上 下
1 / 1

その1

しおりを挟む
婚約者に決まったロンメル伯爵の元を訪れた日のことでございます。

「ああ、マリア!!!ちょっと待ってくれ!!!」

ロンメル伯爵は、私が部屋に入室しようとすると、いきなり制止してきたのです。可笑しな話だと思いませんか???どうして、婚約者の元を訪れたのに、入ってはいけないと言われるのでしょうか???

ひょっとして……私は色々と勘繰り出してしまいました。そして、その勘は当たることになりました。

「ロンメル様!!!開けますよ!!!」

「ああ、待って…………」

ロンメル伯爵が何を言っても、私は開けてしまいました。すると……そこには、私のよく見知っている令嬢が、裸になってロンメル伯爵のベッドに横たわっていました。私は目を疑いました。そして、ロンメル伯爵の方を見ました。私はこの件について、ロンメル伯爵に詰問をしようと試みたのですが、あまりのショックに、声が出ませんでした。だって、そうでしょう???婚約者の不倫の現場を見てしまったのですから!!!

「ああ、終わった……」

ロンメル伯爵はそう言いました。いや、あなたが終わるのは当たり前のことで、それ以上に、私の方が悲しくて……なんといいますか、その場に立ち尽くしておりました。すると、裸になっていた私の知り合いが声をかけてきました。

「あら、マリア。久しぶりね???」

ええ、知っていますとも。伯爵令嬢のイザベルでございます。幼い時から私のことを知っているわけでございますが、とても、友達と言えるほどの関係ではございませんでした。

簡単に申しますと、私の手に入れたものを全て奪っていく、とでも言えばよろしいでしょうか???私に対して、妙なライバル心を燃やしていて、とにかく、私のことをよく思っていないようでした。

そして、今回の一件も、間違いなく、私に対する対抗心の結果だったのです。



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...