婚約破棄～乙女ゲームの顛末～

その10

宗教をたしなむ人々、そして、ソフィーとの共同生活は、特に不自由なかった。衣食住は全て修道院が提供してくれるし、何か困ったことがあれば、誰かが助けてくれる。

エリーナは誰も助けようとしなかった。しかしながら、周りの人々はエリーナを助けた。エリーナは恩恵を受けるうちに、少しは人助けをしようと思うようになった。しかしながら、その方法が分からなかった。

「そんなの、簡単じゃないですか？」

エリーナはある日、宗教をたしなむ人々の一人に質問してみた。

「孤独を満喫しているソフィーさんとお友達になればいいのですよ。友達ほど心強い存在はありませんからね」

ソフィーはエリーナとあまり会話しなかった。エリーナはソフィーと仲良くしようと思った。食事時はいつでも会話を試みた。しかしながら、ソフィーは挨拶以外、言葉を発しなかった。

私のことを無視しているのかしら？エリーナは最初、ソフィーのことを気遣っていた。人と話すことが苦手なのは仕方がない。友達になれるよう努力しようと思った。

「こんにちは、ソフィー。今日もいい天気ね」

「…………」

「お茶でも飲みましょうか？」

「…………」

「何かしたいことはありますか？」

「…………」

ソフィーが一向に心を開かないので、エリーナは段々腹が立ってきた。

せっかく仲良くしようとしているのに、無視するとは何事か？バカにしているのか？昔だったら、王子様に頼んで無理やりでも口を開かせるというのに……。