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その54

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「あなたが自らの過ちを認めない限り、私はあなたを愛することはできません……。それは長いいばらの道です。あなたが受け入れることのできる苦難なのか……きっと無理でしょうね」

「どうして分かるんだ?」

「今もこうして、私が死んでいくのを、あなたはただ叫びながら見ているだけだからです」

「そんなことはない!止める手立てがないんだ!」

「体を張れば、きっと止められますよ。あなたにその勇気があれば、ですがね……」

クリスは再び小刀を胸に宛がった。

「さようなら……さようなら……」


「私はあなたに殺されました……。私があなたを赦すことはないでしょう……」

民衆のざわめきがひと際多くなる。私はクリスの首を切り落とす……。

「悪逆なる令嬢はここに死したり!」

そう言って、首を民衆に曝した。民衆の歓喜が耳に新しい……。


「今度はあなたが死ぬ番ですよ?」

「……私は君を正妻にしたじゃないか!」

「どのみち、帝政は終わるんですよ。あなたのせいで死ぬ羽目になった人々の不正義な恨みに死ぬのです。私はあなたが貯えた財産を持って、外国に逃げるのです……」

「貴様!最初からそれが目的だったのか?」

「皇帝に嫁入りする令嬢なんて、多かれ少なかれそんなものですよ。あなたに言わせれば、反吐が出るほどのですか!?」

「皇帝をやっつけろ!」

今度は民衆が私を殺しにやって来る。

私は捉えられて、クリスの首を切り落とした高台に縛り付けられる。クリスは……この地に立って初めて涙を流した……。なるほど、泣きたくなるな……。

「悪逆なる皇帝の処刑を行う!」

鉄砲を構えた男たち……どれも見覚えのある顔だった。確か、父上と仲の良かった連中だ。

貴族も名ばかりか……。

こんな世界は、とっとと終わったほうがいい。


「………………を、助けてください!お父様!」

これは、クリスとやらの声にそっくりだ。いまさら、誰を助けると言うんだ?

「皇帝を助けてください!お父様!!」

そんなバカな……。
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