最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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二〇九話

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「中々に面白い話しだったわ」
「そいつは良かったな。俺は話し疲れたよ……」

 そう、満足そうに言うセレスに、俺はため息で返す。
 あれから数十分。
 根掘り葉掘りと、ここぞとばかりに二人から飛んでくる質問責めも、ようやく終わり、やっと解放される運びとなった。
 と、丁度その時だ。

 ピコンっと、また・・レーダーに何かの反応が出た。

「……どうしたスグミ?」

 俺の様子が変わったことを感じてか、セリカがそう尋ねて来た。

「また何かの反応を拾ったな……見に行くか……」

 ということで、俺は一路、反応のあった方へと進路を取る。
 現在のパラボラバードの感知範囲は、アーマジロを探した時から変わっていないので、10メートル級以上の存在を感知するようになっていた。
 のだが……

 ここ、ユグル大森林の奥地は、別名・魔境とも呼ばれているらしく、正に人の手の一切入っていないような秘境であった。
 故に、パラボラバードに反応する10メートル級を超える魔獣がそこら中にゴロゴロしており、少し移動しただけで一、二の反応があるほどだった。

 まだ、フューリ達銀狼族が暮らしていたという場所まで辿り着いていないのだが、無視するわけにも行かないので、さっきから反応を見つけては一つ一つ見に行き、それがベルへモスなのかどうかセレスに判定してもらう、ということをずっと繰り返していた。
 要は、セレスも知らないようなモンスターが居たら、それがベルへモスである可能性が極めて高い、ということだ。

 しかし、それも先ほどから何度も空振りが続いている、というのが現状だった。
 
 少しして、反応があった場所へと到着し、上空でマキナバハムートを停止させる。高度はおよそ500メートルくらいのところだ。
 下手に近づいて攻撃を受けるのも危険だからな。
 だからこうして、ある程度の高度を維持して安全を確保しつつ、観察はマキナバハムートに内蔵されている望遠機能を使って行うことにしていた。

 まぁ、マキナバハムートを落とすどころか、傷を付けられるようなモンスターがそうそういるとは思わないが、何が起こるか分からないので、こうして注意だけはしておくことにしてした。

 しかし、ここは人目のないジャングルだからこそ、この高度まで落とせるが、 人目のある場所でこの高さだったら、軽くパニックになるだろうな……なんてことをふと思った。

 そんな感じて観察すること少し。
 上空からでは森の木々に隠れてよく見えないが、時折、木々の隙間から二つの頭を持つ巨大なヘビの姿が見て取れた。

「あれは……デアン・スネイルね」

 それを見て、セレスがそう即答する。ということはまたしても、ハズレ、ということか。
 しかし、だ。
 ただ、頭が二つあるヘビ、というだけでも珍しいが、驚くべはそこではなくその大きさだ。
 周囲の木々の大きさと比較しても、胴体の幅がダンプカーくらいありそうなヘビが、森の中を悠々と移動しているのだ。
 パラボラバードに感知されるくらいの大きさだから、それくらいはあって当然なのだろうが、こんなんと突然森の中で出会いでもしたら、ちびるどころの騒ぎじゃないぞ……

 実はさっきから、こんな感じでアーマジロが可愛く思えるようなモンスターがこの森ではゴロゴロと出て来ていた。
 10メートルを超えるサソリっぽいモンスターとか、キングなコングっぽいモンスターとか、ティラノサウルス的な何かとか……
 流石は、魔境、と呼ばれるだけはあるな。ヤベェぞ、ここ……

 これはあれだな。この森に人が手を着けていないんじゃなくて、人なんかが近づいたところで、すぐに食わてしまうような森だから、誰も近づかないって話なんだろうな、そんなことを思った。

「ふむ、今回もハズレ、か……」

 悠々と立ち去るデアン・スネイルを見送りつつ、セリカがそう呟いた。
 
「まぁ、元々が伝説とか幻とか言われるモンスターだからな……流石に、そう簡単には見つからんか……」

 パラボラバードを使っての探索は、ある意味では順調に進んでいるといえた。
 こうして、大型モンスターを次々と発見出来ているわけだからな。
 こうして虱潰しに探して行けば、そのうちベルへモスにぶつかることも十分に考えられた。
 ただ……
 捜索する場所が広大なだけに、捜索が難航している、というのもまた事実だった。
 というのも、パラボラバードの探知範囲は、最大出力でも半径で大体5キロメートルくらいしかないのだ。
 5キロメートルというと広いようにも思えるが、見渡す限り森森森森森、というような状況では全然心許ない範囲だった。
 気持ち的には、金属探知機片手に、砂浜に落ちた指輪をひたすら探しているような気分である。

 これで、頻繁に反応があるのがまた厄介なんだよな……

 この森に10メートル級のモンスターがベルへモス一匹しかいない、というのなら、マキナバハムートで上空を飛び回り反応を探せばいいだけの話しだった。
 しかし、この森には10メートル級のモンスターがゴロゴロしており、少し移動しては反応があり、確認に向かう、なんてことを繰り返しているから、遅々として捜索が進まないでいたのだ。
 もっと簡単に見つかるもんだと、完全に舐めてたな……

 探し始めて思ったのが、やはり俺達がベルへモスがどういういった魔獣かを知らない、というのが一番の問題だった。

 ベルへモスについては、一応、巨大な魔獣、という情報こそあれど、どんな姿をしいるだとか、巨大といっても、どれくらいの大きさかだとか、そういう細かい情報を俺達はまったく有してはいなかった。

 だからこうして、地道に探している訳なのだが……

「こうして一匹ずつ探しても埒が明かない様な気がして来たな……
 なぁ? セレスは何か、大きさや外見に関して、少しでも参考になりそうなことって知ってないのか?」

 藁にも縋る、といってはセレスに失礼だが、何か取っ掛かりなりそうな情報はないかと天才美少女に聞いてみる。が……

「ごめんなさい。詳しいことは本当に何も分かっていないのよ。
 おじい様がまとめた資料にも、言い伝えとか、人から聞いた話しとか、そんなものしかなかったから……」

 だから、何か新しいことが分かればと思って、今回こうして捜索に同行することにしたの、とセレスは言う。
 まぁ、そりゃそうだよな。セリスが何か知っていればとっくの昔に話してくれていたはずだ。

 まぁ、今の俺達って、いうなればネッシーとかイエティとかモケーレ・ムベンベとか……幻のUMAを探しているようなもんだからな。
 こればかりは致し方なし、か。

「参考になるか分からないけど、こんな話が資料には残っていたわ。
 曰く、昨日まであった山が、轟音と共に一夜で無くなった。とか、逆に、昨日まで何も無かったところに突然山が出来ていた、とか……
 おじい様は、これらがベルへモスではないかと、そう考察していたわ」
「山……ねぇ……山って言っても低いものから高いものまで色々あるだろ?」

 山、と一口に言っても様々だ。
 事実、標高3メートルの盛り土を山と言い張るものもあれば、標高9000メートルに差し迫るエベレストのような山もある。
 身長2メートルの大男を、山の様に大きな男、なんて形容することだってあるのだ。
 大きい、とか、巨大、なんて言葉は、主観に依存し過ぎるので、はっきりいって参考にならないんだよなぁ……

「そう言えば……確か、セリカの話しだと過去にベルへモスによる被害が出てるんじゃなかったのか? その時の資料とかは残ってないのか?」
「残ってはいるけど、似た様な話ばかりよ?」

 と、そんなことを思い出し口にすると、空かさずセレスがそう答えてくれた。

「“夜中に轟音が響いて、巨大な何かが街を横切った。夜が明けたら、何もかもが無くなっていた”とかね。
 文献から分かるのは、襲撃を受けたのが夜間だったこと、そして一歩歩く度に、地響きを轟かせるような巨大な何かだった、ということくらいね。
 夜間に襲われた所為で、姿もはっきり見えていなかったみたいだし」
「なるほど……」

 セレスの話しを聞いて、踏むと唸る。
 確かに有力な情報ではないが、ただセレスが言った“一歩歩く度に、地響きを轟かせていた”というのは気になった。
 つまり、少なくとも、それだけの質量を有している存在だ、ということではあるからな。

 ダンプカーが家の近くを走ると結構揺れたりするが、地響きが起きる程となると、どれ程の質量なのだろうか? と、考えてみる。
 そこで、ちょっと探索方法を変えてみることを提案してみた。

「探す方法を変える? どういうことだ?」

 思い立ったが吉日と、二人にそのことを提案すると、セレスがそう聞き返してきた。

「つまりな……」

 俺の考えた方法とは、感知設定をもっと大型に切り替える、という単純なものだった。

 今、パラボラバードは10メートル級を超えるものに反応するように設定されていた。
 しかし、ここユグル大森林には10メートル級のモンスターが大量にいて、一匹一匹調べていたのでは切りがなかった。
 だったら、ここで対象のサイズを一気に30か40メートル級に引き上げようというのだ。

 今まではベルへモスのサイズが分からなかったが故に、取り敢えず10メートル級からこつこつ探していたが、ここからは発想を切り替えて一番上のサイズから探そう、ということだ。

 実際、そんなにデカい魔獣が居るかどうかは分からないが、ベルへモスイコールこの辺りで一番大きなモンスター、だとするなら、上から探した方が早い可能性は十分にあると思う。
 当初はもっと簡単にみつかると高を括っていたのだが、まさか、10メートル級のモンスターがこんなにゴロゴロしていると思わなかったからな……

 完全に誤算である。

「分かった。というか、探索に関しては私達ではどうにも出来んからな。スグミが思うようにしてくれ」
「そうですね」

 というわけで、二人からも了承を得たことで、早速パラボラバードの感度を下げに下げ、超大型、『アンリミ』でいうならフィールドボスより遥かに大きな、レイドボスに反応するくらいまで下げることにした。
 さて、これで一度、銀狼族の集落があったという場所まで飛んでみるか。
 そこで反応が出てくれればいいんだが……
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