婚約破棄～乙女ゲームの顛末～

その5

エリーナが乙女ゲームの登場人物になったのは、かれこれ5年も前のことである。元々は全てが平凡の女だった。年頃になると、恋人を欲したりした。しかしながら、普通の女の相手をする男は現れなかった。

そんな彼女は、ある日、喫茶店で乙女ゲームを手に入れた。自分が主人公の令嬢になって、王子様と婚約するのがゴールだった。彼女は何度も何度もトライしたが、元々ゲームが得意ではなかったので、上手くいかなかった。

気がつくと、ヒロインを邪魔する悪役令嬢をリピートしていた。そうこうしているうちに、彼女は美しくなっていった。正確に言うと、美しい見かけを作る方法をマスターした。おかげで男を得ることが出来るようになった。しかしながら、彼女は何も満足しなかった。男は遊びを要求した。彼女も遊びを要求した。

一晩の関係に終始し、朝がやってくると、本当に虚しかった。

生きているとはどういうことなのか？ひょっとして、最初から死んでいるのではないか？そんな疑問をどこかに抱えて、彼女はとうとう自殺を試みた。

そんな彼女にようやく与えられたチャンス、それがヒロインになるということだった。

その夢が、どこからか舞い込んだバグによって消去されようとしていた。