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その6

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それからというもの、私は食事を終えて、自分の寝室で、幾らか物色してきた本を読み漁った。

それは、お母様が残していったもので、世渡りの方法であったり、あるいは、社交界に着ていくドレスのことだったり、マナーであったりと、とにかくそういうことを全く心得ていない私が、なんとか恥をかかないように色々考えたのだ。

「お嬢様……失礼いたします……」

食事が終わると、今度はロンダ―がお茶を拵えてくれる。ロンダ―が作ってくれるものはなんでも美味しかった。お茶と言うのも、ロンダ―の田舎から送られてくる渋い茶葉であり、とても貴族が飲む味ではないとお父様は揶揄っておられた。でも、私の口にはちょうど合う。

この、いたたまれないほど苦いお茶を飲むと、どうしてだかほっと一息つくことができるのだ。

「お嬢様?熱心にお勉強でございますか?」

「ええ、勉強と言っても……こういう下らないことだけどね……」

「お嬢様?下らないと言ってはいけませんよ?お嬢様も年頃の令嬢様なのでございますから。それ相応の立ち居振る舞いを勉強なさるのも、立派なレディーになるための方法なのでございますから……」

ロンダ―の言っていることはもっともだった。でも、私は、ロンダ―にそんなことを言って欲しくなかった。

「がり勉女では……ダメかしら?」

「少なくとも、王子様は、そのような女性をお好きにはならないでしょう?」

「……あなたならどうなの?」

「はい?何かおっしゃりましたか?」

「………………」

私はしばらく黙って呆然と立ち尽くした。

どうして、ロンダ―にこんな質問をしたのだろうか?
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