悪役令嬢(疑)の家族会議

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家族

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 貴族社会における学校というのは少々特殊である。例えば男女の交際が非常にオープンであるということ。逆に言えば、例え相手がだれであれ、それ相応の身分が保証されているわけだから、何か間違いが起きるということは基本ないのである。しかしながら、クラスに王子様がいたりすると、話は少し変わってくるのだが。

「王子様……申し訳ありませんが、私はあなたと婚約したことなどありません」

「いや、はっきり言わせてもらおう。君との婚約を破棄する」

「ですから……そもそも私はあなたと婚約しておりません」

「私が昨日したんだ。それで、今日破棄するのだ」

「言っている意味が分かりませんね……」

 時折、自己中な王子様がいる。つまり、婚約などしていないのに、勝手に婚約したと思い込み、それでもって、何か不都合が生じると婚約破棄、と高らかに宣言する。要するに、甚だ勘違い男というわけだ。

「君は……妹さんを虐めていたそうじゃないか?そういう人間だとは思わなかったよ……私が浅はかだった……顔だけで選んではいけないのか……」

「王子様……全て聞こえていますけれど……」

 勿論、妹の話だとか、虐めとかいう話は全て作り話である。王子様の妄想である。

 本当に迷惑な話である。こういうつまらない話に限って、世間の噂となり、やがては家族会議にまで発展してしまうのだから……本当に馬鹿ばかしい。

 お父様が一番心配しているようだった。確かに、噂とは言え、家名が傷つく恐れがあるのだから、当然である。

「お父様、心配することはありません。全て王子様のお戯れでございますから……」

「そうは言っても……」

「私よりも王子様の言うことを信じるのですか?」

「いや……そういうわけではないが……」

「そもそも妹なんていないじゃありませんか!」

「それはそうだが……」

「もう少し冷静に話し合えないの?」

 お母様は今回の件について苛立っているよう。

 ひょっとして……みんな私のことを疑っているの?

「何はともあれ、王子様にどう説明すればいいのかしら……」


 決めた。この家は終わっている。

 家出しよう。


「お父様、お母様……さようなら……」

 驚いたことに両親は私の家出を止めなかった。本当、どいつもこいつも何を考えているのか分からない。子供のことよりも、自分たちの家のことしか考えていないバカだよ。

 この後、本当に家出して、最後は王子様を倒す寸前まで追い詰めるのだけど、それはまた別のお話である。
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