噓つきのカラクリ

ひろか

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 部屋に戻りコルセットを外してもらい、厚い化粧を落とした。

「はぁぁー!」

 開放感からベッドに大の字になる。
 上質なベッドはふわんふわんだった。

「あー、気持ちいー、あー、すぐ寝れそう、あー……………………」


 寝れない。


 疲れているのに寝れない。頭が妙に冴えてる。
 月が綺麗な夜だ。

「……よし」

 テラスに出ると風が気持ちよかった。
 弱小国マルティナ王女に与えられた部屋は弱小国に相応しく、王宮から一番離れた部屋だった。ハイディエル国のうちの国への扱いがよくわかるが、文句はない。離れ部屋だが庭は美しく整えられて色とりどりの花が咲いていた。

 ちょっと外出てみようかな。

 着ているものは寝間着のワンピースだが、肩にショールをはおり素足のまま柔らかな芝生に足をつけた。
 雑草一つなく整えられた庭は、所々に小さな明かりが灯してある。名前は知らない花を眺めながら花のアーチをくぐれば玻璃の東屋に出た。

「わぁ……」

 続く、めっさ金かけてるなぁの言葉は心で呟いた。

「誰だ」
「ひっ!」

 振り向いた先にいた男の顔に見覚えがあった。王太子の側近の一人だ。

「君は誰だ、こんな時間になにをしている」

 歩み寄られ後退。

「ここはハシノ国マルティナ王女の、ん、その顔」

 しまった! 髪! カツラ忘れてた!!

 アズラエルは銀髪。月明りでもとても金には見えない銀の長い髪。

「あ……」

 やばい……、もうバレた。

「そうか、君はマルティナ王女の縁者か」

 双子だから当たり前。マルティナ王女そっくりな顔を見てそう確信持って問われればここは頷くしかなかった。

「い、従妹、です」

 うぅ! お兄ちゃん! オレやっぱりここでも男に見られません!!

「失礼しました、名前を教えてくれませんか?」

 な、名前!?

「私はセルジュ・アラン」
「う、わ、私は、ア……、えっと、ラ、ラズリエルと申します……」

 焦ってついたウソは本名とたいして変わらないもの。

「ラズリエル嬢、美しい貴女に似合ういい名前だな」

 うひ、なにそれ、かゆ。さぶイボ出るわ。

「もう夜も遅い、部屋まで送りましょう」

 と、差し出される手。

「いいいい、いえ! ひ、一人で帰れますから! さよならー!」

 来た道を裸足のまま駆け出した。

 びっくりしたぁ、やば、寝よ、もう寝よ!

 布団に潜り込み、ドキドキしながらこの国にいる間はカツラ外すまいと一人反省会し就寝したが、翌朝、ラズリエル宛てにセルジュから花が届いた。

「は、はは……」

 侍女たち一同も、頬を引きつらせている。

「アズラエル様、これは、どういうことですか?」

 乳母であり侍女頭のタマオからの追求に全てを話し、正座させられめっさ怒られた。

 一応、オレ、ハシノ国の第二王子なんですけど?


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