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軍法会議
判決
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大陸歴1658年5月15日・帝国首都アリーグラード
裁判長が立ち上がり話す。
「これより判事達と協議に入ります。しばらく休廷」。
裁判長と判事の四人は法廷代わりの会議室を出て行った。残りの者も三々五々部屋を出て行く。
私と弁護人のムラブイェフは用意された別室で話し合っていた。
「上手くいきました。クリーガー隊長が私の言う通りにしてくれたおかげです。あとは判決を待つだけです」。
彼の組み立てた通りに軍法会議は進んだ。最初は頼りない感じの印象だったが、実際は腕の良い弁護人だ。人を見た眼の印象で判断するのは良くないという良い例だと思った。
「ありがとうございました」。
私は礼を言った。
「お礼は、無罪を勝ち取ってからですね。以前の軍法会議で何度か弁護人をしたことがありますが、大抵の軍人は自分の自尊心が邪魔をして、私の言うとりにしてくれないことが多いです。さらには、あなたには重大な決断をしてもらいました。その決断が無ければ、この筋書きも無駄になるところでした」。
「私も命が惜しいですから」。
「あなたは本当に軍人ぽくないですね。そうですね、学者みたいです、悪い意味ではありませんよ」。
「そうですか?」
「大抵の軍人は“命は惜しくない”というようなことを言いますよ」。
確かに、私はそういう風にはさほど思わない。
その後、しばらく待ち、時間になったので私とムラブイェフは法廷に戻った。我々が席に着くと続けて裁判長、判事、検事、書記官が入室してきた。さらに遅れて皇帝と護衛のヴァーシャ、親衛隊員二人も入室してきた。
判事は、全員が着席したのを確認したあと判決を述べ始めた。
「これより開廷します。判決を言い渡す前に動議があれば申し出てください。検事側はどうですか?」
検事のクラコフは立ち上がった。
「検事側は動議はありません」。
次に判事は弁護側に目をやった。
「弁護側は?」
弁護人ムラブイェフは立ち上がって言った。
「ありません」。
それを聞くと裁判長のクレスチンスキーはゆっくりと話しだした。
「それでは、判決を言い渡します。ユルゲン・クリーガー被告。命令違反、文章偽造および帝国に対する国家反逆罪について、有罪。クリーガーが投降した際、ルツコイには反乱分子とのつながりがあるという話をしていたということは間違いなく、その内容が事実であり、裁判での証言は虚偽であると。そして、明らかに反逆の意志があったという風に判断しました」。
ムラブイェフは、それを聞いてため息をついた。
私は、予想どおりの判決だったので、何も思うところはなかった。
裁判長は続ける。
「刑の執行は追って知らせる」。
私とムラブイェフは部屋を退出した。
「力になれず申し訳ありませんでした」。
ムラブイェフは神妙な面持ち謝罪した。
私は、無罪に微かな期待はしていたものの、この判決についてはある程度予想をしていたこともあって、特に悲観的な感情にはなっていなかった。
私はしばらく考えた後、こう答えた。
「いえ、よくやっていただきました。ありがとうございます。裁判自体も公正なものだったと思います」。
私は最後にもう一度ムラブイェフに頭を下げ、私は部屋の外で待ち構えていた衛兵たちに連れられて、牢屋に戻る。
ムラブイェフは私の後姿を見届けていた。
裁判長が立ち上がり話す。
「これより判事達と協議に入ります。しばらく休廷」。
裁判長と判事の四人は法廷代わりの会議室を出て行った。残りの者も三々五々部屋を出て行く。
私と弁護人のムラブイェフは用意された別室で話し合っていた。
「上手くいきました。クリーガー隊長が私の言う通りにしてくれたおかげです。あとは判決を待つだけです」。
彼の組み立てた通りに軍法会議は進んだ。最初は頼りない感じの印象だったが、実際は腕の良い弁護人だ。人を見た眼の印象で判断するのは良くないという良い例だと思った。
「ありがとうございました」。
私は礼を言った。
「お礼は、無罪を勝ち取ってからですね。以前の軍法会議で何度か弁護人をしたことがありますが、大抵の軍人は自分の自尊心が邪魔をして、私の言うとりにしてくれないことが多いです。さらには、あなたには重大な決断をしてもらいました。その決断が無ければ、この筋書きも無駄になるところでした」。
「私も命が惜しいですから」。
「あなたは本当に軍人ぽくないですね。そうですね、学者みたいです、悪い意味ではありませんよ」。
「そうですか?」
「大抵の軍人は“命は惜しくない”というようなことを言いますよ」。
確かに、私はそういう風にはさほど思わない。
その後、しばらく待ち、時間になったので私とムラブイェフは法廷に戻った。我々が席に着くと続けて裁判長、判事、検事、書記官が入室してきた。さらに遅れて皇帝と護衛のヴァーシャ、親衛隊員二人も入室してきた。
判事は、全員が着席したのを確認したあと判決を述べ始めた。
「これより開廷します。判決を言い渡す前に動議があれば申し出てください。検事側はどうですか?」
検事のクラコフは立ち上がった。
「検事側は動議はありません」。
次に判事は弁護側に目をやった。
「弁護側は?」
弁護人ムラブイェフは立ち上がって言った。
「ありません」。
それを聞くと裁判長のクレスチンスキーはゆっくりと話しだした。
「それでは、判決を言い渡します。ユルゲン・クリーガー被告。命令違反、文章偽造および帝国に対する国家反逆罪について、有罪。クリーガーが投降した際、ルツコイには反乱分子とのつながりがあるという話をしていたということは間違いなく、その内容が事実であり、裁判での証言は虚偽であると。そして、明らかに反逆の意志があったという風に判断しました」。
ムラブイェフは、それを聞いてため息をついた。
私は、予想どおりの判決だったので、何も思うところはなかった。
裁判長は続ける。
「刑の執行は追って知らせる」。
私とムラブイェフは部屋を退出した。
「力になれず申し訳ありませんでした」。
ムラブイェフは神妙な面持ち謝罪した。
私は、無罪に微かな期待はしていたものの、この判決についてはある程度予想をしていたこともあって、特に悲観的な感情にはなっていなかった。
私はしばらく考えた後、こう答えた。
「いえ、よくやっていただきました。ありがとうございます。裁判自体も公正なものだったと思います」。
私は最後にもう一度ムラブイェフに頭を下げ、私は部屋の外で待ち構えていた衛兵たちに連れられて、牢屋に戻る。
ムラブイェフは私の後姿を見届けていた。
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