説明を続ける。
「例の板です。犯人は屋敷からここまで魔術で移動してきたのでしょう。ただ、屋敷で受けた傷が深く、ここで絶命したものと思われます」
「そのようですな」
「しかし、本当は犯人を生きて捕らえて、首謀者を吐かせたかったのですが、死んでしまっては今後の捜査が困難になりました」
バルバストルは遺体を見降ろして沈んだ声で言った。
ラバールも腕を組み、「うーん」と唸ったあと、うつむいて考え込んだ。しばらく考えた後、ラバールは尋ねた。
「この遺体を発見したのは誰ですか」
「こちらの者です」
バルバストルは局員の一人を指さした。
「良く発見できましたね」
遺体を発見したという局員は答えた。
「私は今日は馬車の馭者役をしていたのですが、馬車の高い位置からだと、通り沿いの茂みの向こう側が見通せたのです。事件以降、この通りは何度も通っておりますから、今朝は昨日まで見なかった茶色い物が見えたので不審に思い調べました」
「すると、この遺体だったというわけですな」
「そうです」
「なるほど、ありがとうございます」。次に、ラバールはバルバストルに向き直って質問した。「遺体は警察で一旦預かってもよろしいですか?」
「構いません。こちらはこれだけもらって行きます」。バルバストルはそう言うと身をかがめて、例の幾何学模様の板を地面からつまみ上げた。「一旦、局へ戻ります。実は朝一で局に戻ったあとすぐにこの遺体の件があったので、全然眠れていないのですよ。なので、休んでからアレオン家の屋敷に行くことにします。おそらく、夕方以降になると思いますが」
「そうですか、ゆっくり休んでください。では、あとは任せてください」
ラバールは警官たちに遺体を運ぶように指示を出した。バルバストルはその作業を最初の少しだけ見て、局員たちを引き連れてその場を去って行った。
バルバストルから、執事のフンツェルマン、メイドのジータとルイーズ、用心棒のジョアンヌ、エレーヌの婚約者であるジャン=ポール・マルセルの経歴を洗えと言われている。
用心棒のジョアンヌは元軍人だから、軍に問い合わせればある程度の資料は集まるだろう。執事とメイドの二人は、おそらくどこにも資料はないだろうから、本人たちに改めて話を聞き、何か不審なところが無いか確かめる必要がある。
ジャン=ポールは、名門マルセル家の一員なので、不審なところは無さそうだが念のために調査する。しかし、本人は現在この街にはいない。どうやって調査するか頭を悩ませる。
ラバールは、朝一番でやって来た部下に指示を出して、軍からジョアンヌの情報を入手するように指示した。その後、ラバールは椅子に座って溜まっている別の事件の資料を読む。しかし、昨夜は一晩中アレオン家の屋敷前に居て眠っていなかったので、いつの間にかそのまま眠ってしまっていた。
「ラバール警部。ラバール警部」
呼び声にラバールはハッとして起きた。目の前には部下が立っていた。
「うん……? ああ、眠ってしまっていたね」
「自宅には戻られなかったんですか?」
「朝、アレオン家の屋敷から戻ってきて、そのままだよ」。ラバールは伸びをする。「今、何時だい?」
「十二時を過ぎたところです」。部下は話を続けた。「それで、国家保安局の者が来てますが」
「ああ、そうなんだ。今、行くよ」
ラバールはボサボサの頭を掻きながら立ち上がった。
部屋の入り口で待っていた保安局員は、バルバストル同様整った服装だった。ラバールは始めて見る顔だった。彼はラバールの姿を見ると切りだした。
「警部、エレーヌ・アレオンを襲った男の遺体が見つかりました」
「ええっ?! 本当ですか? どこに?」
「屋敷からさほど遠くない雑木林の中です」
「案内してもらえますか?」
ラバールはコートを取りに一旦、自分の机のところに行く。コートを手に再び保安局員の元へと戻った。そして、別の警官も二名呼びつける。ラバールたちと保安局員の一行は警察の馬車で男の遺体があったという雑木林に向かう。
通りで馬車を止めるとラバールと警官たちは保安局員の先導で雑木林の中へ入っていく。
入ってすぐのところに、数名の警官とバルバストルと保安局員が居るのが見えた。彼らのそばには、木にもたれ掛かるようにして座って動かくなっている遺体らしきものがあった。それは口髭を生やした男で、茶色いローブを被っていた。
「バルバストルさん」
ラバールは声を掛けた。
「やあ、ラバール警部」
「これが襲撃犯ですか?」
ラバールは遺体をもう一度見た。ローブから赤黒いシミが大きく広がっている。出血によるもののようだ。ラバールはしゃがみこんで、さらに遺体の様子を確認した。左側の額から顔にかけて大量の血が付いているのもわかった。地面にも血が広がっているのがわかる。
「遺体の腹部と足の太腿に刺された痕、頭には殴られた痕があります。これは、エレーヌ様が火かき棒で刺し、殴ったと言っていたものと合致します。それに最初に通りでエレーヌ様を襲撃した犯人の人相と特徴に一致しますので、こいつが一連の襲撃犯で間違いないでしょう」
ラバールは改めて遺体を見た。
「なるほど、どうやらそのようですね。死因はおそらく、出血多量でしょうか」
「それに、あれもありました」
バルバストルは、そう言うと少し離れた地面を指さした。ラバールがその先を見ると、昨晩見た、幾何学模様の書かれた丸い板と同じ物が落ちているのが見えた。
バルバストルは説明を続ける。
「例の板です。犯人は屋敷からここまで魔術で移動してきたのでしょう。ただ、屋敷で受けた傷が深く、ここで絶命したものと思われます」
「そのようですな」
「しかし、本当は犯人を生きて捕らえて、首謀者を吐かせたかったのですが、死んでしまっては今後の捜査が困難になりました」
バルバストルは遺体を見降ろして沈んだ声で言った。
ラバールも腕を組み、「うーん」と唸ったあと、うつむいて考え込んだ。しばらく考えた後、ラバールは尋ねた。
「この遺体を発見したのは誰ですか」
「こちらの者です」
バルバストルは局員の一人を指さした。
「良く発見できましたね」
遺体を発見したという局員は答えた。
「私は今日は馬車の馭者役をしていたのですが、馬車の高い位置からだと、通り沿いの茂みの向こう側が見通せたのです。事件以降、この通りは何度も通っておりますから、今朝は昨日まで見なかった茶色い物が見えたので不審に思い調べました」
「すると、この遺体だったというわけですな」
「そうです」
「なるほど、ありがとうございます」。次に、ラバールはバルバストルに向き直って質問した。「遺体は警察で一旦預かってもよろしいですか?」
「構いません。こちらはこれだけもらって行きます」。バルバストルはそう言うと身をかがめて、例の幾何学模様の板を地面からつまみ上げた。「一旦、局へ戻ります。実は朝一で局に戻ったあとすぐにこの遺体の件があったので、全然眠れていないのですよ。なので、休んでからアレオン家の屋敷に行くことにします。おそらく、夕方以降になると思いますが」
「そうですか、ゆっくり休んでください。では、あとは任せてください」
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