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エリー……やりすぎ?

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「そんな奴がいてたまるか!」

マルサスは怒り出した。いや、実際にいるんですよね……私よりも神様に近い魔法使いがね……彼女こそが私の命の源なのですよ……。

「お姉様っ………………!」

エリーの姿が見えた。私はとりあえず知らないふりをした。

「何をしているんだ!止めろ!」

「かしこまりました!」

将軍も可哀想だ。絶対に勝てない相手と戦わなければいけないのだ。しかも、エリーに逆らった者はみな死ぬ運命みたいだ……。

「全力で阻止するんだ!」

みんな、血気盛んなのは結構なのだが、エリーの見えざる魔法にやられて、次々に倒れていく。将軍も剣を振るって応戦しようとしたが、その前に勝負はついていた。

「いったい、どういうことだ!」

マルサスは私の手から剣を奪って、その切っ先をまだ遠くにいるエリーに向けた。

「みんな、死んでいくじゃないか……」

マルサスはこの時、あるいは初めて敗北を知ったのかもしれない。それにしても……。

「お姉様!どこですかあっ……お姉様!」

エリー……助けに来てくれたのは嬉しいんだけど、ちょっと恥ずかしいかも……。

「あっ、お姉様を見つけました……うんっ?隣にいるのはマルサス?」

エリーは私たちの姿を見つけると、すぐさま翼を広げて飛んできた。

「ああっ、そういうことか!」

ここでマルサスは何か気がついたようである。

「ユフィーをさらって、永遠の命を得ようとしているのだな!そうはさせんぞ!ユフィー、下がっていなさい!」

普通ならば、これは勇ましい光景である。か弱い女を守る誉れ高き貴族の姿である。しかしながら、マルサスは重大な勘違いをしている。

「マルサス!お姉様から離れて!」

ユフィーは叫んだ。あの時の優しさは微塵もなかった。完全にマルサスを敵だと認識していた。

「貴様に渡す必要はない!とっとと下がれ!」

マルサス……君も相当の命知らずだなあっ、と思った。エリーを敵にした時点で勝負はついているというのに……。

「そうなの?それならこのお城ごと破壊してあげるわ!」

「できるものならやってみろ!」

あーあ、エリーを挑発するなんて、事情を知らないとはいえ、相当のバカだ。

本当に滅んじゃうよ?

「世界が死すための魔法降臨……」

エリーは一心に魔法を唱え始めた。この後の結果は、まあ皆さんの予想通りである。
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