傭兵部隊の任務報告4~王女と義賊

谷島修一

文字の大きさ
8 / 17

第7話・ザービンコワの依頼

しおりを挟む
 その後、現金輸送馬車で襲撃されてから約一か月が経った。私の傷もなんとか癒えて、通常の任務に戻れるようになった。
 警察は似顔絵を手掛かりにズーデハーフェンシュタットで襲撃犯を指名手配としているが、見つかっていない。また、軍が近隣の町や村でも捜索に入っているようだが、今のところ手掛かりは無いとのことだった。

 私が襲われた事件以降に、二度、現金輸送馬車を首都に向けて出発させたが、それらは襲撃されることなく無事だったということだ。
 
 今日は、私と傭兵部隊は軍と合同で街中の巡回を行った。夕刻、城の中庭に戻って来て部隊を解散させると、ザービンコワが待ち構えているのが見えた。
 こういう時、彼女は私に何か用がある時だ。今日は怒っていないようだが。私は彼女に歩み寄って声を掛ける。
「何か御用でしょうか?」
「メリナの事で相談があって」
「はい」
「彼女をいつまでも軍の医務室で面倒を見るのは彼女の為にも良くないのではと考えて、ルツコイ司令官と相談したのだけど、彼女を別の場所に移そうということになったのよ。具体的に言うと孤児院に送って、そこで生活をしてもらおうと思っています。それで、あなた、孤児院の出身だったでしょう?」
「そうです」
「それで、あなたにお願いしたほうが早いと思って」
「何がでしょうか?」
「孤児院のことよ。あなたが居た孤児院にメリナを連れて行って話をして来て欲しいのよ」
「私が?」
「なにか問題が?」
「いえ、ありません」

 私は、両親を早くに亡くし六歳から身寄りがなかったので孤児院に預けられていた。十三歳の時、“師”であったセバスティアン・ウォルターに見出されるまで、そこで生活をしていた。
 しかし、私が孤児院に居たとはいえ、そこを去ってからは近くを通ることはあっても、実際に一度も訪問することがもう無かった。孤児院を去ってから、もう二十年が経つ。先生たちも私が知っている人が残っているかどうか。

 相変わらずザービンコワは、強引な人だ。しかし、いい機会なので久しぶりに孤児院を訪問してみようと思い、彼女の依頼を承諾した。
「では、明日の朝一番に医務室まで、彼女を迎えに来てくれる?ルツコイ司令官には言っておきます」
「わかりました」
 私は答えて彼女と別れようと背を向けると、彼女は追加で声を掛けてきた。

「ねえ、ちょっと待って」
 私は振り返った。
「はい?」
「よかったら、近いうちに、また “ミーラブリーザ”に行かない?」
 “ミーラブリーザ” は、以前、休みの時に二人で何度か行ったことのあるカフェだ。最初は私が案内したのだが、彼女は甚《いた》くお気に入りのようだった。
「ええ、構いませんよ」
 私は微笑んで答えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

追放勇者の土壌改良は万物進化の神スキル!女神に溺愛され悪役令嬢と最強国家を築く

黒崎隼人
ファンタジー
勇者として召喚されたリオンに与えられたのは、外れスキル【土壌改良】。役立たずの烙印を押され、王国から追放されてしまう。時を同じくして、根も葉もない罪で断罪された「悪役令嬢」イザベラもまた、全てを失った。 しかし、辺境の地で死にかけたリオンは知る。自身のスキルが、実は物質の構造を根源から組み替え、万物を進化させる神の御業【万物改良】であったことを! 石ころを最高純度の魔石に、ただのクワを伝説級の戦斧に、荒れ地を豊かな楽園に――。 これは、理不尽に全てを奪われた男が、同じ傷を持つ気高き元悪役令嬢と出会い、過保護な女神様に見守られながら、無自覚に世界を改良し、自分たちだけの理想郷を創り上げ、やがて世界を救うに至る、壮大な逆転成り上がりファンタジー!

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...