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7巻
7-2
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リベリカに住む人々は、数日で普通に生活できるようになりました。
勇者たちはテントの中で話し合いを始めました。
膝を突き合わせてリベリカの現状を整理したあと、勇者は仲間たちに言いました。
「明日、俺たちの本来の仕事をしよう」
勇者の言葉に、仲間たちは頷きました。
それから勇者たちは魔王が去っていったという北の城へと向かいます。
その道中、たくさんの魔物たちが現れますが……。
速さに秀でた狼の魔物は賢者の魔法で切り抜け、力の強い熊の魔物は戦士の剛力で薙ぎ倒し、空を駆ける鳥の魔物は弓士が正確に射抜きます。
やがて、とうとう勇者たちは魔王の城へとたどり着きました。
城の中に入ると、その最奥で玉座に座る魔王が立ち上がり、口を開きます。
「クックック……よくここまでたどり着けたな」
勇者は剣を引き抜き、魔王に鋒を向けました。
「街の人たちにしたことは、許されることじゃない」
「だとしたらなんだ?」
「俺たちがお前を止める」
こうして、魔王との激しい戦いが幕を開けました。
魔王は闇魔法が得意。そしてその一種である影魔法は、大層強力でした。自在に形を変える影は時に鋭い槍に、時には強固な盾になり勇者たちを追い詰めます。
しかし、それより勇者を追い詰めたのは――
「この程度か? 勇者と言っても所詮は田舎の街で大きいイカを倒しただけのガキか」
「はぁ、はぁ……お前、俺の仲間に何をした!」
魔王は狡猾にも闇魔法で勇者の仲間の体を操り、勇者と戦わせたのです。
魔王の魔法に操られる仲間たちを、勇者は攻撃できません。
やがて勇者は、これまで何度も危機を救ってくれた戦士の剛腕によって倒されます。
もう殺されるのを待つのみ。意識が朦朧とし始めた勇者の耳に、聞いたことのない声が響きます。
『大丈夫かい?』
「大丈夫な……ものか」
『怪我が痛むのかい?』
「俺の怪我なんて……どうでもいい。見ろ……仲間たちの苦しそうな顔を……意識を残したまま仲間と戦わねばならぬなんて……さぞ悔しいことだろう」
「誰と話をしているんだ?」
勇者のただならぬ様子に、魔王は問いかけました。
しかし、勇者には魔王に返事をする余裕も気力もありません。
『まだ動けるかい?』
「ぎりぎりだ……でも、動く」
『じゃあ、僕が力を貸そう。僕の名前を呼ぶんだ。僕の名前は……』
「……まあいい。やれ、貴様らの手で勇者を殺すのだ」
魔王が指を鳴らすと、仲間たちは再び勇者に襲い掛かります。
しかしその時、勇者が叫びます。
「シャイン!」
勇者の手に握られた剣が、輝きを放ちました。
そのあまりの眩さに、魔王は顔を覆います。
それだけではありません。光に照らされた仲間たちは、闇魔法から解放され、倒れたのです。
勇者は最後の力を振り絞って立ち上がり、再び魔王に鋒を向けます。
先ほどまでの余裕はどこへやら。魔王は慌てふためきながら、勇者に向かって影の槍を飛ばします。
勇者が剣で槍を払うと、槍は霧と消えました。
「これで終わりだ」
勇者は魔王が飛ばす影の武器を払い落としながら駆け、剣で魔王の胸を貫きます。
「かはっ……まさか、シャインに選ばれるとはな……。私は……貴様に負けたのではない……シャインに……光の精霊に負けたのだ」
魔王はそう言い残して倒れました。
勇者の皆を思う気持ちが光の精霊シャインを呼び、勇者たちの身を守ってくれたのです。
その後、勇者たちは奪われた金品を手にリベリカへと戻り、それらを住民へと返します。
街に戻った一行は住民からたくさんの感謝と称賛の声を受けました。
しばらくリベリカで怪我と疲れを癒やすと、勇者たちは住民に旅立つことを告げます。
惜しまれながらも勇者たちはリベリカをあとにし、旅を続けるのです。
◆
「ふぅ、これが勇者伝説の『魔王の戦い』部分ですね」
ミシャちゃんは小さく息を吐いてから本を置き、オラジのジュースを飲んだ。
私――サキは拍手する。みんなもそれに続いた。
「うん、僕の知ってるお話とほとんど一緒だ」
「私も」
フランの言葉に、アニエちゃんが頷いた。
しかし、オージェだけ首を捻っている。
「俺が知っているのとはちょっと違うっすね。確か勇者はもっとバシバシ剣術を使って魔王と戦ってた気がするっす」
「あんたが好きそうな内容ね……」
すると、フランが聞いてくる。
「勇者様は普通の剣士よりも大きな剣を使ってたっていうのは知ってるかい?」
「あ、うん」
オージェは以前勇者様に憧れて、武器を使う授業で振れもしない大きさの剣を使ったんだよね。それで知った。
「戦士は、勇者様との力比べの結果、仲間になったんだよ」
フランの言葉にアニエちゃんが続ける。
「そ、どちらが大きい剣を振り回せるかっていうね。ほんと、今も昔も男子ってなんでそういうのが好きなのかしら」
「ふふっ、そこが可愛いところだったりするじゃないですか」
ミシャちゃんがくすくすと笑いながらそう言うと、アニエちゃんは渋々といった表情で頷く。
「まぁ、そうかもしれないわね。それはさておき、劇に落とし込むならミシャの話に沿って進めるのがいいかしら。剣劇もいいけど、魔法を使った方が授業の成果を活かせそうじゃない?」
「だとしたら、演出が重要だね。剣劇が少なくなるぶん、別のところで派手さを出さないと」
そんなフランの言葉を聞いて、アニエちゃんは顎に手を当てる。
「でも、役者が実際に魔法を放つなら、危ないからあんまり大規模な魔法は使えないわよね。迫力が出せるのかしら?」
「うーん……でも『魔王との戦い』をやるなら、やっぱり勇者様と魔王の戦いの迫力は重要な要素になりますよね」
「それならやっぱり剣劇多めのやつにするっす!」
「でも僕たちがちょっと剣劇を練習したところで、どっちみち迫力は出ないんじゃないかな?」
フランの指摘に、オージェは口を尖らせる。
確かに今から剣の稽古をしたところで、クオリティがそこまで上がるとは思えないかも……それに光の精霊の力を借りて魔王を倒すのに、剣劇がメインになるっていうのも、主軸がブレそう。
「大規模な魔法を、出演者以外が使うとか……?」
アニエちゃんの呟きを聞いて、オージェが手を挙げる。
「それなら、サキに横からドーンとすごい魔法を撃ってもらうっす!」
「役者に直撃させないようにはできるでしょうけど、会場が壊れちゃうんじゃないですか?」
ミシャちゃんは苦笑いしながら、そう口にした。
でも、オージェの言う通りドーンと大迫力な魔法を見せられたら、いいよね。
マジックショーみたいに……あ。
「そうだ」
私は思いついたことを紙に書いていく。
そしてそれをみんなに見せた上で、実演してみせた。
すると、オージェとアニエちゃんが興奮したように言う。
「す、すげーっす! めっちゃかっこいいっす!」
「うん! それなら会場が壊れることはないし、迫力も出るかも!」
そんな中、ミシャちゃんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「でも、それだとサキちゃん一人で演出をやらなくちゃいけませんし、大変じゃないですか?」
「ちょっと大変そうだけど……頑張る」
「あ、それじゃあ魔石工学を使った魔道具を地面に先に置いておくっていうのはどう? ほら、初めて私がサキと模擬戦した時に使ってたやつみたいな」
「それならサキの負担も減るし、稽古もしやすくなるね」
アニエちゃんとフランの言葉に、みんなが頷いた。
そして、ミシャちゃんは胸の前で両拳を握る。
「じゃあ脚本も、うんとド派手なものにしても大丈夫そうですね!」
「ほどほどにしときなさいよ?」
そうアニエちゃんが言い、みんなで笑い合った。
そこからもみんなでどんどんアイデアを出し合った。
明日、クラスのみんなにもここで出たアイデアを共有して、意見を聞いてみよう。
こうやって行事をみんなで企画するのって、すごく楽しい!
2 王様へのお披露目
劇についての話し合いをしてから、一週間後。
今日は、みんなでアメミヤ工房の私の部屋に集まっている。
「あぁぁぁ……どうしましょう……」
ミシャちゃんは、弱気な声を上げながら机に突っ伏した。
台本はあらかた作り終わったって言っていた気がするけど……。
「ミシャは何を悩んでるの?」
アニエちゃんの質問に答えたのは、オージェだった。
「衣装のイメージが固まらなくて悩んでるっす」
「なるほどね。いつも通り、ミシャのセンスに従って作ったらいいんじゃない?」
アニエちゃんが肩を叩いてそう言うと、ミシャちゃんはガバッと起き上がる。
「いいえ! そういうわけにはいきません! 聞けば二組と四組は衣装にかなり力を入れてるらしいですから!」
「大丈夫よ。ミシャの服はどれもオシャレなんだし」
「んー……!」
そう口にしたアニエちゃんに再び肩を叩かれ、納得いかないといったように両手を上下にぶんぶんと振るミシャちゃん。
こういう時のミシャちゃんって、結構子供っぽいんだよねぇ。
「もっとこう……イマジネーションが刺激されるようなことがないと、ダメです!」
「わかったから、とりあえず落ち着きなさい」
「……そうします」
ミシャちゃんはそう言って、私に抱きつくようにして胸に顔を埋め、深呼吸する。
「えっと……ミシャちゃん?」
「サキちゃん成分を補給すると、落ち着きます」
ミシャちゃんはよくこう言って、私の匂いを嗅いでくるんだけど……そんな特徴的な匂いがするの?
自分の袖をクンクンと嗅いでみる。
そんな一連の流れを見て、アニエちゃんは苦笑いしつつ口を開く。
「サキ……真面目に取り合わなくていいから。にしても、インスピレーションって言ってもねぇ」
「でもまぁ、台本は完成したんだからゆっくり考えられるわけだし、急ぐ必要はないよね」
フランはそう言うけど、ミシャちゃんは首を横に振る。
「ダメですよ! 服作りにおいては、時間なんていくらあっても足りないんですから!」
学習発表会はおよそ三ヶ月後。
準備期間である今は午後を劇の準備に充てられることになっているけど、午前中は普通に授業がある。確かに時間に余裕があるとは言えないかも。
ミシャちゃんが気合を入れて作るってことは、服の構造が複雑になるだろうし。
うーん……あ、そうだ。
「そういえばもう少ししたら、一週間お休みがあるよね」
私がそう言うと、アニエちゃんが怪訝そうな顔で頷く。
「え? えぇ、確か先生たちの研修があるとかで授業はお休みよ」
「それじゃあ、行ってみる?」
「どこに?」
「インスピレーションが湧きそうなとこ。劇の舞台になった街――雪の街・リベリカへ!」
私の提案に、四人ともが目を輝かせる。勇者について少し調べておいてよかった。
よし、決まりだね!
次の日。今日は学園がお休みなので、アメミヤ工房の作業場に来ている。
作業場には元孤児で、今はアメミヤ工房の従業員のキールもいる。
「それじゃあキール、このリストに載っている魔道具を用意しておいてくれる?」
私が渡した紙を見て、キールの顔が青ざめた。
紙には劇で使う魔道具の設計図が書かれていて……確かにちょびっと? 作るのが難しい気はする。
「こ、こんな複雑なもん、簡単に頼んでくんなよ! それに、なんだよこの量!」
キールはそう言って紙を突き返そうとするが、私はにっこりと笑う。
付き合いが長くなってきたこともあって、キールの扱いはなんとなくわかっているのだ。
「大丈夫、大丈夫! 今のキールならこのくらい余裕だって!」
「いやいやいや、さすがにこんなもんは……」
私はキールの言葉に被せて続ける。
「だってキールはすごい魔法陣を描くようになったし、お客さんからの評判もいいし……確かにこれは少し難しいかもしれないけど、今のキールならできるって私は思うんだ」
キールはその言葉に、にやにやする。
「そ、そこまででもないぞ。俺なんてサキ姉と比べたらまだまだだし……」
くっ……もう一押しか……。攻め方を変えよう!
「そっかぁ……それじゃあしょうがないね」
私が紙を手に取ると、キールは少しホッとしたような表情になる。
だけど、私はまだ諦めてないんだよ!
「あーあ、せっかくこれ全部できたら、キールに特別ボーナスを出しちゃおうと思ったのになぁ」
キールがピクッと反応する。
街から連れ出してもらった感謝が大きすぎたのだろう、キールは最初家に来た頃は『お金なんていらない!』って感じだった。
けど、働くことを覚えてからは意外とお金の管理を徹底するようになったんだよね。
「ち、ちなみにどんくらい出る予定だったんだ……?」
お、かかった!
金額をそっと耳打ちすると、キールは少し驚いてから真剣な顔つきになる。
頭の中で計算しているんだろう。
「でもまぁ、キールが無理って言うならしょうがないね……」
「ちょ、ちょっと待てよ、サキ姉!」
私がその場を去ろうとすると、キールが引き留めてくる。
そして、紙を私の手から奪い、言う。
「そ、そういえば今の案件が予定より早く終わりそうなんだった!」
「そうなの?」
「お、おう! だからこれ、やれるぞ!」
「ありがと! それじゃあ私は、これからレオンさんと王城に行ってくるね!」
そんなタイミングで、レオンさんの声がする。
「サキ、準備はできたかい? そろそろ時間だよ」
「はーい! 今行きます」
今日は王様たちに新しく作った商品を見てもらい、王城へ行く用事があるのだ。
私はニコニコでレオンさんの元に小走りで向かい、目がお金マークになってるキールを残して王城へ向かうのだった。
そこまで距離もないし、レオンさんと一緒に歩くのが好きなので、王城へは徒歩で向かうことにした。
「キールとずいぶん楽しそうに話していたね。何を話していたんだい?」
「ちょっと頼み事をしたんです。学習発表会の小道具を魔石工学を活かして作れたら面白いかなって思って」
私がキールに頼んだのは三十センチ四方の布状の魔道具。踏むと闇魔法が発動するようにしてもらうつもりだ。
布を置いた位置さえ覚えてもらえば、演者に演技に集中してもらいつつ演出を加えられるだろう。
「あぁ、なるほどね。劇か……懐かしいな。無理やり勇者役をやらされたのを覚えてるよ」
「ふふ、なんとなく想像できます」
「サキも演者をやるのかい?」
レオンさんの質問に、全力で首を横に振る。
「まさか! 私は裏方でいいんですよ。まぁ男子から名前を挙げられてしまいましたけど……」
「はは! 名前を出した男子の気持ち、わからなくはないなぁ」
「えぇ……?」
楽しげに笑うレオンさんに対して、私は首を傾げた。
それからも他愛のない雑談を続けていると、あっという間に目的の王城に到着。
門を潜り、王様の部屋に行くと王様と王妃様、二人の娘で私の弟子でもあるプレシア、パパとママが待っていた。
「おう! お前ら、よく来たな!」
よっ、と手を挙げる王様を見て、『この王様っぽくない振る舞いにも慣れてきたなぁ』としみじみ感じる。
王妃様はおでこに手を当てて、「はぁ」と息を大きく吐いているけど。
……王妃様も大変だなぁ。
ちなみにプレシアは苦笑いしている。
「今日はわざわざありがとう」
気を取り直してそう口にした王妃様に続いて、王様が身を乗り出す。
「早速何を作ったか見せてもらおうか」
内心張り切りつつ、口を開く。
「ここじゃ狭いので、外でお見せしてもいいですか?」
「狭い? そんなに大きなものなのか?」
「大きい……といえば大きいですけど」
「見た方が早いってことだな。よし、庭に行こう」
こうして私たちは庭へと移動した。
私は収納空間から、新商品を取り出す。
「これは……馬車か?」
「でもお父様、お馬様をつけるところがありません」
「それに車輪が見たことないほど大きいですね」
そう口にした王族三人と、パパとママも私の取り出した道具を興味津々といった様子で見ている。
「サキ、これは?」
代表して聞いてきた王様に、私は答える。
「これは馬を使わない馬車……自動車です」
レオンさん以外の人が首を傾げた。
そう、新商品は魔力をエネルギーとして走る車。
遠出をしたくても馬車を使うとなると、どうしても移動できる距離に限界があるからね。
見た目は車高が高めの四角いただの自動車って感じだけど、いろいろ工夫してある。
王様は最初こそ戸惑っていたようだが、すぐさま聞いてくる。
「馬を使わない……ってことは、こいつは自走するのか?」
「そうです。なんなら自動的に目的地に向かうことだってできるんですよ。乗ってみます?」
「おう! 扉がいくつかあるようだが、どこから乗ればいい?」
「そうですね……まずは私が運転してみますので、隣に座ってみてください」
「わかった」
頷く王様の隣で、プレシアが手を挙げる。
「私も前に乗りたいです!」
「それじゃあ僕たちは後ろに乗りましょうか」
レオンさんの言葉に、王妃様が頷いた。
「そうですね」
こうして王様とプレシアと私は前方の席に、他の人たちは後部座席に乗り込んだ。
「この扉はなんですか?」
運転席に座る私の隣――助手席に座る王様の膝の上にいるプレシアが、後ろにある扉を指差す。
前世の車と違い、この車は前方と後方のスペースが扉によって区切られているのだ。
「この扉を開けると、レオンさんたちがいる後ろの席に繋がってるんだよ。中がちょっと特殊な作りになってるから、扉で分けてるの」
「なるほど……あとで後ろにも行ってみてよろしいですか?」
「もちろん。ぜひ感想を聞かせてね」
「それより、早く動かしてみよーぜ」
王様は待ちきれないって感じだ。
ちょっと苦笑いしながら、私はブレーキを踏みつつスイッチを押す。
この車はガソリンの代わりに魔力で動くから排気ガスが出ないし、音もとても静かだ。
「それじゃあ行きますね」
ブレーキを離すと、車はゆっくりと動き出した。
「すごいすごい! 本当にお馬様がいないのに動いてます!」
そんな風にはしゃぐプレシアと対照的に、王様は少し不満げ。
「確かにすげえが……ちょっと遅くないか?」
「お庭でスピードを出しすぎたら危ないですからね」
一応前世ではゴールドの運転免許を持っていた。道路交通法を守って安全運転を心がけてきた成果である。それは、今も変わらない。
それに、王城のお庭は広いけど、教習所ほどではないのでそもそもあまりスピード出せないし。
「もっと広いところならいいのか?」
「ええ、そうですね」
「それじゃあ、もっと広いところに行くぞ!」
「え!?」
王様が指を鳴らすと、一瞬でどこかの広野に移動していた。
ついでに私と王様の席もなぜか入れ替わっているし……なんだか嫌な予感がする。
「さっき見た感じ、こっちを踏むと進んで、こっちで止まれるって感じだな」
「ちょ、ちょっと王様!?」
「いくぜ!」
王様がアクセルをグイッと踏むと、車はすごい勢いで走り出した。
勇者たちはテントの中で話し合いを始めました。
膝を突き合わせてリベリカの現状を整理したあと、勇者は仲間たちに言いました。
「明日、俺たちの本来の仕事をしよう」
勇者の言葉に、仲間たちは頷きました。
それから勇者たちは魔王が去っていったという北の城へと向かいます。
その道中、たくさんの魔物たちが現れますが……。
速さに秀でた狼の魔物は賢者の魔法で切り抜け、力の強い熊の魔物は戦士の剛力で薙ぎ倒し、空を駆ける鳥の魔物は弓士が正確に射抜きます。
やがて、とうとう勇者たちは魔王の城へとたどり着きました。
城の中に入ると、その最奥で玉座に座る魔王が立ち上がり、口を開きます。
「クックック……よくここまでたどり着けたな」
勇者は剣を引き抜き、魔王に鋒を向けました。
「街の人たちにしたことは、許されることじゃない」
「だとしたらなんだ?」
「俺たちがお前を止める」
こうして、魔王との激しい戦いが幕を開けました。
魔王は闇魔法が得意。そしてその一種である影魔法は、大層強力でした。自在に形を変える影は時に鋭い槍に、時には強固な盾になり勇者たちを追い詰めます。
しかし、それより勇者を追い詰めたのは――
「この程度か? 勇者と言っても所詮は田舎の街で大きいイカを倒しただけのガキか」
「はぁ、はぁ……お前、俺の仲間に何をした!」
魔王は狡猾にも闇魔法で勇者の仲間の体を操り、勇者と戦わせたのです。
魔王の魔法に操られる仲間たちを、勇者は攻撃できません。
やがて勇者は、これまで何度も危機を救ってくれた戦士の剛腕によって倒されます。
もう殺されるのを待つのみ。意識が朦朧とし始めた勇者の耳に、聞いたことのない声が響きます。
『大丈夫かい?』
「大丈夫な……ものか」
『怪我が痛むのかい?』
「俺の怪我なんて……どうでもいい。見ろ……仲間たちの苦しそうな顔を……意識を残したまま仲間と戦わねばならぬなんて……さぞ悔しいことだろう」
「誰と話をしているんだ?」
勇者のただならぬ様子に、魔王は問いかけました。
しかし、勇者には魔王に返事をする余裕も気力もありません。
『まだ動けるかい?』
「ぎりぎりだ……でも、動く」
『じゃあ、僕が力を貸そう。僕の名前を呼ぶんだ。僕の名前は……』
「……まあいい。やれ、貴様らの手で勇者を殺すのだ」
魔王が指を鳴らすと、仲間たちは再び勇者に襲い掛かります。
しかしその時、勇者が叫びます。
「シャイン!」
勇者の手に握られた剣が、輝きを放ちました。
そのあまりの眩さに、魔王は顔を覆います。
それだけではありません。光に照らされた仲間たちは、闇魔法から解放され、倒れたのです。
勇者は最後の力を振り絞って立ち上がり、再び魔王に鋒を向けます。
先ほどまでの余裕はどこへやら。魔王は慌てふためきながら、勇者に向かって影の槍を飛ばします。
勇者が剣で槍を払うと、槍は霧と消えました。
「これで終わりだ」
勇者は魔王が飛ばす影の武器を払い落としながら駆け、剣で魔王の胸を貫きます。
「かはっ……まさか、シャインに選ばれるとはな……。私は……貴様に負けたのではない……シャインに……光の精霊に負けたのだ」
魔王はそう言い残して倒れました。
勇者の皆を思う気持ちが光の精霊シャインを呼び、勇者たちの身を守ってくれたのです。
その後、勇者たちは奪われた金品を手にリベリカへと戻り、それらを住民へと返します。
街に戻った一行は住民からたくさんの感謝と称賛の声を受けました。
しばらくリベリカで怪我と疲れを癒やすと、勇者たちは住民に旅立つことを告げます。
惜しまれながらも勇者たちはリベリカをあとにし、旅を続けるのです。
◆
「ふぅ、これが勇者伝説の『魔王の戦い』部分ですね」
ミシャちゃんは小さく息を吐いてから本を置き、オラジのジュースを飲んだ。
私――サキは拍手する。みんなもそれに続いた。
「うん、僕の知ってるお話とほとんど一緒だ」
「私も」
フランの言葉に、アニエちゃんが頷いた。
しかし、オージェだけ首を捻っている。
「俺が知っているのとはちょっと違うっすね。確か勇者はもっとバシバシ剣術を使って魔王と戦ってた気がするっす」
「あんたが好きそうな内容ね……」
すると、フランが聞いてくる。
「勇者様は普通の剣士よりも大きな剣を使ってたっていうのは知ってるかい?」
「あ、うん」
オージェは以前勇者様に憧れて、武器を使う授業で振れもしない大きさの剣を使ったんだよね。それで知った。
「戦士は、勇者様との力比べの結果、仲間になったんだよ」
フランの言葉にアニエちゃんが続ける。
「そ、どちらが大きい剣を振り回せるかっていうね。ほんと、今も昔も男子ってなんでそういうのが好きなのかしら」
「ふふっ、そこが可愛いところだったりするじゃないですか」
ミシャちゃんがくすくすと笑いながらそう言うと、アニエちゃんは渋々といった表情で頷く。
「まぁ、そうかもしれないわね。それはさておき、劇に落とし込むならミシャの話に沿って進めるのがいいかしら。剣劇もいいけど、魔法を使った方が授業の成果を活かせそうじゃない?」
「だとしたら、演出が重要だね。剣劇が少なくなるぶん、別のところで派手さを出さないと」
そんなフランの言葉を聞いて、アニエちゃんは顎に手を当てる。
「でも、役者が実際に魔法を放つなら、危ないからあんまり大規模な魔法は使えないわよね。迫力が出せるのかしら?」
「うーん……でも『魔王との戦い』をやるなら、やっぱり勇者様と魔王の戦いの迫力は重要な要素になりますよね」
「それならやっぱり剣劇多めのやつにするっす!」
「でも僕たちがちょっと剣劇を練習したところで、どっちみち迫力は出ないんじゃないかな?」
フランの指摘に、オージェは口を尖らせる。
確かに今から剣の稽古をしたところで、クオリティがそこまで上がるとは思えないかも……それに光の精霊の力を借りて魔王を倒すのに、剣劇がメインになるっていうのも、主軸がブレそう。
「大規模な魔法を、出演者以外が使うとか……?」
アニエちゃんの呟きを聞いて、オージェが手を挙げる。
「それなら、サキに横からドーンとすごい魔法を撃ってもらうっす!」
「役者に直撃させないようにはできるでしょうけど、会場が壊れちゃうんじゃないですか?」
ミシャちゃんは苦笑いしながら、そう口にした。
でも、オージェの言う通りドーンと大迫力な魔法を見せられたら、いいよね。
マジックショーみたいに……あ。
「そうだ」
私は思いついたことを紙に書いていく。
そしてそれをみんなに見せた上で、実演してみせた。
すると、オージェとアニエちゃんが興奮したように言う。
「す、すげーっす! めっちゃかっこいいっす!」
「うん! それなら会場が壊れることはないし、迫力も出るかも!」
そんな中、ミシャちゃんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「でも、それだとサキちゃん一人で演出をやらなくちゃいけませんし、大変じゃないですか?」
「ちょっと大変そうだけど……頑張る」
「あ、それじゃあ魔石工学を使った魔道具を地面に先に置いておくっていうのはどう? ほら、初めて私がサキと模擬戦した時に使ってたやつみたいな」
「それならサキの負担も減るし、稽古もしやすくなるね」
アニエちゃんとフランの言葉に、みんなが頷いた。
そして、ミシャちゃんは胸の前で両拳を握る。
「じゃあ脚本も、うんとド派手なものにしても大丈夫そうですね!」
「ほどほどにしときなさいよ?」
そうアニエちゃんが言い、みんなで笑い合った。
そこからもみんなでどんどんアイデアを出し合った。
明日、クラスのみんなにもここで出たアイデアを共有して、意見を聞いてみよう。
こうやって行事をみんなで企画するのって、すごく楽しい!
2 王様へのお披露目
劇についての話し合いをしてから、一週間後。
今日は、みんなでアメミヤ工房の私の部屋に集まっている。
「あぁぁぁ……どうしましょう……」
ミシャちゃんは、弱気な声を上げながら机に突っ伏した。
台本はあらかた作り終わったって言っていた気がするけど……。
「ミシャは何を悩んでるの?」
アニエちゃんの質問に答えたのは、オージェだった。
「衣装のイメージが固まらなくて悩んでるっす」
「なるほどね。いつも通り、ミシャのセンスに従って作ったらいいんじゃない?」
アニエちゃんが肩を叩いてそう言うと、ミシャちゃんはガバッと起き上がる。
「いいえ! そういうわけにはいきません! 聞けば二組と四組は衣装にかなり力を入れてるらしいですから!」
「大丈夫よ。ミシャの服はどれもオシャレなんだし」
「んー……!」
そう口にしたアニエちゃんに再び肩を叩かれ、納得いかないといったように両手を上下にぶんぶんと振るミシャちゃん。
こういう時のミシャちゃんって、結構子供っぽいんだよねぇ。
「もっとこう……イマジネーションが刺激されるようなことがないと、ダメです!」
「わかったから、とりあえず落ち着きなさい」
「……そうします」
ミシャちゃんはそう言って、私に抱きつくようにして胸に顔を埋め、深呼吸する。
「えっと……ミシャちゃん?」
「サキちゃん成分を補給すると、落ち着きます」
ミシャちゃんはよくこう言って、私の匂いを嗅いでくるんだけど……そんな特徴的な匂いがするの?
自分の袖をクンクンと嗅いでみる。
そんな一連の流れを見て、アニエちゃんは苦笑いしつつ口を開く。
「サキ……真面目に取り合わなくていいから。にしても、インスピレーションって言ってもねぇ」
「でもまぁ、台本は完成したんだからゆっくり考えられるわけだし、急ぐ必要はないよね」
フランはそう言うけど、ミシャちゃんは首を横に振る。
「ダメですよ! 服作りにおいては、時間なんていくらあっても足りないんですから!」
学習発表会はおよそ三ヶ月後。
準備期間である今は午後を劇の準備に充てられることになっているけど、午前中は普通に授業がある。確かに時間に余裕があるとは言えないかも。
ミシャちゃんが気合を入れて作るってことは、服の構造が複雑になるだろうし。
うーん……あ、そうだ。
「そういえばもう少ししたら、一週間お休みがあるよね」
私がそう言うと、アニエちゃんが怪訝そうな顔で頷く。
「え? えぇ、確か先生たちの研修があるとかで授業はお休みよ」
「それじゃあ、行ってみる?」
「どこに?」
「インスピレーションが湧きそうなとこ。劇の舞台になった街――雪の街・リベリカへ!」
私の提案に、四人ともが目を輝かせる。勇者について少し調べておいてよかった。
よし、決まりだね!
次の日。今日は学園がお休みなので、アメミヤ工房の作業場に来ている。
作業場には元孤児で、今はアメミヤ工房の従業員のキールもいる。
「それじゃあキール、このリストに載っている魔道具を用意しておいてくれる?」
私が渡した紙を見て、キールの顔が青ざめた。
紙には劇で使う魔道具の設計図が書かれていて……確かにちょびっと? 作るのが難しい気はする。
「こ、こんな複雑なもん、簡単に頼んでくんなよ! それに、なんだよこの量!」
キールはそう言って紙を突き返そうとするが、私はにっこりと笑う。
付き合いが長くなってきたこともあって、キールの扱いはなんとなくわかっているのだ。
「大丈夫、大丈夫! 今のキールならこのくらい余裕だって!」
「いやいやいや、さすがにこんなもんは……」
私はキールの言葉に被せて続ける。
「だってキールはすごい魔法陣を描くようになったし、お客さんからの評判もいいし……確かにこれは少し難しいかもしれないけど、今のキールならできるって私は思うんだ」
キールはその言葉に、にやにやする。
「そ、そこまででもないぞ。俺なんてサキ姉と比べたらまだまだだし……」
くっ……もう一押しか……。攻め方を変えよう!
「そっかぁ……それじゃあしょうがないね」
私が紙を手に取ると、キールは少しホッとしたような表情になる。
だけど、私はまだ諦めてないんだよ!
「あーあ、せっかくこれ全部できたら、キールに特別ボーナスを出しちゃおうと思ったのになぁ」
キールがピクッと反応する。
街から連れ出してもらった感謝が大きすぎたのだろう、キールは最初家に来た頃は『お金なんていらない!』って感じだった。
けど、働くことを覚えてからは意外とお金の管理を徹底するようになったんだよね。
「ち、ちなみにどんくらい出る予定だったんだ……?」
お、かかった!
金額をそっと耳打ちすると、キールは少し驚いてから真剣な顔つきになる。
頭の中で計算しているんだろう。
「でもまぁ、キールが無理って言うならしょうがないね……」
「ちょ、ちょっと待てよ、サキ姉!」
私がその場を去ろうとすると、キールが引き留めてくる。
そして、紙を私の手から奪い、言う。
「そ、そういえば今の案件が予定より早く終わりそうなんだった!」
「そうなの?」
「お、おう! だからこれ、やれるぞ!」
「ありがと! それじゃあ私は、これからレオンさんと王城に行ってくるね!」
そんなタイミングで、レオンさんの声がする。
「サキ、準備はできたかい? そろそろ時間だよ」
「はーい! 今行きます」
今日は王様たちに新しく作った商品を見てもらい、王城へ行く用事があるのだ。
私はニコニコでレオンさんの元に小走りで向かい、目がお金マークになってるキールを残して王城へ向かうのだった。
そこまで距離もないし、レオンさんと一緒に歩くのが好きなので、王城へは徒歩で向かうことにした。
「キールとずいぶん楽しそうに話していたね。何を話していたんだい?」
「ちょっと頼み事をしたんです。学習発表会の小道具を魔石工学を活かして作れたら面白いかなって思って」
私がキールに頼んだのは三十センチ四方の布状の魔道具。踏むと闇魔法が発動するようにしてもらうつもりだ。
布を置いた位置さえ覚えてもらえば、演者に演技に集中してもらいつつ演出を加えられるだろう。
「あぁ、なるほどね。劇か……懐かしいな。無理やり勇者役をやらされたのを覚えてるよ」
「ふふ、なんとなく想像できます」
「サキも演者をやるのかい?」
レオンさんの質問に、全力で首を横に振る。
「まさか! 私は裏方でいいんですよ。まぁ男子から名前を挙げられてしまいましたけど……」
「はは! 名前を出した男子の気持ち、わからなくはないなぁ」
「えぇ……?」
楽しげに笑うレオンさんに対して、私は首を傾げた。
それからも他愛のない雑談を続けていると、あっという間に目的の王城に到着。
門を潜り、王様の部屋に行くと王様と王妃様、二人の娘で私の弟子でもあるプレシア、パパとママが待っていた。
「おう! お前ら、よく来たな!」
よっ、と手を挙げる王様を見て、『この王様っぽくない振る舞いにも慣れてきたなぁ』としみじみ感じる。
王妃様はおでこに手を当てて、「はぁ」と息を大きく吐いているけど。
……王妃様も大変だなぁ。
ちなみにプレシアは苦笑いしている。
「今日はわざわざありがとう」
気を取り直してそう口にした王妃様に続いて、王様が身を乗り出す。
「早速何を作ったか見せてもらおうか」
内心張り切りつつ、口を開く。
「ここじゃ狭いので、外でお見せしてもいいですか?」
「狭い? そんなに大きなものなのか?」
「大きい……といえば大きいですけど」
「見た方が早いってことだな。よし、庭に行こう」
こうして私たちは庭へと移動した。
私は収納空間から、新商品を取り出す。
「これは……馬車か?」
「でもお父様、お馬様をつけるところがありません」
「それに車輪が見たことないほど大きいですね」
そう口にした王族三人と、パパとママも私の取り出した道具を興味津々といった様子で見ている。
「サキ、これは?」
代表して聞いてきた王様に、私は答える。
「これは馬を使わない馬車……自動車です」
レオンさん以外の人が首を傾げた。
そう、新商品は魔力をエネルギーとして走る車。
遠出をしたくても馬車を使うとなると、どうしても移動できる距離に限界があるからね。
見た目は車高が高めの四角いただの自動車って感じだけど、いろいろ工夫してある。
王様は最初こそ戸惑っていたようだが、すぐさま聞いてくる。
「馬を使わない……ってことは、こいつは自走するのか?」
「そうです。なんなら自動的に目的地に向かうことだってできるんですよ。乗ってみます?」
「おう! 扉がいくつかあるようだが、どこから乗ればいい?」
「そうですね……まずは私が運転してみますので、隣に座ってみてください」
「わかった」
頷く王様の隣で、プレシアが手を挙げる。
「私も前に乗りたいです!」
「それじゃあ僕たちは後ろに乗りましょうか」
レオンさんの言葉に、王妃様が頷いた。
「そうですね」
こうして王様とプレシアと私は前方の席に、他の人たちは後部座席に乗り込んだ。
「この扉はなんですか?」
運転席に座る私の隣――助手席に座る王様の膝の上にいるプレシアが、後ろにある扉を指差す。
前世の車と違い、この車は前方と後方のスペースが扉によって区切られているのだ。
「この扉を開けると、レオンさんたちがいる後ろの席に繋がってるんだよ。中がちょっと特殊な作りになってるから、扉で分けてるの」
「なるほど……あとで後ろにも行ってみてよろしいですか?」
「もちろん。ぜひ感想を聞かせてね」
「それより、早く動かしてみよーぜ」
王様は待ちきれないって感じだ。
ちょっと苦笑いしながら、私はブレーキを踏みつつスイッチを押す。
この車はガソリンの代わりに魔力で動くから排気ガスが出ないし、音もとても静かだ。
「それじゃあ行きますね」
ブレーキを離すと、車はゆっくりと動き出した。
「すごいすごい! 本当にお馬様がいないのに動いてます!」
そんな風にはしゃぐプレシアと対照的に、王様は少し不満げ。
「確かにすげえが……ちょっと遅くないか?」
「お庭でスピードを出しすぎたら危ないですからね」
一応前世ではゴールドの運転免許を持っていた。道路交通法を守って安全運転を心がけてきた成果である。それは、今も変わらない。
それに、王城のお庭は広いけど、教習所ほどではないのでそもそもあまりスピード出せないし。
「もっと広いところならいいのか?」
「ええ、そうですね」
「それじゃあ、もっと広いところに行くぞ!」
「え!?」
王様が指を鳴らすと、一瞬でどこかの広野に移動していた。
ついでに私と王様の席もなぜか入れ替わっているし……なんだか嫌な予感がする。
「さっき見た感じ、こっちを踏むと進んで、こっちで止まれるって感じだな」
「ちょ、ちょっと王様!?」
「いくぜ!」
王様がアクセルをグイッと踏むと、車はすごい勢いで走り出した。
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