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本編
50 視察へ行きましょう②
しおりを挟む時を少し遡り、シエルをヒルデに任せたその後の話。
シエルの住んでいた街は、ここから西へ進んだ場所にあるラーゼン伯爵領にある。
確か医療品や薬に力を入れている領地で、最近消失した体の部位を再生することのできる回復薬を開発したとかなんとか聞いたなあ。
因みに馬車で行くと丸一日かかる。約100kmほどかな。
しかしそんなちんたらちんたら行く気も馬車に長い時間乗る気もなかった為、私は原付で行こうと考えていた。
しかし創って初めて気付く。
シエルは乗れないのではと。
おそらく二輪で走行する乗り物に乗った事がないであろうシエルは、転倒する可能性が高い。
しかし馬車で行くのは嫌である。時間かかるしお尻痛くなるし馬の機嫌によって速度変わるし。
そんな私に転機が訪れる。原付を3台創ったお陰か機械がLv6に上がったのだ!
ステータスを確認すると、直径5m以内、重さ500kg以内のものなら創造可能になっていた。
これはもしや?と思い、私はあるものを創造する。
「という事でですね、これを創りました!」
「こ、これは・・・白バイとサイドカー!?」
「創造可能な重量が増えたから創ってみました!どうですか!かっこいいでしょう!白いボディに輝く赤色灯!大型二輪免許持ってたし、運転してみたかったんですよね~」
そう言いながら私は白バイに飛び乗ると、頭の中に、伊銭も聞いたことのある無機質な声が響く。
【条件達成により職業:警察に含まれる特殊スキル『交通LV1』が解放されました】
実はこれを創ったら来るんじゃないのかと踏んでおりました。
拳銃を手に入れた時には地域、捜査を開始した時には刑事の特殊スキルを手に入れたから、なにかその部門に関する事をすれば修得する事ができるのではないかと。
地域は交番の所謂地域警察が拳銃を装備しているから、刑事はそのまんま刑事警察は捜査をするからだと私は考えた。
さらに、それらの特殊スキルによりHPと魔攻が上方補正されているので、特殊スキルと各能力値が対応していると考えられる。
なので今回も能力値の中のどれかが上がるはず。防御系!せめて防御系をお願いします!
【特殊スキル『交通LV1』:不審な乗り物に対し取締りを、緊急時に交通規制を行う事ができる。また、殆ど全ての乗り物に乗り、操る事ができる。さらに、速度のステータスに上方補正がかかる(×1.5)】
まあ交通だし速度にくるよな。そうだよな。速度補正無しでも結構速いから正直そこまでなんだよなあ。
そんな感じで少しがっかりしていたのだが、そんなことも些細な事であると思わせる重大な事に気がついた。
「と、届かない・・・」
私の身長は平均よりも小さい。今現在120cm程である。そんなちんちくりんが白バイなんて大きなバイクに跨るとどうなるだろうか。
無論、足が地面はおろかペダルにさえ届かないのである。
「そ、そんなあ!憎い、この身長がッ!」
「トルーデ様・・・その大きな奴は私も乗れませんよ・・・取り敢えず普自二免許でも乗れる奴でお願いします。・・・まあそれでも小さい原付でもギリギリなトルーデ様では無理そうなので私が運転しますよ!トルーデ様は大人しく私にでも抱きついててくださーい!」
「最後なんで煽ったの!?くそう・・・今回は大人しくそれで我慢してやろうと思うけど見ておきなさい、絶対に大きくなってやるんだから!」
もうちょいミルクを飲む量を増やそうと決意したのであった。
そして現在へと至る。
「シエル、馬車ではなくこのバイクという乗り物で行くことにしたわよ!貴女はこっちの方に乗って!」
シエルをサイドカーへと誘導する。
「い、一体これはなんなんだべ!?ここに座るんだべ!?あっ、結構乗り心地いいだ・・・」
「そして運転は非常に遺憾ではありますがカリーン先生にお願いしました。非常に遺憾ではありますが」
ギリリと奥歯を噛み締めカリーン先生を見る。く゛や゛し゛い゛。
「二回言いましたね。そして恨めしそうな怒ってるような顔を一生懸命しておられるようですが、全然怖くない、むしろ可愛いですよ!どうも、この度は運転手を任されました、トルーデ様の教師をやっておりますカリーンです。今回は快速の旅を心掛けますのでよろしくお願いいたします」
大事なことなので二回言ったのである。
ウグゥ・・・怖くない、怖くないかあ。まあまだ子供だし全然なんだろうな。くやしい。
「これで行くって、まさかこんな重そうなこれが馬の力も無しに動くって言うんだすか!?」
「(ダス・・・)」
「(ダス・・・)うん、動くよ。しかも馬車なんかよりうんと速く進むんだよ!ここから1日かかる馬車なんか目じゃないくらい!」
「もしかして馬に乗るより速いですだか!?」
「だってこの子は疲れ知らずなんだよ!馬よりも速いはず、いや、速い!」
「まあまあ乗ってみたらわかる事ですから。用意はできましたね?では行きますよ~」
クラッチ・前輪ブレーキを握りキーを回してエンジンを始動させる。
エンジンが始動したのを確認し、一度だけアクセルを捻りエンジン音を響かせる。
ギアをローに入れ、クラッチを半クラにする。
クラッチレバーを少しずつ離すとゆっくりバイクが動き出し、勢いがついたところでクラッチレバーを離す。
ここまで私の妄想である。
これはAT車なので普通にエンジンかけてアクセル回せば進む。
「あのう・・・ガン見しすぎではないでしょうかトルーデ様」
「うぅ、私も運転したかったよう・・・」
「もう、行きますよ。振り落とされないでくださいね!」
そう言うとカリーン先生は勢いよく発進する。
そしてぐんぐんとスピードをあげ。
「う、うわあああは、速いべ!景色がみるみるうちに変わっていくだ!」
「これ速度違反なのでは。いや、取り締まる人も居ないしここは日本じゃないし良いのかな・・・」
「法律もないですしオッケーですよ!転倒しないように魔法もかけてますし。私は快速を約束しましたし、時間が惜しい為速度上げていきますよ~」
そうして私達は猛スピードでラーゼン伯爵領へと向かうのであった。
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