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この世を「生きる」ということ

身体の傷は心の傷

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 自傷行為。それは、自分で自分の身体を傷付けること。
 リストカットから皮膚の爪立てから、自傷行為も様々だ。
 かく言うわたしも、自傷行為をしたことがある。むしろ、現在進行形で行っている。

 自傷行為で代表的なものと言えば、やはりリストカットだ。
 わたしもカッターで、何度も手首を切ったことがある。手首だけでは留まらず、次第に腕から肩へ。
 ひどい時は首を切ったこともあった。

 腕を切ることは、唯一の癒しだった。

 嫌なことがあれば、すぐ腕を切った。仕事中であろうと、隠れてトイレで何度も切った。
 ペンで書いたような線が浮かんで、赤い血が滲んだ。一回では飽き足らず、一日に何度も行った。傷もひとつだけではなく、いくつもいくつも刻んだ。それも両腕に、だ。

 読んでいるあなたは、きっと気持ち悪いと思うだろう。けれどどうか、どうか、許して欲しい。
 
 わたしにとっては、それが幸福の時なのだ。


 切って、切って切って、たくさん切って、自分に傷を付けることが。

 そして滲み出る血を、ぼんやり眺めることが。

 
 わたしの、癒し。たったひとつの、幸福。

 
 そうすると、とてもすっきりするのだ。わたしの中にある汚いものが、無くなっていくような────そんな気がして。
 
 こうすることで、「生きてしまっている」というわたしの罪が、許されるような気がして。


 これが正しいのだと、わたしは信じて疑わなかった。今だってそうだ。
 傷はわたしの罪の現れであり、たったひとつの癒し。だからやめられない。何度も、何度でも、繰り返してしまう。

 お陰で今でも、わたしの両腕には自傷行為の痕でびっしりだ。
 見た人はきっと、驚いてこう思うのだろう。


 ───気持ち悪いと。


 そう思われたって構わない。人によっては、それを不快に思ったりすることあるのは、当然わかっている。
 

 だけど、許して欲しい。
 
 気持ち悪いと思ってくれたっていい。

 だけど、お願いだ。


 そんなおかしいわたしを、許して欲しい。



 あなたがここで読むのをやめてくれたって、構わない。


 ───だけど、でも、でも、それでも、けれど───

 頭がぐるぐるして、うまくまとまらない。
 そんなくせにこれを書いているなんて、それもまたおかしな話だけど。


 …………許されるのなら。どうか、どうか最後まで読んではくれないだろうか。


 わたしの文を。心の叫びを。
 今も尚、叫び続けている心の声を。



 ────……嗚呼、そういえば。


 そういえば、誰だったかこう言っていたような気がする。


 自傷行為は、その傷は、心の傷であると。


 

 
 ………………あなたは、聞いてくれるだろうか?



 生きてしまっていると考えているわたしの話を。


 生きるくらいならと思ったわたしの気持ちを。


 

 「生」を拒み、「死」を望んだ────いや、望み続けている、わたしの心の傷のことを。
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