婚約破棄された悪役令嬢はやり直したい!〜転生したら王子に溺愛された件〜その後と将来を紡ぐ物語

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その73 皇帝の名はフランツ

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偉大なる皇帝の元にフランツは産まれた。

皇帝はフランツをたいそう可愛がった。それは単に子供が好きということではなくて、利用するための道具だった。磨けば磨くほど、フランツは著しく成長した。

「ああっ、フランツがこの世界を統治する日が楽しみだ……」

皇帝は遊びが好きだった。しかも、そのほとんどが非合法的手段に基づくものであった。皇帝は表向き、敬虔な宗教家であった。これは、国を統治するものにとって必須であった。しかしながら、裏では神様に見せるわけにはいかない遊びを行なって、満足を得ていた。

詐欺と賭博と売春……この3つが稼ぎ柱だった。皇帝は金を好んだ。普遍的価値の指標として、金は皇帝を裏切らなかった。

皇帝が金を好み、時にはハーレムを構成し、とにかく遊び続ける日々が川のように流れていった。気がつけば、フランツも大人の仲間入りを果たす頃合いになっていた。皇帝は、たくましく育ったフランツを呼び、

「お前が皇帝になるための試練を与えよう」

と言って、戦いという試練を与えた。

皇帝の統治を盤石にするため、従わない人々を服従させることを教えた。勝てば褒美として、その人々の中から最も美しい女を拾い、遊びに使うことができた。

「くだらない遊びに付き合う暇はありません。私はこの世界のために戦います」

フランツは人々の解放を声高に叫んだ。彼は皇帝とは違った意味で戦いを好んだ。殺しの快楽ではなく、正義の信奉者という自信を持つことができた。フランツは正義を好んだ。

「この剣に滴る人民の血は、正義のための犠牲なのだ」

彼が人を殺す条件はそれだけだった。フランツの元に寄ってくる女たちは、全て解放した。皇帝はフランツが不思議で仕方なかった。

「権力者は性に溺れる生き物である」

というのが皇帝の名文句である。フランツは否定した。

「私の潔い魂は、いずれやってくる女に捧げるのであります!」

フランツは皇帝に言い続けた。皇帝は正義を憎んだ。だからこそ、皇帝はフランツを時折疎ましく思った。

「お前をこのように育てた覚えはないぞ!」

「私は正義の信奉者であります!父上の言いなりではございません!」

本来であれば、皇帝の素質を十分備えたフランツを、皇帝は認めてあげるべきだった。皇帝の非道と、フランツの正義があまりにもかけ離れていたことが、この事件の発端になっていることは疑いのない事実であろう。

「フランツ、フランツはいるか!」

王子にもそれなりの権限はあった。貴族会という議会における発言権であったり、あるいは、法案に対する質問権などである。皇帝が押し切った提案を、王子が否定するというのは前代未聞であった。逆に言えば、皇帝が酷すぎたのだ。

「お前は私の邪魔をするのが趣味なのか?」

皇帝のボルテージは非常に高かった。皇帝の夢でもあった重金法の成立を阻止した。重金法とは、貴族はもとより、金を持った人間たちだけのコミュニティーを作り、それ以外の人間は全て奴隷として扱う法律だった。

フランツは激怒した。

皇帝はフランツの未来を悲観した。

「場合によっては、フランツを殺してしまうかもしれない……」

クリスがクリスならば、フランツはフランツだった。


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