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第3章 南の海を目指して
吹雪の旅路
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吹雪く風。
寒い、と言うよりは痛みすら感じる。小さなテントに野営する四人。真ん中には携帯用のストーブが据え付けられ、その周りに身を寄せ合うように囲む。
すでに帝国の国境は越えたはずだ。はず、というのは国境線がどこなのか一向にわからないのだ。
アルブスタン山脈はアリタニア半島の付け根に位置する大山脈である。大軍の行軍は不可能であり、数本の獣道のような山道が唯一の交通手段である。この山脈がいわば自然の国境、民族の分水嶺となっていた。
「この季節に吹雪とは......さすがは『魔の峠』、尋常ではないですね」
いくつもマントを着込んだ小さな女性がそうつぶやく。彼女は何度もこの峠を商用で超えたことがあったが、今回は極めつけであった。
「ルーマン様は経験あるからいいけどよ。寒いのは苦手なんだよな、俺......」
そう言いながら軽装の鎧を身に着けた女性がそう答える。浅黒い肌が心なしか震えていた。その表面に刻まれた傷とともに。
「バルトシーク殿には申し訳ない。私が無理にこうたばかりに」
そう、長いローブのような衣装を羽織った女性が済まなそうに謝る。くすくすと傍らの少年が笑みをもらす。
「ハルトウィンどの魔法術があれば、凍死するとこはないでしょう。もし必要なら私も」
「公爵閣下にそのようなことをしていただくわけには......」
さらにすまなさそうにするハルトウィン。少年はそっと体を寄せる。
テントの中にいるのは
ゼーバルト辺境伯ハルトウィン
元商人で、現在では辺境伯軍団参謀長イェルド=ルーマン
ハレンスブルク商業参事会女傭兵隊長にて現在は辺境伯警護室長ドラホスラフ=バルトシーク
そして、最近公爵位を世襲したラディム=フォン=クリューガー公爵の四人である。
(......なぜこのような人選になってしまったのか......)
ハルトウィンは思わず目を閉じる。
本来ならば自分と護衛のカレル、そして数名の兵士で隠密理にアリタニアン半島に赴くつもりであった。ゼーバルトなりクリューガーの名前を出して大軍で赴くのは色々、差し障りがあるように思われたからだ。旅の『目的』から考えても、『お忍び』となるのは当然の判断である。
しかし――
目の前の三名を見回すハルトウィン。
携帯食料をむしゃむしゃと平らげるドラホスラフ。
なにやら占いを始めるイェルド。
そして、それを楽しそう見つめるラディム少年。
なんでこんな事になったのかという記憶を探りながら――
寒い、と言うよりは痛みすら感じる。小さなテントに野営する四人。真ん中には携帯用のストーブが据え付けられ、その周りに身を寄せ合うように囲む。
すでに帝国の国境は越えたはずだ。はず、というのは国境線がどこなのか一向にわからないのだ。
アルブスタン山脈はアリタニア半島の付け根に位置する大山脈である。大軍の行軍は不可能であり、数本の獣道のような山道が唯一の交通手段である。この山脈がいわば自然の国境、民族の分水嶺となっていた。
「この季節に吹雪とは......さすがは『魔の峠』、尋常ではないですね」
いくつもマントを着込んだ小さな女性がそうつぶやく。彼女は何度もこの峠を商用で超えたことがあったが、今回は極めつけであった。
「ルーマン様は経験あるからいいけどよ。寒いのは苦手なんだよな、俺......」
そう言いながら軽装の鎧を身に着けた女性がそう答える。浅黒い肌が心なしか震えていた。その表面に刻まれた傷とともに。
「バルトシーク殿には申し訳ない。私が無理にこうたばかりに」
そう、長いローブのような衣装を羽織った女性が済まなそうに謝る。くすくすと傍らの少年が笑みをもらす。
「ハルトウィンどの魔法術があれば、凍死するとこはないでしょう。もし必要なら私も」
「公爵閣下にそのようなことをしていただくわけには......」
さらにすまなさそうにするハルトウィン。少年はそっと体を寄せる。
テントの中にいるのは
ゼーバルト辺境伯ハルトウィン
元商人で、現在では辺境伯軍団参謀長イェルド=ルーマン
ハレンスブルク商業参事会女傭兵隊長にて現在は辺境伯警護室長ドラホスラフ=バルトシーク
そして、最近公爵位を世襲したラディム=フォン=クリューガー公爵の四人である。
(......なぜこのような人選になってしまったのか......)
ハルトウィンは思わず目を閉じる。
本来ならば自分と護衛のカレル、そして数名の兵士で隠密理にアリタニアン半島に赴くつもりであった。ゼーバルトなりクリューガーの名前を出して大軍で赴くのは色々、差し障りがあるように思われたからだ。旅の『目的』から考えても、『お忍び』となるのは当然の判断である。
しかし――
目の前の三名を見回すハルトウィン。
携帯食料をむしゃむしゃと平らげるドラホスラフ。
なにやら占いを始めるイェルド。
そして、それを楽しそう見つめるラディム少年。
なんでこんな事になったのかという記憶を探りながら――
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