エレーヌを殺したのは誰だ?

谷島修一

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第38話

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 ジョアンヌ、エレーヌ、トリベールは城壁の階段を小走りで降りて、外へと続く門の前へ進む。
 その後にボネが続き、門の前に着くと叫ぶ。
「門を開けろ!」
 その指示に兵士たちが従い、急いで門を開けた。
 大きな門扉が両側に開くのを待って、ジョアンヌたちはゆっくりと門の外に歩み出る。 
「よし」
 と、ジョアンヌは気合を入れるように言って、前に出た。 
 一方のエレーヌも歩み出る。彼女は無言だが、かすかにほほ笑んでいるようにも見えた。そして、ジョアンヌとエレーヌは、ゆっくりを剣を抜く。
 トリベールも不安そうに二人の後について行く。
 三人の目には、正面からザーバーランド軍の松明の群れが近づいてくるのが見えた。
 しかし、橋の反対側に着くまでは、もうしばらく時間がかかりそうな距離だ。

 ボネはジョアンヌたちが外を出たのを確認すると、今度は静かに兵士に命令した。
「よし、門を閉めろ」
 バルバストル、ラバール、ティエールも門のところまで降りてきた。そして、ラバールは門が閉まるのを見て言う。
「三人を締め出すんですか?!」
「そうだ」
「たった三人であの軍勢を止められると思うんですか?」
「思わん」
「だったら、残りの兵士たちも戦闘に参加させては?!」
 ラバールが叫ぶのを、ボネは制止した。
「あの三人が志願したんだ。望みどおりにしてやっただけだ」
「無茶苦茶ですね」
 ティエールが吐き捨てるように言った。
 ボネはそれに気にせずに近くの下士官に新しい命令を出す。
「しばらくは弓兵と魔術師で敵を牽制させろ、それ以外の兵士は撤退の準備を」
 それを聞いてラバール再び叫ぶ。
「あまりにひどい!」
 ボネは落ち着いた様子で、ラバールの前に立って話す。
「ここにいる二百の兵で、あの数の軍勢を止めることはできない。我々が三人にしてやれるのは、弓と魔術での支援をしてやるぐらいだ」 ボネは門の外を指さした、そして続ける。「そして、今、私がやらなければいけないのは、兵士たちを脱出させ、本隊と合流した後、再びここに戻って、ザーバーランド軍を追い払うことだと考えている」
 バルバストルも続けて言う。
「我々も早くこの街を去った方がいいな」
「しかし!」
 バルバストルは落ち着いた様子でラバールを制するように続ける。
「あの三人が居ても居なくても、ここはそう長くは持たないだろう」
 バルバストルは馬車の置いてある方に歩き出した。
 ラバールも大きなため息をついた後、ティエールと一緒にその後に続く。
 バルバストルは馬車乗り込むと、馭者に命令する。
「街から出て、本隊のいる駐屯地の方へ」
 ラバールも馬車に乗り込む寸前、ティエールはラバールに話しかける。
「私は、打ち合わせの通りにやりたいと思います」
「大丈夫なのか、だいぶ状況が変わって来ているが」
「あの三人の状況も確認したいですし」
「わかった。十分に気を付けてくれ」
「急げ!」
 バルバストルはラバールとティエールに馬車の中から声を掛けた。
 ラバールだけが馬車に乗り込んだ。
 バルバストルは尋ねる。
「彼は、いいのか?」
「ええ、彼は宿屋に置いてある荷物を取ってから逃げます」
 ラバールは答えた。
 馬車はゆっくりと砦を出て、街の中を通る。
 不安そうにしている住民たちが、窓の外や扉を開けて覗いている様子は、先ほどと変わらない。
 ラバールは馬車の中からその様子を見て、ぽつりと言った。
「住民はどうなるんでしょうね」
「ザーバーランドに占領されたとしても、奴らは略奪は行わないだろう。戦争中ににザーバーランドが略奪を行った例はない。よく統率が取れている」
「そうですか…」
「ゆえに、戦争では強敵だった」
 バルバトスとラバールの乗った馬車は、街の真ん中を通り抜け街の反対側から脱出した。

 ザーバーランド軍が橋の反対側に到着した。
 すると、ザーバーランド軍の兵士たちの持つ松明が地面に捨てられ、あたりが闇に包まれる。
 城壁の上から弓兵と魔術師が攻撃を開始する。しかし、弓兵も魔術師の数もそんなに多くはないので大した損害は与えられないだろう。
 魔術師の放つ火の玉があたりを照らし、かろうじてザーバーランド軍の状況を見て取るができた。
 ザーバーランド軍からは魔術などの反撃はない。
 さらに、しばらく経って城壁の上からの攻撃が止んだ。
 それを待っていたように、暗闇の中、ザーバーランド軍の一部が動き出し、橋に近づいてきたようだった。
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