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その8

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そんな矢先に、私は人と出会うことになった。

ただ身体を売るだけなのに、ここにやって来る旅人は何処か懐かしくて憎めない。

いや、私がほとんど憎まれるような人生を歩んできただけのことで、みんな私以上の活躍をしているのだ。

私を使ってくれるだなんて光栄……そのくらいで考えておかないと、後で恥をかくことになる。

「お嬢さんは、貴族の出身ですか?」

こう聞かれた。

「はい、そうです。昔は令嬢をしておりました」

こう言うと、なんだかハクが付くと思った。

「そうなんですね。やっぱり、そうだと思ったんです」

話を聞くと、この旅人もかつては没落した貴族をしていたようだった。

奇遇とはこのこと、あるいは必然なのだろうか?
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