6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく

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1章

29

それにしても、そこまであからさまに態度に出てしまっていたのだろうか、と思わず自分の頰に触れるが、当然の如く表情は分からない。
 「……なん、でもない。だ、だいじょ、ぶ……だか、ら」
「そうですか?……それならいいんですけど……何かあったらすぐに言ってくださいね?なんでも相談にのりますし、具合が悪ければノア先生を呼んできますから」
リュカはそう言うと、医務室のある方向に視線を向けて、またこちらを見た。
なんだか気を使わせてしまったみたいだ。俺はこくりと小さく頷いたけれど、話せることなんてないし、そもそも相談するような事じゃないだろう。リュカはどこか釈然としない様子だったが、大人しく頷いた俺を見てそっと口元を緩めて視線を前に戻した。俺もそれに合わせるように視線を前に向ける。

ちょうどその時、風に乗って甘い焼き菓子の匂いがした。どうやら目的地まであと少しのようだ。
「あっ!今お菓子の匂いがしたね!……へへ、良い匂いがしたからお腹すいてきちゃった……」
グゥ、と小さくお腹を鳴らしたフェリクス様が、こちらを見て頰を緩めながらそう言った。
「ふふ、フェリクスったら。……でも、本当にいい香りがするわ」
アベラ様はそう言ってから、俺の方を向いて優しく微笑むと、
「ジルベール様のおかげで今日はとても素敵なお茶会になりそうだわ。なにしろ初めて家族が揃ってのお茶会ですもの」
と言った。その言葉に俺はどう返していいか分からなくて、視線を落とす。こんな不敬な態度など、“前”は絶対にしなかったのにな、と自分自身を嘲笑してしまう。

そうしている間にも止まることなく目的地へと進み、庭の中心にある白いテーブルとチェアがあるところまで来て。

__正直に言うと、その後のことはよく覚えていない。気付けば俺はいつもの医務室に戻って来ていて、ノア先生の診察を受けていた。
ただあの時間、甘い焼き菓子の香りに包まれて、夢を見ていたような心地でいたことだけは、なんとなく覚えている。

「__ジルベール様、大丈夫ですか?」
「……え」
突然そう声をかけられて、俺はハッと我に返る。目の前にはノア先生がいて、俺の顔を覗き込んでいる。
「あ……すみ、ませ……だいじょ、ぶです」
「……今日は長い外出のようでしたし、お疲れでしょう。今回はこのくらいで終わりに致しますね」
「は、い……」

ノア先生は少し何か言いたげにしていたものの、俺が肯定を返すといつも通りの微笑みを浮かべて器具を片付け始めた。
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