6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく

文字の大きさ
46 / 108
2章

45



ノア先生も師匠も認めるような優秀な人がいるのだ。万が一があったとしても頼れる人はいると、そう知った上であいつはサロモンに気づかれるほどに落ち着きがないらしい。
真面目で心配性なリュカらしい。いくら俺らが大丈夫だと言ったところで、きっと変わらない。今までだってそうだったのだから、それは間違いないだろう。
そのくせ、いざと言う時にはこれまでの心配はなんだったのかと言いたくなるほど良い結果を導くのだから、もう少し自信を持てばいいのだけれど。
そう考えている間に、気が逸れていたのを気付かれたのだろう。第一王子殿下付きの先輩護衛から咎めるように名を呼ばれて、意識を外に戻した。

相変わらず第一王子殿下を先頭に歩いて行き一番大きな建物の中に入ると、やはり王宮と同じくらいの広くて王宮よりは簡素なエントランスに、またサロモンが小さく感嘆の声を上げた。

「ここが本校舎だよ。ちょうどお昼の時間だし、今日はとりあえず二階の食堂で何か食べてから他を見に行こう」
「ああ、そうだな。車椅子は持って行けるか?」
「もっ、持ちます!車椅子!」
「私も手伝います」
「ジルベール様は俺が。……ジル様、失礼致します」
第一王子殿下が背を向けた向こうには、二階に続く階段があり一段一段は高くないものの車椅子のままで行くのは無理だろう。そう判断してジル様を俺が車椅子から抱き上げ、残った車椅子をリュカとサロモンが持ち上げる。
前にジル様を車椅子に乗せたまま俺とリュカで左右から持ち上げたら、リュカが重さに耐えきれずに潰れたため、それ以降は車椅子とジル様を分けて運ぶようにしている。

二年前に比べたら肉付きは良くなっているとはいえ、それでもまだ細く成長期も来ていない小柄なジル様一人くらい持ち上げられなくては、俺が隣にいる先輩にどやされる。それに普段から車椅子を乗り降りするのに抱き上げることが多いからか、ジル様もこちらに身を委ねてくれて抱えやすい。
また、車椅子は折り畳めるような物でも、座り心地の悪い粗雑な物でもなく、シンプルだけど王族の方が座るに相応しいような見た目と座り心地を兼ね備えた物だ。一つ問題があるとすれば、その性能が座り心地の良さと見た目に全振りされていて、持ち上げるには少し重く、また持ちにくい。非力なあいつらでは階段の上まで運ぶのは二人がかりでやっとだろう。

そうして二階までなんとか辿り着いた頃には、俺たちの中で特に非力なサロモンが息を切らしていた。


感想 15

あなたにおすすめの小説

公爵家令息の想い人

なこ
BL
公爵家の次男リュシエルは、婚約者である王太子ランスロットに全てを捧げていた。 それは目に見える形の献身ではなく、陰日向に尽くす甲斐甲斐しいものだ。 学園にいる間は多くの者と交流を図りたいと言うランスロットの申し出でさえも、リュシエルは素直に受け入れた。 ランスロットは側近候補の宰相令息と騎士家系の令息、そして平民から伯爵家に養子縁組されたリオルに囲まれ、学園生活を満喫している。 彼等はいつも一緒だ。 笑いに溢れ、仲睦まじく、他者が入り込める隙間はない。 リュシエルは何度もランスロットに苦言を呈した。 もっと多くの者と交流を持つべきだと。初めにそう告げてきたのは、ランスロットではないかと。 だが、その苦言が彼等に届くことのないまま、時は流れ卒園を迎える。 学園の卒業と共に、リュシエルは本格的に王宮へと入り、間も無く婚姻がなされる予定だった。 卒業の式典が終わり、学生たちが初めて迎える公式な社交の場、卒業生やその親族達が集う中、リュシエルは誰にもエスコートされることなく、一人ポツンと彼等と対峙していた。 「リュシエル、其方との婚約解消を陛下も公爵家も、既に了承済みだ。」 ランスロットの言葉に、これまで一度も毅然とした態度を崩すことのなかったリュシエルは、信じられないと膝から崩れ落ちた。 思い付きで書き上げました。 全3話 他の連載途絶えている方も、ぼちぼち書き始める予定です 書くことに億劫になり、リハビリ的に思いつくまま書いたので、矛盾とか色々スルーして頂けるとありがたいです

転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜

メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。 ​「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」 ​平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

BLノベルの捨て駒になったからには

カギカッコ「」
BL
転生先は前世で妹から読まされたBLノベルの捨て駒だった。仕える主人命令である相手に毒を盛ったはいいものの、それがバレて全ての罪を被らされ獄中死するキャラ、それが僕シャーリーだ。ノベル通りに死にたくない僕はその元凶たる相手の坊ちゃまを避けようとしたんだけど、無理だった。だから仕方なく解毒知識を磨いて毒の盛られた皿を僕が食べてデッドエンドを回避しようとしたわけだけど、倒れた。しかしながら、その後から坊ちゃまの態度がおかしい。更には僕によって救われた相手も僕に会いにきて坊ちゃまと険悪そうで……。ノベル本来の受け担当キャラも登場し、周囲は賑やかに。はぁ、捨て駒だった僕は一体どこに向かうのか……。 これはこの先恋に発展するかもしれない青年たちのプロローグ。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。

兄の代わりに嫁いだら、結婚相手ではなく兄の婚約者だった公爵閣下に執着されました

なつめ
BL
名門伯爵家の次男である青年は、家の都合で本来嫁ぐはずだった兄の代わりに、遠方の名家へ“花婿”として送り込まれる。 屈辱的な身代わり婚のはずだった。冷遇され、義務だけ果たして静かに消える未来を覚悟していた。 けれど、彼を待っていたのは結婚相手その人ではなかった。 その男の隣には、かつて兄の婚約者だったという、美しく冷酷な公爵がいた。 弟をひと目見た瞬間、その公爵は気づいてしまう。 これは本来欲しかった相手ではない。なのに、目が離せない。 兄の代わりとして連れてこられたはずの弟へ、じわじわと執着を深めていく。 これは、祝福されるはずのない婚姻から始まる、 ねじれた執着と独占欲のBL。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。