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2巻
2-2
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………
……
…
俺は今、荷台の前方部分に座っていた。大体、折れた轅の根元辺りだな。
そして、目の前には三つの魔術陣がある。
左右の二つは少し大きめの、そして、中央のは左右の半分ほどの大きさだ。
ここからは見えないが、荷車の底面にも大きなやつを二つ書いた。
そう、俺が試してみたかったことというのは、魔術陣による改修だった。
しかし……今回は即席品だ。
いつもなら作りたい魔術陣について各種下調べや下準備をした上で、ミスがないよう参考資料片手に書いていたのだが……
今回は何の準備もなしで、自分の現在の知識だけで書き上げた。
……正直、まともに動くかどうかすら怪しい。
「はぁ~ふぅ~……」
俺は一つ大きな深呼吸をすると……
「ていっ!」
意を決して左右の魔術陣の中心部分へと手を突いた。
「…………」
そして、一拍の後……
コロコロコロコロコロコロ……
「おっ、おおおぉぉぉぉっ!」
動いたっ! 動いたよっ!! 荷車が動いたっ!
俺が自力で作った魔術陣第一号は、無事成功したようだ。こうなると、なにか名前を付けたいな……
よしっ! 今日からこの荷車をクララと呼ぶことにしようっ!
荷車はゆっくりとだったが、確かにコロコロと前進を始めた。そして徐々に加速し、ある速度で一定になった。
大体、大人が歩く程度の速度だな。人によっては少し速いと感じるかもしれない、そんな速度だ。
しばらく直進したところで、俺は魔術陣から右手を離した。
すると、荷車の右の車輪から回転力が失われ、車体が右に弧を描き出す。
そのまま放っておくと、荷車はぐるりとその場で一回転をして元の場所へと戻ってきた。
そして、今度は左手を離して右手を突くと、左の車輪から回転力が失われる代わりに右の車輪が回転を始めた。
しばらくすると、また元の場所へと戻る。
適当な所で再度、左手を突くと、左の車輪が回転を始めて、荷車が前へと進み出す。
少し進んだところで今度は両手を離して、中央の魔術陣の真ん中部分に手を突いた。
ズザザザッ!
と同時に、両方の車輪はピタリとその動きを止めた。今まで軽快に回っていたのが嘘のようだ。
急に車輪がロックされたことで、荷車は車輪をスライドさせながら少しだけ前へと滑って、止まった。
おおっ! 完璧ではないかっ!
思い付くままに書いた魔術陣だったが、うまく機能してくれたらしい。
実を言えば、この荷車には、車に求められる最低限の機能、進む・曲がる・止まる、以外は何も出来ないのだ。
バック? 知らんな。スピードの調整? 出来ん。方向を決めるハンドルのような装置さえない。
ハンドルの機構は難しく、何よりそんなものを付けている時間などない。そんな時間があるなら、轅を修理する方法を考えるわ。
では、どのようにして荷車が動いているのかといえば、単純に車輪の回転をON・OFFすることで制御している。
前進したければ両方の、右折したければ左側の、左折したければ右側の車輪を回せば、それだけで車体を思い通りに動かすことが出来る。
このように、車輪の回転によって旋回を行う方法を信地旋回といい、戦車やショベルカーなんかの旋回方式がこれだ。
ちなみに、左右の車輪を互い違いに回転させて、その場から移動することなく旋回を行う方法を超信地旋回という。必殺技みたいで、なんだかカッコイイね。バックの出来ない今の荷車には到底無理な芸当だがな……
で、車輪のスイッチに該当するのが、荷台の前方部分に書かれた三つの魔術陣という訳だ。
左右に書かれた魔術陣が、それぞれの車輪のスイッチに対応した作りになっている。
この荷車を動かしている魔術陣には、脱水機に使用したものを応用した。
脱水機は、魔術陣の直上に回転力場を展開させ、その力場に籠を巻き込むことで籠を間接的に回転させていた。荷車はその力場に、荷車の車輪を巻き込むことで動いている。
魔術陣は、その効果を及ぼす場所を任意で指定することが可能だった。座標さえしっかり設定していれば、それがたとえ魔術陣の直上でなくても、魔術の効果を及ぼすことが出来るのだ。
極論ではあるが、それこそ目の届かない遥か彼方に、巨大な竜巻を発生させることだって理論の上では可能だった。
ただし、魔術陣から魔術の展開地点が離れれば離れるほど、その効果は著しく減衰するので、実際に実行するには途方もなく膨大な魔力が必要となってしまう。自分で言っておいてなんだが、正直、現実味のある話ではない。
だが、近距離であれば、この機能は大変便利なものだった。
この機能のお陰で、魔術陣の近くという制限はあるが、位置や向きに関係なく好きな場所に魔術の力場を展開することが出来るのだから。
故に、車輪の周囲だけ、なんてピンポイントな場所に回転力場を展開することだって造作ない。
だが便利な反面、力場の向きや座標など、より複雑な、若しくはより高度な制御をしようとした場合、書き込む構文の量が増加し、結果、魔術陣の巨大化へと繋がってしまう、という弊害もあった。
勿論、記入する文字を小さくすればそれだけ沢山書き込むことが出来るのだが、それにだって限界はある。
だいたい、所詮は手書きだ。あまり小さくし過ぎると今度は書き難くなってしまうので、どうしてもある一定の大きさより小さくするのは難しかった。
ナノインプリントみたいな微細加工技術でもあれば、また話は違うのだろうが。まぁ、ない物を欲しがったところで何も始まらないか。
で、そこに来てある技術が重要になってくる訳だ。それが、俺が〝重ね合わせ〟と呼んでいる技術だった。
荷台の上からでは分かりにくいのだが、荷車の車輪を回している魔術陣は二つのパーツから構成されている。一つは、車輪を回している駆動部で、もう一つが魔力を吸収している供給部だ。
荷台から見えている方が供給部で、駆動部は荷車の底面に書き込まれているので、外から見るのは少し難しい。
実は、魔術陣というものは〝空間的な繋がりを持っている〟ようだ、ということが今までの実験により分かっている。
二つの魔術陣を横並びに書いたとしても、互いに影響を与えるようなことはまずない。が、重ねると互いの魔術回路が干渉反応を起こすのだ。それが原因で、機能不全を起こすこともある。
だが、逆に考えれば〝重ねた魔術陣は連結する〟ということでもある。これはとんでもない発見だった。
つまり、魔術陣を各処理ごとにブロック分けして重ね合わせてまとめることで、高性能かつコンパクトな魔術陣を作り上げられるのである。
荷車に書き込んだ魔術陣も、この技術によって小型化を図っている。
流石に、全てを一つの魔術陣に収めていたのでは大きくなり過ぎて、横並びに二つも書けないからな。
勿論、重ね合わせにも細かなルールがあり、とにかく重ねればOKとはいかない。
神父様から貰ったあの赤本だってそうだ。あれなんて、モロに魔術陣が重なりまくってるのに、魔術が何一つ発動しなかったのは、そのルールをうまく回避するように魔術陣が書かれていたからだ。
それが偶然の産物なのか、それとも意図して行われたものなのか……
著者のエーベンハルト氏亡き今となっては、確かめる術はないが、俺はなんとなく後者なのではないか、と思っている。
と、まぁ魔術陣の法則云々はおいといて……
こうして、荷車は〝進む〟と〝曲がる〟という、二つの機能を手に入れたのだった。
では、残りの一つ。〝止まる〟についてはどうかというと、意外なことにあの焼き釜にも使った硬化の魔術陣がブレーキとしての役割を果たしているのだ。三つ並びになった中央の魔術陣が、これだ。
何故、硬化魔術陣がブレーキになるのか?
それは、この硬化魔術陣の新たに分かった性能、というか魔術陣自体が持つ法則のためだ。
魔術陣は、魔術陣が書かれた時に組み上がっている物体を一つの対象物として認識する……らしい。
らしい、とは俺自身がその辺りのことをはっきりと分かっていないからに他ならない。
例えば……〝木の板A〟にこの硬化魔術陣を書いた後に、〝木の板B〟を接着したとする。
その場合、魔術陣の効果は〝木の板A〟にのみ作用する。
しかし〝木の板A〟と〝木の板B〟を先に接着した上で、〝木の板A〟に魔術陣を書くと〝木の板B〟にも効果が作用するのだ。なるほど、良く分からんっ!
魔術陣に関しては、分かっていることより分かっていないことの方が断然多い。
なにしろコマンドだけで約五〇個×約一〇〇ページで、ざっと五〇〇〇コマンドはある。
その中で俺が理解しているものなど、現状一割にも満たない。使いこなすには、まだまだ先が長そうだ……
取りあえず今は、〝良く分からんが、機能しているのだからそれで良し〟ということにしている。
冷蔵庫やエアコンが何で冷えるのか? 電子レンジで何故水がお湯になるのか?
それらを詳しく説明することは出来ないけれど、便利だから使っているという人も多いだろう。それと同じことだな。
で、この硬化魔術陣を荷車が動いている時――厳密には車輪が回っている時に起動させるとどうなるかだが……
車軸と車輪が固着して回らなくなるのだ。要はブレーキとしての働きをしてくれるって訳だ。
コロコロコロ……コロコロコロ……
と、荷車は進む。
あれから、荷車を窯元のじーさんの所にいた人たちに見せたら、大変驚いていた。まぁ、洗濯機くらいであの騒ぎだった訳だから、車なんて物を持ち出したら言わずもがなである。
〝なんだコレは!? どうやって作った!?〟の質問攻めだったが、例の如く〝神父様〟+〝神父様の所にあった本に載っていた〟で誤魔化し通した。
別に、嘘は吐いてない。〝赤本〟は紛れもなく神父様が持っていた本だからな。
で、荷台にレンガを載せて荷車を走らせてみたところ難なく動いた。
今回は、前回の失敗から反省して、載せる量を二五〇個ほどに止めている。
前回はバカみたいに載せ過ぎた。素直に二五〇個ずつの二往復すればいいだけだ。
と、思っていたのだが……
「これ……思った以上に疲れるぞ……」
肉体的な話ではない。どちらかと言えば、精神的な疲れだ。
荷物なしの時はそれほど魔力を消費しなかった荷車だが、荷物を積んだ途端、荷車は俺からギュイギュイと魔力を吸い上げ始めたのだ。
今回の魔力吸収の論理回路に、吸収量の指定は特にしていなかった。
魔術陣は、その効果によって要求される魔力の量が違う。規模や効果が高くなればなるほど、要求される魔力は増える。当たり前だな。
今回作った回転魔術陣は速度をかなり低速に設定していた。だから、供給する魔力も非常に少なくなるため、わざわざ設定するほどではないだろう……と思ったのだ。現に無負荷の時は、ほとんど魔力を消耗しなかったのだから。
しかし、どうやら負荷の影響というのはきっちり受けるものらしい。負荷が軽い時は少量の魔力で済むが、重い時はそれ相応の魔力を消費する……
当然と言えば当然なのだが……どこか釈然としない。
〝魔術〟とか〝魔術陣〟とかファンタジーファンタジーしてるくせに、融通が利かないというか何というか……
そんなことを考えながら、レンガを載っけた荷車を河川敷の工事現場に向かって走らせるのだった。
帰り道。
河川敷で工事に従事していた者たちの反応は、概ね窯元の人たちと同じだった、とだけ言っておこう。
あっちこっちで、同じ説明をするのはホント疲れるね……
で、一度目のレンガの運搬が終わり、二度目の運搬のために窯元へ向かう俺だったが……
「だっ、だりぃ~……」
疲労困憊だった。別に、説明疲れではない。荷車に大量の魔力を持っていかれたのだ。
今は無負荷なので、荷車は軽快に転がっていたが……
〝もう、おでのからだはぼどぼどだぁ~〟であった。
たぶん、二往復目に出たら魔力欠乏症でぶっ倒れるな、これ。間違いない。
長時間にわたる魔力消費が、こんなにシンドイものだとは思わなかった。
今までは、急激に消耗して疲れを感じる前にぶっ倒れたか、そもそも疲労を感じるほど魔力を消費していなかったからな。
ずいぶん前に、ミーシャに〝疲れるまで〟魔力を使わせたことがあったが……これは、今度ちゃんとお詫びとお礼をしなくてはいけないな。
なんてことを考えながら、荷車を転がしていたら……
「うおおぉぉぉ!! なんだそれぇぇぇ!」
と、後ろからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。この声は……
俺は、荷車を一旦止めて振り返る。
案の定、少し離れた所でミーシャとその兄貴のグライブがこっちを向いて立っていた。
叫んだのは、勿論グライブだ……ホントグライブの奴は分かりやすいな。
ミーシャは驚いたような顔で、グライブは好奇心満々のキラッキラした目で俺のことを見ていた。
しかし、この二人がいるってことは学校はもう終わったのか……もう、そんな時間になってたんだな、気がつかなかった。
でも、なんでこんな所にいるのだろうか?
学校である教会はここから離れているし、そもそも彼らの家はこっちとは正反対の方向だ。だから帰り道、なんてことはないと思うだが。
「なんで、二人がこんな所にいるんだよ?」
近づいてきた二人に、俺は開口一番そう尋ねてみた。
「あ~、川でなんかやってる人たちがいて、その人たちに届け物だよ。父さんが、持って行けってさ」
要は、お使いか……
「そんなことより、ロディ! それなんだよ!? 牛もいないのに動いてたよなっ!」
グライブは興奮気味に俺にかぶり付いて来て、ミーシャはミーシャで無言のままコクコクと、首がもげるんじゃないかってくらい激しく頷いていた。
……お前は、赤ベコか。
「ああ、これはな……」
ということで、二人に荷車について軽く説明してやった。ホント今日何度目だよ、この話……
で、話している最中、俺の中でキュピーンと名案が思い浮かんだ。
「なぁ、グライブ君……これ、動かしてみたいと思わないかい?」
「えっ!? いいのかっ! マジで!? やるやるっ!!」
興味津々、といった顔つきで前のめりになるグライブ。
「ああ、いいともいいとも。操作はすご~く簡単だから……ね」
労働力ゲットだぜっ! ちょろいな、グライブよ……
早速荷車の運転をレクチャーし、練習がてら窯元のじーさんの所までグライブに運転させて戻ることにしたのだった。
………
……
…
が――
ピクッ……ピクッ……
「お~い……グライブ~大丈夫かぁ~」
「うっ……あっあ……」
グライブは俺の問いかけには応えず、ただただ呻き声を上げるばかりだった。
地面に転がり、ピクピクしている様はまさにゾンビのようだ。
二つ返事で意気揚々と引き受けたグライブ君でしたが、結果はこの有様だ。
俺の指示の下、窯元のじーさんの所までたどり着いたまでは良かったものの、荷車から飛び降りた途端、糸の切れた操り人形のようにパタリと倒れて動けなくなってしまったのだ。
これは、立派な魔力欠乏症の症状ですな。
俺も何度かなったことがあるが、今もこうして健康なのでグライブもそのうち良くなるだろう。
……そういえば神父様が、普段あまり魔力を使わない人は、たとえ消費した魔力が少量であっても、魔力欠乏症の症状が出ることがあるって言っていたっけか……
筋肉痛みたいなもんだな、きっと。
その後、グライブは地面に転がしたままって訳にはいかんので窯元のじーさんの家で休ませて、俺たちも昼の休憩を挟むことにした。
一応、グライブの付き添いということでミーシャも一緒だ。
しかし……
「う~ん、困った……もう少し休憩してからにするか……」
休憩明け。俺は、腕組みをしてふむと唸っていた。
「ロディくん? どうしたの?」
今までグライブの様子を見ていたミーシャが俺に寄って来て、そう声をかけた。
「ん? ああ、実はな……」
俺はミーシャに、今俺がしていることについて軽く教えてあげた。
荷車を使ってレンガを運搬していたこと、一度往復しただけで魔力が切れ掛かっていること、そして、休憩を挟んだはいいが魔力があまり回復していないこと……
これが、一番の問題だった。
魔力の残量というのは、ゲームのスタミナゲージのように〝あとどれくらい〟と、はっきりと自覚出来るものではない。
どれくらい休めばどれくらい回復する、というのもよく分からない。
だが、今までに二回の魔力欠乏症を経験した俺は、これ以上続けるとやばいかな? というのを、なんとなく分かるようになってきていた。
今の感覚だと、空の荷車なら問題ないが、レンガを積んで運ぶほどの魔力はおそらくない。
以前、魔力欠乏症から復帰するのに二時間程度掛かった。しかしさっきの休憩は三〇分くらいしかなかった。
単純に考えて回復量は四分の一といったところだろう。そのことを、包み隠さずミーシャに話すと……
「えっと……それ、私がやってもいいかな?」
ミーシャは遠慮がちにそんなことを言い出した。〝それ〟とは勿論、荷車によるレンガの運搬のことだ。
レンガを積んだ荷車の魔力の吸収量は結構エグい。
俺としては、女の子であるミーシャにそんなことはあまりさせたくなかったのだが、本人が、
「私、いっつもロディくんに助けてもらってばっかりだから……だからっ私ねっ! ロディくんのお手伝いがしたいのっ!」
と、泣けることを言ってくれたので、絶対に無理はしない、という条件で手伝ってもらおうと決めた。
うむ、もし何かあれば俺が止めればいいだけのことだ。何事も経験……そんなつもりでやらせてみると……
「あの~ミーシャさん? その、大丈夫でしょうか?」
「ん? 全然平気だよ?」
なんということでしょう!
荷物満載の荷車を、ミーシャは何でもないような顔で操っているではないかっ!
河川敷に着いた時も、まるで疲れた様子を見せず、そのまま窯元の家まで帰って来られた。
それでも、尚、本当に普通に振る舞っている。試しに疲れたか聞いてみると……
「ん~、全然」
うわ……なに? この幼女……怖っ!
ああ……そういえば、神父様が魔術に関してミーシャは天才だって、ベタ褒めしてたっけか……
その後、動けるようになったグライブ共々、俺たちは帰路に就いた。
さぁ、いよいよ明日は最終工程の組み付けだな。
……
…
俺は今、荷台の前方部分に座っていた。大体、折れた轅の根元辺りだな。
そして、目の前には三つの魔術陣がある。
左右の二つは少し大きめの、そして、中央のは左右の半分ほどの大きさだ。
ここからは見えないが、荷車の底面にも大きなやつを二つ書いた。
そう、俺が試してみたかったことというのは、魔術陣による改修だった。
しかし……今回は即席品だ。
いつもなら作りたい魔術陣について各種下調べや下準備をした上で、ミスがないよう参考資料片手に書いていたのだが……
今回は何の準備もなしで、自分の現在の知識だけで書き上げた。
……正直、まともに動くかどうかすら怪しい。
「はぁ~ふぅ~……」
俺は一つ大きな深呼吸をすると……
「ていっ!」
意を決して左右の魔術陣の中心部分へと手を突いた。
「…………」
そして、一拍の後……
コロコロコロコロコロコロ……
「おっ、おおおぉぉぉぉっ!」
動いたっ! 動いたよっ!! 荷車が動いたっ!
俺が自力で作った魔術陣第一号は、無事成功したようだ。こうなると、なにか名前を付けたいな……
よしっ! 今日からこの荷車をクララと呼ぶことにしようっ!
荷車はゆっくりとだったが、確かにコロコロと前進を始めた。そして徐々に加速し、ある速度で一定になった。
大体、大人が歩く程度の速度だな。人によっては少し速いと感じるかもしれない、そんな速度だ。
しばらく直進したところで、俺は魔術陣から右手を離した。
すると、荷車の右の車輪から回転力が失われ、車体が右に弧を描き出す。
そのまま放っておくと、荷車はぐるりとその場で一回転をして元の場所へと戻ってきた。
そして、今度は左手を離して右手を突くと、左の車輪から回転力が失われる代わりに右の車輪が回転を始めた。
しばらくすると、また元の場所へと戻る。
適当な所で再度、左手を突くと、左の車輪が回転を始めて、荷車が前へと進み出す。
少し進んだところで今度は両手を離して、中央の魔術陣の真ん中部分に手を突いた。
ズザザザッ!
と同時に、両方の車輪はピタリとその動きを止めた。今まで軽快に回っていたのが嘘のようだ。
急に車輪がロックされたことで、荷車は車輪をスライドさせながら少しだけ前へと滑って、止まった。
おおっ! 完璧ではないかっ!
思い付くままに書いた魔術陣だったが、うまく機能してくれたらしい。
実を言えば、この荷車には、車に求められる最低限の機能、進む・曲がる・止まる、以外は何も出来ないのだ。
バック? 知らんな。スピードの調整? 出来ん。方向を決めるハンドルのような装置さえない。
ハンドルの機構は難しく、何よりそんなものを付けている時間などない。そんな時間があるなら、轅を修理する方法を考えるわ。
では、どのようにして荷車が動いているのかといえば、単純に車輪の回転をON・OFFすることで制御している。
前進したければ両方の、右折したければ左側の、左折したければ右側の車輪を回せば、それだけで車体を思い通りに動かすことが出来る。
このように、車輪の回転によって旋回を行う方法を信地旋回といい、戦車やショベルカーなんかの旋回方式がこれだ。
ちなみに、左右の車輪を互い違いに回転させて、その場から移動することなく旋回を行う方法を超信地旋回という。必殺技みたいで、なんだかカッコイイね。バックの出来ない今の荷車には到底無理な芸当だがな……
で、車輪のスイッチに該当するのが、荷台の前方部分に書かれた三つの魔術陣という訳だ。
左右に書かれた魔術陣が、それぞれの車輪のスイッチに対応した作りになっている。
この荷車を動かしている魔術陣には、脱水機に使用したものを応用した。
脱水機は、魔術陣の直上に回転力場を展開させ、その力場に籠を巻き込むことで籠を間接的に回転させていた。荷車はその力場に、荷車の車輪を巻き込むことで動いている。
魔術陣は、その効果を及ぼす場所を任意で指定することが可能だった。座標さえしっかり設定していれば、それがたとえ魔術陣の直上でなくても、魔術の効果を及ぼすことが出来るのだ。
極論ではあるが、それこそ目の届かない遥か彼方に、巨大な竜巻を発生させることだって理論の上では可能だった。
ただし、魔術陣から魔術の展開地点が離れれば離れるほど、その効果は著しく減衰するので、実際に実行するには途方もなく膨大な魔力が必要となってしまう。自分で言っておいてなんだが、正直、現実味のある話ではない。
だが、近距離であれば、この機能は大変便利なものだった。
この機能のお陰で、魔術陣の近くという制限はあるが、位置や向きに関係なく好きな場所に魔術の力場を展開することが出来るのだから。
故に、車輪の周囲だけ、なんてピンポイントな場所に回転力場を展開することだって造作ない。
だが便利な反面、力場の向きや座標など、より複雑な、若しくはより高度な制御をしようとした場合、書き込む構文の量が増加し、結果、魔術陣の巨大化へと繋がってしまう、という弊害もあった。
勿論、記入する文字を小さくすればそれだけ沢山書き込むことが出来るのだが、それにだって限界はある。
だいたい、所詮は手書きだ。あまり小さくし過ぎると今度は書き難くなってしまうので、どうしてもある一定の大きさより小さくするのは難しかった。
ナノインプリントみたいな微細加工技術でもあれば、また話は違うのだろうが。まぁ、ない物を欲しがったところで何も始まらないか。
で、そこに来てある技術が重要になってくる訳だ。それが、俺が〝重ね合わせ〟と呼んでいる技術だった。
荷台の上からでは分かりにくいのだが、荷車の車輪を回している魔術陣は二つのパーツから構成されている。一つは、車輪を回している駆動部で、もう一つが魔力を吸収している供給部だ。
荷台から見えている方が供給部で、駆動部は荷車の底面に書き込まれているので、外から見るのは少し難しい。
実は、魔術陣というものは〝空間的な繋がりを持っている〟ようだ、ということが今までの実験により分かっている。
二つの魔術陣を横並びに書いたとしても、互いに影響を与えるようなことはまずない。が、重ねると互いの魔術回路が干渉反応を起こすのだ。それが原因で、機能不全を起こすこともある。
だが、逆に考えれば〝重ねた魔術陣は連結する〟ということでもある。これはとんでもない発見だった。
つまり、魔術陣を各処理ごとにブロック分けして重ね合わせてまとめることで、高性能かつコンパクトな魔術陣を作り上げられるのである。
荷車に書き込んだ魔術陣も、この技術によって小型化を図っている。
流石に、全てを一つの魔術陣に収めていたのでは大きくなり過ぎて、横並びに二つも書けないからな。
勿論、重ね合わせにも細かなルールがあり、とにかく重ねればOKとはいかない。
神父様から貰ったあの赤本だってそうだ。あれなんて、モロに魔術陣が重なりまくってるのに、魔術が何一つ発動しなかったのは、そのルールをうまく回避するように魔術陣が書かれていたからだ。
それが偶然の産物なのか、それとも意図して行われたものなのか……
著者のエーベンハルト氏亡き今となっては、確かめる術はないが、俺はなんとなく後者なのではないか、と思っている。
と、まぁ魔術陣の法則云々はおいといて……
こうして、荷車は〝進む〟と〝曲がる〟という、二つの機能を手に入れたのだった。
では、残りの一つ。〝止まる〟についてはどうかというと、意外なことにあの焼き釜にも使った硬化の魔術陣がブレーキとしての役割を果たしているのだ。三つ並びになった中央の魔術陣が、これだ。
何故、硬化魔術陣がブレーキになるのか?
それは、この硬化魔術陣の新たに分かった性能、というか魔術陣自体が持つ法則のためだ。
魔術陣は、魔術陣が書かれた時に組み上がっている物体を一つの対象物として認識する……らしい。
らしい、とは俺自身がその辺りのことをはっきりと分かっていないからに他ならない。
例えば……〝木の板A〟にこの硬化魔術陣を書いた後に、〝木の板B〟を接着したとする。
その場合、魔術陣の効果は〝木の板A〟にのみ作用する。
しかし〝木の板A〟と〝木の板B〟を先に接着した上で、〝木の板A〟に魔術陣を書くと〝木の板B〟にも効果が作用するのだ。なるほど、良く分からんっ!
魔術陣に関しては、分かっていることより分かっていないことの方が断然多い。
なにしろコマンドだけで約五〇個×約一〇〇ページで、ざっと五〇〇〇コマンドはある。
その中で俺が理解しているものなど、現状一割にも満たない。使いこなすには、まだまだ先が長そうだ……
取りあえず今は、〝良く分からんが、機能しているのだからそれで良し〟ということにしている。
冷蔵庫やエアコンが何で冷えるのか? 電子レンジで何故水がお湯になるのか?
それらを詳しく説明することは出来ないけれど、便利だから使っているという人も多いだろう。それと同じことだな。
で、この硬化魔術陣を荷車が動いている時――厳密には車輪が回っている時に起動させるとどうなるかだが……
車軸と車輪が固着して回らなくなるのだ。要はブレーキとしての働きをしてくれるって訳だ。
コロコロコロ……コロコロコロ……
と、荷車は進む。
あれから、荷車を窯元のじーさんの所にいた人たちに見せたら、大変驚いていた。まぁ、洗濯機くらいであの騒ぎだった訳だから、車なんて物を持ち出したら言わずもがなである。
〝なんだコレは!? どうやって作った!?〟の質問攻めだったが、例の如く〝神父様〟+〝神父様の所にあった本に載っていた〟で誤魔化し通した。
別に、嘘は吐いてない。〝赤本〟は紛れもなく神父様が持っていた本だからな。
で、荷台にレンガを載せて荷車を走らせてみたところ難なく動いた。
今回は、前回の失敗から反省して、載せる量を二五〇個ほどに止めている。
前回はバカみたいに載せ過ぎた。素直に二五〇個ずつの二往復すればいいだけだ。
と、思っていたのだが……
「これ……思った以上に疲れるぞ……」
肉体的な話ではない。どちらかと言えば、精神的な疲れだ。
荷物なしの時はそれほど魔力を消費しなかった荷車だが、荷物を積んだ途端、荷車は俺からギュイギュイと魔力を吸い上げ始めたのだ。
今回の魔力吸収の論理回路に、吸収量の指定は特にしていなかった。
魔術陣は、その効果によって要求される魔力の量が違う。規模や効果が高くなればなるほど、要求される魔力は増える。当たり前だな。
今回作った回転魔術陣は速度をかなり低速に設定していた。だから、供給する魔力も非常に少なくなるため、わざわざ設定するほどではないだろう……と思ったのだ。現に無負荷の時は、ほとんど魔力を消耗しなかったのだから。
しかし、どうやら負荷の影響というのはきっちり受けるものらしい。負荷が軽い時は少量の魔力で済むが、重い時はそれ相応の魔力を消費する……
当然と言えば当然なのだが……どこか釈然としない。
〝魔術〟とか〝魔術陣〟とかファンタジーファンタジーしてるくせに、融通が利かないというか何というか……
そんなことを考えながら、レンガを載っけた荷車を河川敷の工事現場に向かって走らせるのだった。
帰り道。
河川敷で工事に従事していた者たちの反応は、概ね窯元の人たちと同じだった、とだけ言っておこう。
あっちこっちで、同じ説明をするのはホント疲れるね……
で、一度目のレンガの運搬が終わり、二度目の運搬のために窯元へ向かう俺だったが……
「だっ、だりぃ~……」
疲労困憊だった。別に、説明疲れではない。荷車に大量の魔力を持っていかれたのだ。
今は無負荷なので、荷車は軽快に転がっていたが……
〝もう、おでのからだはぼどぼどだぁ~〟であった。
たぶん、二往復目に出たら魔力欠乏症でぶっ倒れるな、これ。間違いない。
長時間にわたる魔力消費が、こんなにシンドイものだとは思わなかった。
今までは、急激に消耗して疲れを感じる前にぶっ倒れたか、そもそも疲労を感じるほど魔力を消費していなかったからな。
ずいぶん前に、ミーシャに〝疲れるまで〟魔力を使わせたことがあったが……これは、今度ちゃんとお詫びとお礼をしなくてはいけないな。
なんてことを考えながら、荷車を転がしていたら……
「うおおぉぉぉ!! なんだそれぇぇぇ!」
と、後ろからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。この声は……
俺は、荷車を一旦止めて振り返る。
案の定、少し離れた所でミーシャとその兄貴のグライブがこっちを向いて立っていた。
叫んだのは、勿論グライブだ……ホントグライブの奴は分かりやすいな。
ミーシャは驚いたような顔で、グライブは好奇心満々のキラッキラした目で俺のことを見ていた。
しかし、この二人がいるってことは学校はもう終わったのか……もう、そんな時間になってたんだな、気がつかなかった。
でも、なんでこんな所にいるのだろうか?
学校である教会はここから離れているし、そもそも彼らの家はこっちとは正反対の方向だ。だから帰り道、なんてことはないと思うだが。
「なんで、二人がこんな所にいるんだよ?」
近づいてきた二人に、俺は開口一番そう尋ねてみた。
「あ~、川でなんかやってる人たちがいて、その人たちに届け物だよ。父さんが、持って行けってさ」
要は、お使いか……
「そんなことより、ロディ! それなんだよ!? 牛もいないのに動いてたよなっ!」
グライブは興奮気味に俺にかぶり付いて来て、ミーシャはミーシャで無言のままコクコクと、首がもげるんじゃないかってくらい激しく頷いていた。
……お前は、赤ベコか。
「ああ、これはな……」
ということで、二人に荷車について軽く説明してやった。ホント今日何度目だよ、この話……
で、話している最中、俺の中でキュピーンと名案が思い浮かんだ。
「なぁ、グライブ君……これ、動かしてみたいと思わないかい?」
「えっ!? いいのかっ! マジで!? やるやるっ!!」
興味津々、といった顔つきで前のめりになるグライブ。
「ああ、いいともいいとも。操作はすご~く簡単だから……ね」
労働力ゲットだぜっ! ちょろいな、グライブよ……
早速荷車の運転をレクチャーし、練習がてら窯元のじーさんの所までグライブに運転させて戻ることにしたのだった。
………
……
…
が――
ピクッ……ピクッ……
「お~い……グライブ~大丈夫かぁ~」
「うっ……あっあ……」
グライブは俺の問いかけには応えず、ただただ呻き声を上げるばかりだった。
地面に転がり、ピクピクしている様はまさにゾンビのようだ。
二つ返事で意気揚々と引き受けたグライブ君でしたが、結果はこの有様だ。
俺の指示の下、窯元のじーさんの所までたどり着いたまでは良かったものの、荷車から飛び降りた途端、糸の切れた操り人形のようにパタリと倒れて動けなくなってしまったのだ。
これは、立派な魔力欠乏症の症状ですな。
俺も何度かなったことがあるが、今もこうして健康なのでグライブもそのうち良くなるだろう。
……そういえば神父様が、普段あまり魔力を使わない人は、たとえ消費した魔力が少量であっても、魔力欠乏症の症状が出ることがあるって言っていたっけか……
筋肉痛みたいなもんだな、きっと。
その後、グライブは地面に転がしたままって訳にはいかんので窯元のじーさんの家で休ませて、俺たちも昼の休憩を挟むことにした。
一応、グライブの付き添いということでミーシャも一緒だ。
しかし……
「う~ん、困った……もう少し休憩してからにするか……」
休憩明け。俺は、腕組みをしてふむと唸っていた。
「ロディくん? どうしたの?」
今までグライブの様子を見ていたミーシャが俺に寄って来て、そう声をかけた。
「ん? ああ、実はな……」
俺はミーシャに、今俺がしていることについて軽く教えてあげた。
荷車を使ってレンガを運搬していたこと、一度往復しただけで魔力が切れ掛かっていること、そして、休憩を挟んだはいいが魔力があまり回復していないこと……
これが、一番の問題だった。
魔力の残量というのは、ゲームのスタミナゲージのように〝あとどれくらい〟と、はっきりと自覚出来るものではない。
どれくらい休めばどれくらい回復する、というのもよく分からない。
だが、今までに二回の魔力欠乏症を経験した俺は、これ以上続けるとやばいかな? というのを、なんとなく分かるようになってきていた。
今の感覚だと、空の荷車なら問題ないが、レンガを積んで運ぶほどの魔力はおそらくない。
以前、魔力欠乏症から復帰するのに二時間程度掛かった。しかしさっきの休憩は三〇分くらいしかなかった。
単純に考えて回復量は四分の一といったところだろう。そのことを、包み隠さずミーシャに話すと……
「えっと……それ、私がやってもいいかな?」
ミーシャは遠慮がちにそんなことを言い出した。〝それ〟とは勿論、荷車によるレンガの運搬のことだ。
レンガを積んだ荷車の魔力の吸収量は結構エグい。
俺としては、女の子であるミーシャにそんなことはあまりさせたくなかったのだが、本人が、
「私、いっつもロディくんに助けてもらってばっかりだから……だからっ私ねっ! ロディくんのお手伝いがしたいのっ!」
と、泣けることを言ってくれたので、絶対に無理はしない、という条件で手伝ってもらおうと決めた。
うむ、もし何かあれば俺が止めればいいだけのことだ。何事も経験……そんなつもりでやらせてみると……
「あの~ミーシャさん? その、大丈夫でしょうか?」
「ん? 全然平気だよ?」
なんということでしょう!
荷物満載の荷車を、ミーシャは何でもないような顔で操っているではないかっ!
河川敷に着いた時も、まるで疲れた様子を見せず、そのまま窯元の家まで帰って来られた。
それでも、尚、本当に普通に振る舞っている。試しに疲れたか聞いてみると……
「ん~、全然」
うわ……なに? この幼女……怖っ!
ああ……そういえば、神父様が魔術に関してミーシャは天才だって、ベタ褒めしてたっけか……
その後、動けるようになったグライブ共々、俺たちは帰路に就いた。
さぁ、いよいよ明日は最終工程の組み付けだな。
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