恋をしたのは君の方だった

星乃芽

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??日目

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私はあれからマスコミを避けつつ、普通に学校に行った。最初はクラスメイトから心配の声やどんなふうに生活していたのか興味の眼差しを向けられた。

でもそれは3日ほどで鎮火し、私はまた聞きたくもない授業を淡々と聞き、誰の目にも入らないように静かに生きた。

そしてどこかでまたあの人がぶつかってくれるんじゃないかと期待しながら登下校した。

2人で生きた15日の家は元々空き家だったので捜査の後取り壊された。

それからいく日かの日々が過ぎ、私は高校を卒業し大学院に通っていた。

あの日あの人に背中を押されたように私は研究者の道を志した。

毎日毎日勉強勉強の日々で正直クタクタだったが、私があの日々で書いていた日記を読み返しながら、あの人の感覚を胸に生きていた。





「――――続いてのニュースです」

私は一人暮らしをしていていつものごとく朝のニュースを見ながら味噌汁を飲もうとした。

そしてその一口を火傷した。

「あちっ」

舌がヒリヒリしたので私は水をゴクっと飲んだ。

「――――とのことです」

火傷したことに気を取られていてニュースが耳に入っていなかった。

何かを伝えていたテレビをふと見た。

もう次のニュースに切り替わる寸前だったのか、私が見た2秒後にはアナウンサーの顔だった。

ガチャン

私は持っていた箸を落とした。

それはもう一度恋に落ちるようなあの感覚。味わったことあるあの気持ち。

私が見紛うはずがなかった。だってあの半月の日々を24時間ずっと過ごしていたんだ。

なんならあなたの家族より私の方があなたを知っているかもしれない。

私は考える間に荷物を持って外に走っていた。

どこに向かうかはもう考えている。刑務所だ。この県ではここしかないと知っていた。

だから私は走った。何も考えず、ただ会いたくて、言いたくて、触れたくて…

見えた。少し猫背になった変わらない雰囲気を纏ったあの人は私の方に向かって歩いている最中だった。

川瀬陽は今日刑務所を出て、日常に溶け込むところだった。

私は息を切らして尋ねた。

「あ、あの…川瀬陽ですか…?」

あの人は目を見開き、目にきらりと光らせるものを流した。それはちょうど日光に反射して虹のような明るさをしていた。

「夏世…?」

「そう、そうだよ…!」

私は涙が止まらなかった。何年経っても私は陽さんを忘れられなかった。ずっと初恋は続いていた。いつ会えるかも、もう一度結ばれるかもわからないまま、ずっと待っていたのかもしれない。

陽さんは涙を拭いながらハハッと笑って私を抱きしめた。私もそれに応えるように抱きしめ返した。

どれくらいこうしていただろう。

人通りの少ないこの道は私と陽さん2人だけの時間を取り戻すのに十分だった。

フワッと腕の締め付けが軽くなり、陽さんは私に目を合わせてこう言った。

「結婚してくれませんか」

私は一瞬驚いた。でも恋は盲目だった。

「はい…!」

恋は人の目の広さを狭める。だからこういうバカなことも言ってしまう。

私は後先何も考えずに答えてしまったのかもしれない。でももうこの人しかいない、そう思える、辞書には載っていない何かを感じたから。

私たちは軽く触れるようなキスをなんとなく惹かれるようにした。そして手を繋ぎ私が元来た道を辿って行った。あの日の日常に帰って行くように。どこまでもどこまでも。
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