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第1章 進学校の日常と非日常
お店、お助けします
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「おお、なかなか似合うではないか」
あごに手のひらを乗せ目を細めるイチ架。眼の前にはあわれ、メイドの衣装を強制的に着せられた都トとつぐさ。都トは少しもじもじしている。一方、つぐさはやる気満々。
「部長!この格好で何をするのですか?」
右手を上げつぐさが質問する。
腕を組みながらイチ架が答える。
「これは、いわばわが文芸部の制服である。文学を志すもの、まずは外見にこだわりたいものだ」
それは文芸部ではなくてメイド同好会もしくはコスプレ同好会なのでは、と都トは心のなかでつぶやく。
『書を捨てよ。町に行こう』
部室の壁に貼ってあるポスターを指差すイチ架。
「これはわが文芸部に伝わる部訓である」
「なんか聞いたことあります」
都トがため息混じりにそうつぶやく。
「ほう、それほどまでに我が部の部訓がなりひびいているのか」
いや。多分パクリですそれ、と心なんかでイチ架がつっこむ。
「文学は部屋のなかで万年筆をこねくりまわしているばかりではよろしくない。図書館にこもり古今東西の名作を読み耽る。これもまた良くない。文学には、実地が必要である。よろこべ後輩よ。われが諸君らを誘おうではないか。現実のリアルを見つけるために――」
おう!とつぐさは応える。
「われにつづけ!賽は投げられた!」
メイド姿の三人は街へと繰り出すこととなる――
「ここだ」
駅前。やや路地の奥の雑居ビル。非常階段を上り、慣れた様子で非常ドアを開くイチ架。
非日常の世界にメイド姿のつぐさはわくわくする。
それをじっと見つめる都ト。思わずため息が出る。まあ、つぐさが喜んでいるならそれでもいいか、とも思いながら。
「イチカ、入ります!」
そう言いながらどかどかと部屋の中に立ち入るイチ架。
更衣室のような部屋。ロッカーなども並んでいる。
「あれ、今日勤務だったっけ?」
メイド姿の女性がそう声をかける。
「店長!メイドが足りないと言ってましたよね。連れてきました!」
あらあら、と店長が応える。
(メイドが......足りない......?ちょいまて)
都トは分析する。
答えは簡単。
どうやら不足していたメイドの補充に、自分たちが充てられているという事実である。
「とりあえず、お試しで働いてみる?今日、メイドさん少ないの」
店長と呼ばれた女性がそう提案する。
「私の後輩なので、私が指導します!お任せあれ!」
イチ架が胸をどんと叩く。
つぐさは状況を理解できずにただただ不思議な顔をしているばかりである。
都トはそんなつぐさをじっと見つめていた――
あごに手のひらを乗せ目を細めるイチ架。眼の前にはあわれ、メイドの衣装を強制的に着せられた都トとつぐさ。都トは少しもじもじしている。一方、つぐさはやる気満々。
「部長!この格好で何をするのですか?」
右手を上げつぐさが質問する。
腕を組みながらイチ架が答える。
「これは、いわばわが文芸部の制服である。文学を志すもの、まずは外見にこだわりたいものだ」
それは文芸部ではなくてメイド同好会もしくはコスプレ同好会なのでは、と都トは心のなかでつぶやく。
『書を捨てよ。町に行こう』
部室の壁に貼ってあるポスターを指差すイチ架。
「これはわが文芸部に伝わる部訓である」
「なんか聞いたことあります」
都トがため息混じりにそうつぶやく。
「ほう、それほどまでに我が部の部訓がなりひびいているのか」
いや。多分パクリですそれ、と心なんかでイチ架がつっこむ。
「文学は部屋のなかで万年筆をこねくりまわしているばかりではよろしくない。図書館にこもり古今東西の名作を読み耽る。これもまた良くない。文学には、実地が必要である。よろこべ後輩よ。われが諸君らを誘おうではないか。現実のリアルを見つけるために――」
おう!とつぐさは応える。
「われにつづけ!賽は投げられた!」
メイド姿の三人は街へと繰り出すこととなる――
「ここだ」
駅前。やや路地の奥の雑居ビル。非常階段を上り、慣れた様子で非常ドアを開くイチ架。
非日常の世界にメイド姿のつぐさはわくわくする。
それをじっと見つめる都ト。思わずため息が出る。まあ、つぐさが喜んでいるならそれでもいいか、とも思いながら。
「イチカ、入ります!」
そう言いながらどかどかと部屋の中に立ち入るイチ架。
更衣室のような部屋。ロッカーなども並んでいる。
「あれ、今日勤務だったっけ?」
メイド姿の女性がそう声をかける。
「店長!メイドが足りないと言ってましたよね。連れてきました!」
あらあら、と店長が応える。
(メイドが......足りない......?ちょいまて)
都トは分析する。
答えは簡単。
どうやら不足していたメイドの補充に、自分たちが充てられているという事実である。
「とりあえず、お試しで働いてみる?今日、メイドさん少ないの」
店長と呼ばれた女性がそう提案する。
「私の後輩なので、私が指導します!お任せあれ!」
イチ架が胸をどんと叩く。
つぐさは状況を理解できずにただただ不思議な顔をしているばかりである。
都トはそんなつぐさをじっと見つめていた――
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