24 / 35
第2章 クリューガー公国との戦い
森の襲撃者
しおりを挟む
中央街道を行く部隊。先日のミュットフルトへの進軍とは違い、兵士たちの出で立ちも鮮やかである。何本ものクリューガー家の紋章旗がはためき、楽隊も伴っていた。
それもそのはず、これは帝国首都オスト=ペシュトへ『公爵位』の正式な世襲を嘆願するための公式な使節団であった。ラディム公太子自ら、帝国身分制議会へ嘆願を行うためであった。アロイジウス公爵の生前退位願いとクリューガー公爵家当主の印璽を携え、そして何より先程の戦いの結果はすでに帝国首都にも届いているだろうから。
隊列の中程を行くラディム公太子。その隣にはカレルの姿が、寄り添うように後を付く。護衛役兼副使、というのが彼の仕事であった。本来ならばレムケ卿あたりがその役に適任であったが、戦後処理がまだ手に追える状態ではない。そこで、カレルの抜擢となったのだ。
「副使殿――クバーセク殿」
人懐っこくラディムがカレルの名を呼ぶ。年の差は四、五歳くらいだろうか。だが身長は同じくらいに見えた。
「何か」
目も合わせず馬を進めながら、そう答えるカレル。
「いや、クバーセク殿にはいつも女性の軍服をまとっておられたのに、今日は男性のものであるのはなにか意味が」
「意味は――色々あります。命令とあればお話いたしますが」
「いや、それには及ばない」
それ以降無言になるカレル。ラディムにも状況はわかっていた。公的な副使に異装は好ましくないという判断であろう。
では逆に――なぜ通常、カレルは常に女性の格好をしているのか――という疑問が浮かび上がる。正直、見た目はほぼ少女の姿である。しかし、相手を油断させるためという理由でもなさそうだ。先日見た鬼神の如きカレルの活躍は、いまだにラディムの目に焼き付いている。
一度だけラディムはハルトウィンに、カレルの女装の意味を聞いたことがあった。ハルトウィンも少し困ったような顔をして、首を振ったのを覚えていた。
一隊は森の中の街道に至る。道が少し細くなり、隊列もやや渋滞した。
なにやら風をきる音が響き渡る。
それに即座に反応するカレル。
あっという間に地面に馬ごと引き倒されるラディム。
そして、カレルは右手を大きく上げ短銃から弾丸を放つ。
「賊だ!皇太子殿下をお守りせよ!」
その命令に、カレルの周辺の兵士たちがラディムの周りを取り囲む。小型の盾で守りを固めながら。
その盾が激しい金属音を上げる。いくつもの弓が木々の中から発射されてきたのだ。
盾の隙間から、ボウガンで応戦を試みる兵士たち。しかし、相手の場所がなかなかつかめない。数は多くないようだが、多方向から狙撃を試みているようだった。
「後、三〇いや二〇秒持ちこたえさせろよ」
両手に『魔弾』を乗せ、目を閉じ詠唱をするカレル。ゆっくりと『魔弾』から光の煙が沸き立つ。
その姿を地面にひれ伏しながらじっと見るラディム。
帝国首都オスト=ペシュトまで後、三〇カロの道のり途上の出来事であった――
それもそのはず、これは帝国首都オスト=ペシュトへ『公爵位』の正式な世襲を嘆願するための公式な使節団であった。ラディム公太子自ら、帝国身分制議会へ嘆願を行うためであった。アロイジウス公爵の生前退位願いとクリューガー公爵家当主の印璽を携え、そして何より先程の戦いの結果はすでに帝国首都にも届いているだろうから。
隊列の中程を行くラディム公太子。その隣にはカレルの姿が、寄り添うように後を付く。護衛役兼副使、というのが彼の仕事であった。本来ならばレムケ卿あたりがその役に適任であったが、戦後処理がまだ手に追える状態ではない。そこで、カレルの抜擢となったのだ。
「副使殿――クバーセク殿」
人懐っこくラディムがカレルの名を呼ぶ。年の差は四、五歳くらいだろうか。だが身長は同じくらいに見えた。
「何か」
目も合わせず馬を進めながら、そう答えるカレル。
「いや、クバーセク殿にはいつも女性の軍服をまとっておられたのに、今日は男性のものであるのはなにか意味が」
「意味は――色々あります。命令とあればお話いたしますが」
「いや、それには及ばない」
それ以降無言になるカレル。ラディムにも状況はわかっていた。公的な副使に異装は好ましくないという判断であろう。
では逆に――なぜ通常、カレルは常に女性の格好をしているのか――という疑問が浮かび上がる。正直、見た目はほぼ少女の姿である。しかし、相手を油断させるためという理由でもなさそうだ。先日見た鬼神の如きカレルの活躍は、いまだにラディムの目に焼き付いている。
一度だけラディムはハルトウィンに、カレルの女装の意味を聞いたことがあった。ハルトウィンも少し困ったような顔をして、首を振ったのを覚えていた。
一隊は森の中の街道に至る。道が少し細くなり、隊列もやや渋滞した。
なにやら風をきる音が響き渡る。
それに即座に反応するカレル。
あっという間に地面に馬ごと引き倒されるラディム。
そして、カレルは右手を大きく上げ短銃から弾丸を放つ。
「賊だ!皇太子殿下をお守りせよ!」
その命令に、カレルの周辺の兵士たちがラディムの周りを取り囲む。小型の盾で守りを固めながら。
その盾が激しい金属音を上げる。いくつもの弓が木々の中から発射されてきたのだ。
盾の隙間から、ボウガンで応戦を試みる兵士たち。しかし、相手の場所がなかなかつかめない。数は多くないようだが、多方向から狙撃を試みているようだった。
「後、三〇いや二〇秒持ちこたえさせろよ」
両手に『魔弾』を乗せ、目を閉じ詠唱をするカレル。ゆっくりと『魔弾』から光の煙が沸き立つ。
その姿を地面にひれ伏しながらじっと見るラディム。
帝国首都オスト=ペシュトまで後、三〇カロの道のり途上の出来事であった――
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる