最弱で最強な人形使いの異世界譚

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん

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三三九話

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 遺跡調査から帰還した翌日。
 朝食終わりの昼下がり、俺は自室で一人、執務机に座り遺跡で手に入れた資料の制作作業を行いながら、昨日のことを振り返る。

 いやぁ~、とにかく昨日は大変だった。
 なにせ、帰って来た途端、ミラちゃん含め侍女の皆さんに熱烈に迎えられたからなぁ。
 一応、イースさんに連絡用の共振リングを渡しておいたものの、遺跡の抗魔鉱に阻まれ機能せず……

 結果、大体二週間近く音信不通だったため、侍女さん達に随分と心配をかけてしまったらしい。

 どさくさに紛れて、何人かチューして来た子もいたが……それはそれで、まぁ、ヨシとしよう……うん。

 考えてもみれば、彼女達の使命は俺を篭絡して王国側……正確には、プレセアの支配下に組み込むことである。
 それを考えると、俺の生死が自分の人生に直結するかもしれないので、気が気ではなかったのかもな。
 そう考えると、あの熱烈な歓迎も打算的なものなのかも? と思うと、ちょっと寂しくなる。

 しかも、侍女隊のまとめ役であるマレアの次に偉い侍女さん……確か、副侍女長とかいっていたか? からは、一〇日を過ぎた辺りから王宮からの問い合わせも頻繁になったと聞かされた。
 セレスやマレアも同行していたので、プレセアが心配したのかもしれない。
 マレア曰く、プレセアとはマブダチらしいからな。

 なんて話はさておき。

 しかし、今思い出しても、本当に色々とあった遺跡探索になったものだ。
 最初は、ぱっと行ってぱっと帰って来るつもりだったんだが、実際行ってみれば、かなりの長期滞在となってしまった。

 まぁ、その分それだけの発見があったということでもあるのだが。

 事実、遺跡の動力部の復元後から帰還に至るその間でも、様々な発見があった。

 主な発見としては、魔石の製造装置の発見とその再稼働だろう。
 また、これに伴い、停止していた一般ゴーレムも稼働させ、ついでに、ざっくりとだがそのシステムの掌握にも成功していた。
 更に、一般ゴーレムの製造工場の発見。
 だが、こちらは再稼働が可能な状態ではあったが敢えて触れず、停止状態を維持。
 別にゴーレムを増やしても意味ないしな。
 最後に、おそらく他の遺跡へと通じているであろう巨大トンネルの発見だ。

 と、大体こんな感じとなっていた。
 で、だ。魔石は非常に高価な品であるため、セレスやマレアがどうにかして魔石製造機を持ち帰ることが出来ないか? と提案して来たのだが、これを俺が即却下していた。

 結論からいえば、それではセレス達の望みは叶わないからだ。
 というのも、装置そのものを持ち帰ることは十分に可能ではあった。
 装置は巨大ではあるが、亜空間倉庫にしまってしまえば実質的な大きさなど関係ないからな。

 だが、魔石の製造過程を紐解けば、メインリアクターから大量のエーテルを受け取り、それを魔石へと変換している、というものだった。
 メインリアクターがなければ、そもそもこの魔石製造機は動かず、ならばとメインリアクターごと持ち帰ったとしても、メインリアクターはエーテルストリーム上、もしくはその近辺に存在していなくては動かない。
  
 つまり、魔石製造機はあの場所にあるからこそ、初めて正常に稼働する、ということだった。
 いってしまえば、遺跡そのものが一つの巨大な装置なのである。

 だったら、魔石製造機を稼働させたままにして、出来上がった魔石を定期的に回収すればいいのではないか? と、そう言い出したのがこれまたマレアだった。

 勿論、それなら十分に可能だろう。
 が、定期的に回収する、ということは、この遺跡の最下層に誰かが定期的に取りに来る、ということである。

 最下層への道順に関しては、今回の探索で正確な地図が製作されたので迷うようなことはないだろう。
 が、最下層までの距離も然ることながら、地形を考えれば荷馬車などを使った大規模な輸送方法は使えない。
 となれば、人がその足と手で運搬するしかなく、相当な労力を要することは想像に難くない。
 では、どうやってその人手を確保するかが問題になってくるのだが……

 で、ここでセレスが突飛なことを言い出した。

 ガードナーを使えないか? と。
 
 古代の人達がゴーレムに命令を与えて制御していたとするなら、同じように別の命令を出すことも出来るのではないか? というのがセレスの考えだった。

 要は、ゴーレムを使って、遺跡の上の方まで運んでもらおう、ということである。

 その考え自体は俺も正しいと思った。が、問題は制御出来るかどうかである。
 なにせ、どんなシステムで動ているのかも分からない未知の技術だ。
 動力炉は上手く再稼働出来たが、ゴーレムも同じように行くとは限らない。

 が、やってみる価値くらいはあるだろうと、セレスにせっつかれながら解析作業に取り掛かることに……
 勿論、俺がである。
 うちの上司は非常に厳しいのだ。ぴえん。

 取り敢えず、ゴーレムの制御装置はあっさり見つかり……というか、動力炉前の部屋がやはりまんまゴーレムの制御室だったわけだが……一通り中身を見てみた結果……まぁ、出来てしまった。

 というのも、この一般ゴーレムだが、所謂ところのAIの様なもので制御されているらしく、こちらから事細かな設定をしなくても大雑把な指示だけで大体制御出来てしまうという、非常にシンプルな構造をしていたのである。

 本来のロボット制御など、超長文のプログラムを緻密に組み上げて行うものなのだが、プログラミング言語どころかソースもコードも、何それ? おいしいの? レベルでガン無視だ。

 こちらか指示することなど、何がどうなったどうするか? 程度のものだからな。正にイージーミッションだった。
 とはいえ、それはある程度の知識があった俺だからであって、セレスやマレアはチンプンカンプン状態だったがな。
 一応説明したのだが、セレスからはよく分からんと言われた。マレアに至っては途中で聞くの放棄してたくらいだ。

 で、そのイージーな一般ゴーレムに初期設定されていた初期命令だが、なんとたったの二つだけだった。

 一つは、指定エリアまで移動→エリア内のランダム徘徊→敵性存在を発見したら攻撃→排除するまで追走→排除完了後は定位置に戻りランダム徘徊再開。
 もう一つは、魔石の残存エネルギーが二割を切ったら、もしくは一定以上の破損をした場合、所定位置まで帰還→魔石交換もしくは破損部位の補修→交換、もしくは補修が済んだら指定エリアまで戻り以下ループ。以上
 だからな……
 正確にはもう少し細々としてものが色々とあるのだが、大まかにはこんな程度だ。

 そのおかげで、未知の言語のプログラムだったが、仕様さえ分かってしまえば使うのは簡単だった、というわけだ。

 現在では、あの遺跡内のゴーレムに限りだが、人を襲わないように設定し、魔石製造機で作った魔石を、第一大広間まで運搬する指令を出していた。

 最初は、もっと入り口付近まで運ぶことも考えたのだが、あまりに表層部まで運んで、誰かに見つかっても厄介だろうというマレアの指摘から、じゃあ取り敢えず、第一大広間ということで、という感じで話しがまとまったのだ。

 俺達が潜った七号遺跡の周辺には、侵入防止の結界が張られているが、過信はよくないからな。

 余談だが、メインリアクターの稼働に合わせて、遺跡内の設備がほぼフルで復帰していた。
 合わせて、大広間にいた合計一二体の巨大ゴーレムのそのすべてがアクティブ状態となってしまったのだが……
 
 一般ゴーレムと巨大ゴーレムとでは、その制御が別らしく、一般ゴーレムの制御室からは巨大ゴーレムにアクセス出来なかったため、現在は巨大ゴーレムに流れていたエネルギーだけを動力制御でカットする、という方法でその稼働を止めていた。

 要は、スイッチの場所が分からないならコンセントを抜けばいいじゃない、の発想だ。

 更に余談だが、今回の遺跡調査による発見物についてマレアから少し話が合った。
 なんでも、マレア曰く、お国からとんでもない額の報酬が出るのではないか? と言われたのだ。

 基本、遺跡内での発見物は、すべて発見者にその所有権が与えられる。
 国は、発見者から報酬を払い、発見物を買い取る、というのが基本的な流れだった。
 まぁ、そんな制度があるからこそ、一攫千金を夢見て遺跡に潜る輩が後を絶たないわけなのだが……

 それに関しては、俺は辞退していた。
 というか、セレスとの契約上、遺跡内での発見物に関してはすべてセレス……というか、神秘学研究会に権利を委譲する旨を取り交わしていた。
 以前、俺がセレスから金級自由騎士としての推薦を受ける条件が、それだったからな。

 なので、これらの発見物の報酬は全部、神秘学研究会が受け取ることになるだろう。 
 まぁ、俺としては今更そんなカネもいらないしな。

 と、答えたら、何故かセレスの方が顔面を蒼白にしていた。
 理由を聞いたら、金額が大きすぎて管理出来ない、みたいなことを言っていた。
 
 が、ぶっちゃけ、俺には関係ない話しなので、そっちの問題はそっちで解決してどうぞ、といった感じだ。
 
 で、そうこうしているうちに、俺の帰還日時が近づいて来ていたこともあり、大まかなことだけパパっと調べて帰還することに。
 流石に、すべてを調べるには時間的に無理があった。

 が、この帰還時にまた一悶着あった。
 ここに来てセレスが、一人でも残る、とか駄々を捏ねまくったのだ。
 俺が居なければ、生活物資など何もない状態だ。流石にあの場所に一人だけ残していくわけにもいかないので、力づくでの連行と相成った。
 これに関しては、最早安定の定期である。

 そうして昨日、俺は久しぶりに屋敷へと帰って来た、というわけだ。
 ちなみに、セレスとマレアはプレセアに報告があるとかで王都で別れていた。
 
 しかし、だ。

 帰って来たからと、遺跡の調査が終わったわけではなかった。
 というか、俺だけ残っているというか、俺にしか出来ないというか……
 それが、現在進行形で行っている資料の制作作業だった。

 俺達は特に重要と思えるものは優先して回収し、持ち帰って来ていた。
 勿論、俺の亜空間倉庫やらチェストボックスを使ってだがな。

 しかし、すべての資料が物理的に持ち帰れるものとは限らない。
 例えばそう、デジタル資料の存在だ。

 メインリアクターの制御室にあったコンピューターもどきの装置の中に保存されていた日誌等。
 それらの資料もまた、当時を知る貴重な情報が大量に含まれているものだった。

 とはいえ、そうしたデジタルな資料は物理的に持ち出せないため、持ち帰ることが不可能だった。
 プリンターの様な印刷装置がないか、一応探してはみたのだが見つからずじまい。

 もしかしたらメモリーカード的な記録媒体があるかもだが、そもそも再生する装置がないのでメモリーカードだけ持ち帰っても意味はない。

 アブノーマルな方法としては、絶対記憶を持つセレスが一度目を通せば、後で書き起こすことが可能といえば可能だが……量を考えると現実的ではなかった。

 そして、アブノーマルな方法……それも俺にしか出来ない方法がもう一つ。
 それが、画面をスクショで保存して、後でスキル【念写】で紙に書き起こす、という方法だった。

 俺にしか出来ないうえ、俺にしか分からない方法だ。
 話せば面倒なことになるくらい分かってはいた。黙ってやり過ごすことも出来た。
 が、黙っていて後でバレた時の方がよっぽど怖いので、素直に話したさ……
 こういうことも出来ますぜ、ってな。

 で、案の定、うちのボスが言うわけよ。じゃあやれ、と……なんたる非情。

 そんなことがあり、今、俺は遺跡内でスクショしてきた画像データを、人間プリンターとなってせっせと【念写】で印刷しているというわけだ。

 断言していい。遺跡内で、そして現在進行形で一番働いたのは俺だと。
 てか、セレスは実はブラック上司なのではないかと、そう最近思うようになった来た今日この頃であった。
  マジさげぽよ……


 
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