妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

その32

ソフィアとゲルストマンの関係がどんどんいい方向に進んでいくのを見ていたメイドたちは、心の中でガッツポーズを浮かべた。辺境貴族とは言っても、格式高い王家の血筋を持つゲルストマン公爵の名前に恥じぬ、真っ当な婚約であることを、家中の誰しもが、認めるようになっていった。

「あの、全く女心の分からないゲルストマン様が、自分の身に変えて、ソフィア様をお守りなさったなんて……まるで、物語のようじゃない？？？？？？」

メイドたちは、ゲルストマンの誉高き武勇伝を口ずさみ、感動していた。武勇に優れていることは、誰もが知っている事実だった。だが、それをまともに使うことはほとんどなかった。少なくとも、人前でそういったものを披露することは、ほとんどなかったのだった。

ゲルストマンは貴族とは言え、その高貴なることを花で自慢する貴族ではなかったのだ。どちらかと言えば、内気だった。だから、婚約者とは言え、他人を守ることに積極的になるのは、珍しいことだと、最初は思われたのだ。それでも、ゲルストマンが、メイドたちを集めて、

「これから私は、ソフィア様に全てを捧げたいと思います！！！！！！！！」

なんて言ってしまったものだから、メイドたちの興奮と言えば、それはもう、天井がないほどつけがあるのだった。

しかしながら……この甘い恋のひと時に思わぬ邪魔が入ることになった。

「あの人がやって来る……どうして？？？？？？？？？？？？」

ソフィアには全て読めていた。だが、その理由については何も分からなかったのだった……。