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ありきたり
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政略結婚のゴールというのは大抵決まっている。
婚約破棄。
王子様は非常に美しいお方である。女性だけでなく、男性までもを虜にしてしまう。加えて、頭脳明晰とくれば、婚約者が冴えないこの私であることが不思議であった。
一夜を共にするだけで相性なんて分からないみたい。私の場合、王子様が辛そうな顔をしていたことがものすごく印象に残っている。王子様は私を抱きながら、どこか他の女に助けを求めていた。それが王子様の恋だった。
私は王子様の恋人によく似ていたそうだ。だからこそ、私みたいな没落貴族の令嬢でもご寵愛をいただくことができるのだ。月日は流れ、王子様の恋人は病に倒れた……。
王子様は三日三晩泣き叫んだそうだ。恋人は子供を産めない体になったようで、後に捨てられた。それが、王子様の決断だったのか、それとも、家族からの圧力だったのかは分からない。聞きたくもない。同じ女として、悲しく思う。
王子様は開き直って、全ての愛情を私に注ぎ始めた。私の家族は喜んだ。当たり前だろう。でも、私はちっとも楽しくなかった。私は代わりだったのだ。都合のいい愛人とでも言えばいいのだろうか。
婚約破棄を通告したら、王子様は非常に悲しんだ。その悲しみが真実なのか、それとも虚構なのか?私には分からない。
王子様は私を引き止めようと画策した。財産や地位を好きなだけ分け与えてくれるって。
思えば私が望んでいた結末ではあった。
でもね、私はもう生きる意味がない。人ではなく、人の代わりに生きているだけなんだから。
滞りなく家族に富が行き届いたのを確認して、王子様の元を離れた。王国から離れれば、それは全て戦場である。男たちが明日をかけて殺しあっていた。
こういう生き方も悪くないと思った。少なくとも私よりは大分有意義に生きている。私なんか……。
王子様もいずれは戦うのだろう。私は最初から降参だ。殺されない最後方でゆっくり昼寝でもするのが関の山だ。
頭の片隅で王子様の顔を思い出す。
恋人を労ってください。困難を承知の上で、あなたの紡ぐ物語に加わったのですから……。
神様……。
こんな私をお赦しください。
王子様に幸あれ!
婚約破棄。
王子様は非常に美しいお方である。女性だけでなく、男性までもを虜にしてしまう。加えて、頭脳明晰とくれば、婚約者が冴えないこの私であることが不思議であった。
一夜を共にするだけで相性なんて分からないみたい。私の場合、王子様が辛そうな顔をしていたことがものすごく印象に残っている。王子様は私を抱きながら、どこか他の女に助けを求めていた。それが王子様の恋だった。
私は王子様の恋人によく似ていたそうだ。だからこそ、私みたいな没落貴族の令嬢でもご寵愛をいただくことができるのだ。月日は流れ、王子様の恋人は病に倒れた……。
王子様は三日三晩泣き叫んだそうだ。恋人は子供を産めない体になったようで、後に捨てられた。それが、王子様の決断だったのか、それとも、家族からの圧力だったのかは分からない。聞きたくもない。同じ女として、悲しく思う。
王子様は開き直って、全ての愛情を私に注ぎ始めた。私の家族は喜んだ。当たり前だろう。でも、私はちっとも楽しくなかった。私は代わりだったのだ。都合のいい愛人とでも言えばいいのだろうか。
婚約破棄を通告したら、王子様は非常に悲しんだ。その悲しみが真実なのか、それとも虚構なのか?私には分からない。
王子様は私を引き止めようと画策した。財産や地位を好きなだけ分け与えてくれるって。
思えば私が望んでいた結末ではあった。
でもね、私はもう生きる意味がない。人ではなく、人の代わりに生きているだけなんだから。
滞りなく家族に富が行き届いたのを確認して、王子様の元を離れた。王国から離れれば、それは全て戦場である。男たちが明日をかけて殺しあっていた。
こういう生き方も悪くないと思った。少なくとも私よりは大分有意義に生きている。私なんか……。
王子様もいずれは戦うのだろう。私は最初から降参だ。殺されない最後方でゆっくり昼寝でもするのが関の山だ。
頭の片隅で王子様の顔を思い出す。
恋人を労ってください。困難を承知の上で、あなたの紡ぐ物語に加わったのですから……。
神様……。
こんな私をお赦しください。
王子様に幸あれ!
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